サークル「Atelier Honey*」さんの同人音声作品(全年齢向け)。
こちらは雨の日にのみ現れるとっても優しい女性が
物語や耳かきで心安らぐひと時を提供してくれます。
全編を通じて流れ続ける雨音をはじめとする諸々の効果音で雰囲気を演出するだけでなく
女性のキャラや主人公との人間関係といったストーリー面もしっかりと練られており
癒しはもちろん、ちょっとした感動も得られる総合力の高さが一番の魅力です。
雨の日は特別な日
「あら おかえり ぼっちゃん」
優雨はおっとり優しい声の女性。
主人公の家にずっと昔から住んでいて、雨の日にだけ姿を現す彼女は
慌ただしく帰宅した彼をゆったりとした様子で迎えます。
本作品は雨の日の物語なこともあって
開始から終了直前までのほぼ全編で雨音が鳴ります。
最近効果音が注目されているのと時期的な理由で雨や水を扱った作品が多いのですが
本作品での雨音は「ピシッ」とアスファルトに叩きつけるようなものではなく
「ぱら ほと」と葉っぱや土に雨が当たる比較的柔らかいタイプの雨音が使われています。
「ぼっちゃんのお祖父さんとも遊んだし ぼっちゃんのお父さんともお話したし ぼっちゃんとも こんなに長く 一緒にいてる」
また優雨は関西の生まれなようで、そっち方面のやや訛った言葉遣いをします。
言い回しが標準語よりもずっと親しげなのと、元々の声の柔らかさもあって
知らず知らずのうちにホッと肩の力が抜けていくのが感じられるでしょう。
効果音、声、セリフといった全ての要素が聴き手を癒す方向でセッティングされています。
お話は最初に雨に濡れた服を脱いで浴衣に着替えてから
彼女に膝枕をされながらお話を聞いて心身をリラックスさせます。
「あれは 雨宿りをしている 鳥の声 雀かな? 何の鳥さんかな? 遠くで 鳴いてる」
膝枕のシーンでは雨音に混じって時折蛙や鳥の鳴き声も聞こえてくるのがいいですね。
自然な音はそれ自体に十分なリラックス効果がありますし
2人のいる空間が静かであることの演出にも役立っています。
それぞれの音が耳に心地よい刺激を与えてもくれました。
そんな雰囲気の中、後半からぽつりぽつりと優雨が昔話を語ってくれます。
「ぼっちゃんにとって 雨は 優しいもんなんだなって 思ったんよ それがとっても嬉しかったなぁ」
生まれた頃から彼を見続けている彼女に深い愛情があるのはもちろんですが
彼の側でも名前の無かった彼女に「優雨」と命名してあげた過去があったりと
2人が家族のような深い絆で結ばれているのが伝わってきます。
そういったやり取りが心を大いに温めてくれるでしょう。
眠りを妨げない優しい耳かきと子守唄
手拭いによる体拭き、耳かき、そして耳舐めで体の表面を綺麗にします。
事前に洗う部位を言ってから「ぴちゃ ぴちゅ」と控えめな水音を鳴らすわけですが
その部位を洗っているのがわかるように、きちんと音の位置を移動させてくれています。
特に耳や頬の時は一気に音が近づいてちょっぴり冷たく感じるかもしれません。
合間に適度に水を絞るシーンを入れて臨場感を演出しているところもいいですね。
耳かきは左右合わせておよそ8分間。
耳かき棒のみを使ってお掃除した後息吹きをする家庭的なものです。
ちなみに膝枕ではなく、仰向けに寝ているこちらを横からお掃除しています。
耳かき音は「ジョリ ジー」とやや尖った、ざらついた音が使われており
耳を傷つけないように比較的ゆっくりとしたペースで
あまり大きくは動かさず短いストロークで何度も往復させたり
あるいは縦方向に1本長く動かしたりしながら進められます。
音質はリアルですが耳の中が乾燥している人向けの音だと思います。
「ぼっちゃんの顔見てると 私もなんだか 気持ちようなってくるなぁ」
耳かき中の優雨は前のパートとは打って変わって無口になり
おかげで耳かき音と雨音だけを存分に楽しむことができます。
合間にこぼれるセリフもあまり大きな意味を持たないものばかりで
彼女自身もこの静かな時間を楽しんでいるのがよくわかります。
先ほどよりも一層静かでリラックスできるパートなだけに
ここでそのまま寝落ちする人もそれなりにいるでしょう。
心が洗われる作品
それ以上に優雨のキャラやストーリー面に光り輝くものを感じる作品です。
歳をとらない自分をよそにどんどん成長していく主人公に喜びを感じる一方で
大人になった彼に自分の存在を忘れられるのではないか、という一抹の不安。
そんな複雑な気持ちを抱いているからこそ、彼女がこの時間をとても貴重なものに思い
心を込めて彼を癒そうとしているのがひしひしと伝わってきました。
特に声が慈愛に満ちていてそれだけでも本当に癒されます。
「ぼっちゃん またね また雨が降って ぼっちゃんが私のこと覚えてたら また会える」
ストーリーについても彼女どういった存在でなぜ彼に癒しを与えているのかが
聴いていくうちに少しずつ明らかになるように作られています。
一番最後の子守唄を唄うパートで唄を唄い終り、雨が止もうとしている中
彼女が名残惜しそうに別れを告げるシーンがとても印象的でした。
正直音声作品でここまで泣けたのはこの作品が初めてです。
効果音については雨音がややぼやけているような、自然な音が使われています。
合間の生き物の鳴き声もただループさせるのではなく適度に間隔を入れて休ませていますし
細かい演出にもかなり気を遣われているように思えます。
耳かき音も申し分ありません。
癒しに加えてほろりと泣けるシーンもある作品です。
雨と彼女の優しさが心の中にあるもやもやを綺麗さっぱり洗い流してくれるでしょう。
CV:野上菜月さん
総時間 1:20:19
オススメ度
■■■■■■■■■□ 9点
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