サークル「Re:Volte」さんの催眠音声作品(全年齢向け)。
今回紹介する作品は、東方シリーズに登場する天邪鬼キャラ「鬼人正邪(きじんせいじゃ)」が
友人あたりの関係にある人物に安眠できる催眠をかけます。
彼女の性格を反映させながら堅実に誘導するのが特徴で
カウントの数え方を変則的にしたり、物語の順序を敢えて逆にするなど
多少あべこべな要素を盛り込みながらシーンごとにキーとなる暗示を丁寧に入れます。
レゾンデートル…存在理由、存在価値を意味するフランス語
天邪鬼なお姉さんと
「よっ お邪魔してるぜ」
正邪は男っぽいしゃべり方をする凛々しい声のお姉さん。
音声を聴く際の注意事項や環境を簡単に説明すると
眠れない主人公の前に現れ安眠のお手伝いをします。
本作品は何でもひっくり返す程度の能力を持つツンデレっぽい性格の彼女が
既に知ってる仲の彼に50分程度の変わった催眠を施します。
彼女は人が嫌がることを好み、人を喜ばせると自己嫌悪に陥る典型的な天邪鬼で
作中でもそれを匂わせる描写がいくつも登場します。
「君が眠れないって言うから 嫌々ながら来てやったんだ 感謝してよね」
本心では彼のことを心配してるのに上のような憎まれ口を叩いたり
催眠の序盤で変則的なカウントの数え方をするなど
ストレートに癒やす従来の東方入眠抄シリーズとは違い多少の捻りを加えながら進めます。
過去作には見られなかったチャレンジ精神旺盛な取り組みも見られて結構個性的です。
ただし、聴き手が催眠に入れなくするようなことは一切しません。
催眠の基本をしっかり押さえつつ、そこに悪影響を及ぼさない程度の悪戯をします。
過去作より入念なアプローチがされててむしろ入りやすいです。
天邪鬼でも素直になれる場所へ
一番最初の「03 カウントアップ」は彼女がカウントを数えながらリラックスできる暗示を入れます。
「意識を集中させて 私の声に集中して?」
「落ちる 落ちる すーっと意識が落ちていく」
パートの序盤は彼女の声に対する集中力を高め
中盤以降は「落ちる」を多めに言って最初の深化を促します。
終盤には落ち着いたBGMも流れたりと、彼女なりに優しく接してくれてるのがわかります。
暗示の表現や入れ方は割と普通にして、カウントの数え方に天邪鬼なところを盛り込んでます。
被暗示性の高い人ならここだけでも意識がぼんやりしてくるでしょう。
続く「04 催眠導入」は催眠状態をより深めるシーン。
彼女が抱きつき頭を撫でながらその温もりと心地よさを伝え
その後は逆に彼から力を奪って心身を骨抜きにします。
「手の先 足の先がじんじんしてくるよ ぽかぽか ぽかぽか 温かい 体中が温かい」
「左右の手から 力が抜けていく 1 2 3」
抱きつくシーンは「じーん」「ぽかぽか」といった擬声語を挟みながら「温かい」と入れ
力を奪われるシーンはカウントを交えて「力が抜ける」と丁寧に言います。
本作品の催眠はシーンごとにキーとなる暗示を定め
言い回しを変えながらそれを多めに言って感覚を操作する堅実なリードがされてます。
作品の性質上どうしても意地悪に振る舞わざるを得ないシーンがあるので
それをきっちりカバーするためにこういう作りにしたと私は見ています。
一部で声にエフェクトをかけて意識を揺さぶる工夫もされてて心地よかったです。
3番目の「05 反逆」は彼女とより親密になるパート。
復唱形式で彼女の言葉を言って自己暗示を入れ
それから本当の自分をさらけ出せる無意識の領域へ移動し、天邪鬼じゃなくなった彼女のお話を聞きます。
「全部 全部 逆さまなんだ 私は 生き様のためなら ひどいこともする けど 私の本質はそこじゃない」
彼女は生まれながらの天邪鬼なので真っ当な生き方をしたくてもできません。
そんな切ない事情を先ほどとは別のBGMを流しながらぽつりぽつりと語ります。
催眠とは直接関係ない要素ですが、東方入眠抄シリーズはキャラが売りの作品ですから
相手のことをより深く知るシーンは必要だし、それが結果的に信頼関係の向上にも繋がります。
意地悪してるのが本心かそうじゃないかで印象は随分変わりますからね。
そして最後の「06 出会い」でいよいよ眠りにつきます。
催眠では序盤によくやる深呼吸をしながら彼女の言葉に耳を傾けます。
「大好きになる 君は 私のことが 大好きになる」
普段の彼女ならまず言わないようなセリフを投げかけ
さらに無言の時間を適度に挟み眠りやすい環境を整えます。
終盤にほぼ正反対のことを短時間で言うのも彼女らしいです。
最後の最後にちょっぴり寂しいことを言うので、やや物悲しく感じる人がいるかもしれません。
このように、催眠はしっかり行ったうえで天邪鬼なところも見せる彼女らしいサービスが繰り広げられてます。
風変わりな安眠作品
正邪は自分にとって仲の良い存在にあたる主人公を眠らせようと
まずは天邪鬼なところを見せながら癒したり深化させる暗示を丁寧に入れます。
そして2人だけの場所に移動した後は本心を語ってから眠りに導きます。
天邪鬼だけど面倒見のいい女性が催眠をかけて眠らせるノーマル向けのシチュ
シーンごとにメインの暗示を定め一歩ずつ着実にリードする丁寧な催眠
ところどころで変則的な要素を挟む彼女らしい演出。
シリーズの過去作と同じくキャラの持ち味を活かした作品に仕上げてます。
特に2番目はこのところサークルさんが力を入れられてるようで
催眠の流れ、技術の繋げ方、暗示の入れ方や表現方法に安定感があります。
東方モノでも催眠音声である以上は入りやすさが重要になりますから
そこがしっかりしてれば作品の品質は自然と上がります。
あと個人的にすごく面白いなと思ったのがパート構成です。
本来なら序盤に来る「出会い」を最後へ回し、その代わりに「カウントアップ」を置いてます。
ここからはあくまで私の推測に過ぎないのですが
彼女が天邪鬼キャラだからこの2パートをわざと逆に配置したのだと思います。
そう言える主な根拠はそれぞれで使われてる技術です。
「出会い」では深呼吸、「カウントアップ」では長めのカウントを数えながら深化の暗示を入れます。
東方入眠抄シリーズだと前者は序盤に行い、後者は終盤にやる傾向が見られます。
また「カウントアップ」ではBGMが流れるのですが、これも過去作だと中盤と最後によく登場します。
私が記憶してる限り一番最初のパートで流れたことは確かなかったはずです。
「出会い」というパート名を一番最後につけるのも異色です。
調べてみたら過去作で「出会い」やそれに類する単語を冒頭のパート名に定めてる作品が6本ありました。
つまりサークルさんにとって最後よりも最初につけるほうがずっと妥当なわけです。
結局のところ作った本人にしかわからないのでこれは単なる思い込みなのかもしれません。
でもそう判断できる材料が複数用意されてるのも事実です。
ちゃんと安眠できるようになってますから特に問題はないと見ています。
以上を踏まえて今回はこちらの点数とさせていただきました。
おまけは「デレデレ正邪さん」とBGM2曲です。
CV:稲垣麻木さん
総時間 1:11:14(本編…52:20 おまけ…18:54)
オススメ度
■■■■■■■■□□ 8点
体験版はこちらにあります