同人音声の部屋

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タグ:東方

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   ● 東方入眠抄23 宵闇色のレゾナンス
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   ● 東方入眠抄22 ふたりぼっちのレゾンデートル
   ● 東方入眠抄21 華扇ちゃんと、ぐっすり安眠トレーニング
   ● 東方入眠抄20 烏天狗はたての快眠念写術
   ● 東方入眠抄19 ~恋する小悪魔~ la diablotine amoureuse
   ● 東方入眠抄18 依るべない夜と少女の依物語
   ● 東方入眠抄17 あうんちゃんに守護られて安らかに眠る音声催眠




サークル「Re:Volte」さんの催眠音声作品(全年齢向け)。

今回紹介する作品は、東方シリーズに登場するキャラ「小野塚小町」が
不眠に悩んでる人間を独自のやり方で癒したり寝かしつけます。

ほぼ全編で川の音を流しながら催眠をかけるのが特徴で
序盤は船に揺られる心地よさを与えながら川の音にも暗示を込めてリラックスさせ
中盤以降は深呼吸、カウント、分割弛緩法といった技術と組み合わせて
聴き手が自分から眠りたくなるよう導きます。
死神と過ごす穏やかなひと時
小野塚小町に安眠できる催眠をかけてもらうお話。

「おや? お前さん こんなところで何してるんだい?」
小町は江戸っ子っぽいしゃべり方をする穏やかな声のお姉さん。
生きたまま賽の河原へ迷い込んできた主人公に声をかけると
軽くジョークをかましてからそうなった理由を尋ねます。

本作品は三途の川の船頭として多くの死者をあの世に送ってる彼女が
不眠の影響で偶然やって来た彼をおよそ45分に渡って寝かしつけます。
彼女の船に乗ってから催眠を始めるためほぼ全編で川の流れる音が鳴り
それによる純粋な癒しと催眠の技術を組み合わせてゆっくりじっくり眠気を膨らませます。


大きな川らしく「さらさら」ではなく「じゃばじゃば」みたいなやや激しい音になってますが
質感が優しく清涼感もあるので聞き続けてるとほとんど気になりません。
音を楽しみやすくするためにわざと無言の時間を適度に用意してます。

「私ら船頭は 仕事もサボりも 船の上だからね よく眠れるのは 私のお墨付きってわけさ」
彼女については「世話好きな江戸っ子」と呼ぶのがしっくりくる女性です。
変わった理由で三途の川へやって来た彼に気さくに語り掛け
催眠を通じて不安を取り除いて眠りやすい環境を整えます。
また世界観に合うよう英語やカタカナを使わずにセリフを組み立ててます。

普段死人ばかりを相手にしてるからでしょうけど
彼と一緒に過ごすこの時間を幸せに感じてるように映りました。
途中から腕枕もするなど近所のお姉さんっぽく振る舞います。
多彩なアプローチが光る催眠
催眠はおよそ40分間。
前半の3パート20分間(「04 舟の上にて」から「06 触れ合い」まで)は
川の音を流しながら船に揺られる感覚や彼女の近さを実感させて癒しと安心感を与えます。

「うとうと ゆらゆら 君の心が すーっと楽になっていくよ」
「こういうのは あんまりよくないよ これきりにするんだよ?」

小町は原作でもサボり癖のあるキャラなので
彼を船に乗せて遊覧に出かけられることをむしろ喜びます。
「ゆらゆら」などの擬声語を多めに入れてセリフにリズムを取りながら
心地よさや眠気を感じる暗示を入れて上手に心をほぐします。
さらにもうここへは来ないよう言い含めて優しさを示します。

被暗示性の高い人なら「04 舟の上にて」だけでもたぶん眠くなるでしょう。
川の音にも癒しのパワーがあって彼女と一緒にいる気分に浸りやすいです。
キャラに合った手段で眠らせる東方入眠抄シリーズの特徴が今作でもきちんと出てます。

「05 生きる」と「06 触れ合い」は催眠色が多少強くなります。
前者は深呼吸、後者はカウントとお馴染みの要素を盛り込み
川の音そのものにも暗示を込めて体の中にある悪いものを洗い流します。

「水の中に お前さんの心が溶けていく 心が じわーっと広がっていく その感覚が 気持ちいい」
ただ流し続けるよりも催眠と絡めていったほうが効果的に癒せますから
本作品らしい理に適ったアプローチと言えます。
同時に彼女に腕枕されてるイメージを挟んだりと
ストレートに眠らせるのではなく、色んな方向から働きかけて少しずつ眠りやすい状況を作ります。

後半の2パート20分間は安眠に向けてさらに前進します。
「07 死神」は両腕、両足、胸を彼女が個別に擦って脱力感を与え
「08 心」は「落ちる」などの深化させる暗示や彼女の寝息を流して彼を寝かしつけます。

「私が腕を撫でると すーっと力が抜けていく」
「落ちる 落ちる 意識が落ちていく 心地よい眠りへと 落ちていく」

ピアノBGMを流したり川の音だけが流れる時間を挟んでるところはやや独特ですが
どちらも状況に合った技法や暗示を使って堅実に癒すことを心がけてました。
このへんまで来ると意識のぼやけや体の脱力を実感できるでしょうから
そのままぼーっとしてれば自然に眠れると思います。
時間に対するセリフの量を少なめにしてるのも目的を見据えてて良いです。

このように音、セリフ、音楽、催眠の技術を組み合わせたバランスの良い催眠が繰り広げられてます。
心地いい作品
聞いてるだけで勝手に眠くなる癒しのパワーが強い作品です。

小町は不眠のせいで三途の川に迷い込んできた主人公を現世へ送り返そうと
船に乗せて2人きりになれる場所まで移動し、川の音を聞きながら会話したり催眠をかけます。
そしてパートごとに使う技術やアプローチを変えてより多くの人が眠れるようにリードします。

気さくで面倒見のいいお姉さんが催眠で寝かしつけるノーマル向けのシチュ
全編で川の音を流したり一部でピアノBGMを流す音を重視した作り
技術自体はシンプルにして彼女のキャラやシチュに合わせて行使する手堅い催眠。
キャラの個性や世界観をしっかり作ったうえで眠れるように仕上げてます。

中でも川の音は三途の川にいる雰囲気作りと純粋な癒しを提供する重要な役割を果たします。
音に暗示を込めるシーンがありますし、多少は音モノとしての側面も持ってます。
催眠音声なのでもちろん技術が一番大事なのですが
東方入眠抄シリーズの場合はボイスドラマ成分がそれなりにあるので
技術以外の部分をどう上手く使ってるかもポイントだと思います。

レビューを書く必要がなかったらそのまま寝てたくらい安眠効果が高いです。
シリーズの他作品と同じく解除音声が入ってませんから
視聴後に何かしたり出かける用事がある場合は無料作品でいいので必ず解除音声を聴いてください。

おまけは「三年四組、小町せんせー」とBGM2曲です。

CV:伊菜さん
総時間 1:06:34(本編…45:48 おまけ…20:46)

オススメ度
■■■■■■■■■□ 9点


体験版はこちらにあります

追記
作品自体の点数は8点。
66分で440円とコスパが良いので+1してあります。



サークル「Re:Volte」さんの催眠音声作品(全年齢向け)。

今回紹介する作品は、東方シリーズに登場するキョンシー「宮古芳香(みやこよしか)」が
上手く寝付けない人間に安眠できる催眠をかけます。

技術と音を組み合わせて癒したり眠気を誘うのが特徴で
深呼吸や脱力といったリラックス系の誘導を小まめにやって眠りやすい状況を作り
さらに風の音、穏やかなBGM、彼女の寝息も流して静けさを演出します。
静かな夜の温かい贈り物
宮古芳香が膝枕や添い寝しながら催眠をかけるお話。

「ちーかーよーるなー この先は お前のような人間が来るところではない」
芳香は明るくて可愛い声の女の子。
音声を聴く際の注意事項を簡単に説明すると
夜の墓場へやって来た主人公を追い返そうとします。

本作品は現在まで24本も出てる人気シリーズの第2作。
何らかの事情で霊廟を守り続けてる彼女が、そこへ迷い込んだ彼を30分かけて寝かしつけます。
初期の作品ということで催眠の技術はシンプルなもので組み立ててますが
シリーズの特徴が既に導入されおり今のスタイルに近くなってます。

「この先に何があるかって? 何だっけ? うーん 忘れちゃった」
彼女は死人でありながら意志を持ち体も動かせるキョンシー。
この日も初めは彼を追い払おうとしてたのに、そのことをすぐ忘れて彼の相手をしてあげます。
原作では物忘れが酷い以外に「何でも喰う程度の能力」を持ってるそうですが
安眠との相性が良くない要素なので作中では敢えて使わずに進めます。

全年齢向けですから総時間のほとんどが催眠に使われてますし
内容も心身のリラックスを重視してて安眠に適してます。
物語の開始直後から風が吹き抜ける音が流れ、さらに後半では穏やかなBGMも流すのが良い例です。
音楽も制作されてるサークルさんなだけあって品質が高く、作品に個性を与えるのにも役立ってます。
後になるほど静かになる催眠
催眠はおよそ26分間。
芳香に案内されて草原へ移動した後、膝枕の状態でまずは深呼吸と脱力をします。

「土の中に染み込んだ昼の熱が あなたをそっと温めてくれるよ」
深呼吸は「吸ってー 吐いてー」の掛け声を出してリズムを取り
その合間に地面の温かさを意識させて体をぽかぽかにします。
その後にやる脱力もカウントに合わせて各部位をリラックスさせながら体の温かさを伝えます。
温感操作に割と力を入れてるので、後になるほど体が温かくなってることに気づくでしょう。

お次は膝枕から腕枕に体勢を変えて再度深呼吸を繰り返し
さらに全身を軽く流すタイプの脱力もやってリラックスを強化します。

「落ちているとも 浮いているとも言えない浮遊感 ふわふわ ふわふわ 気持ちいい 気持ちいいね」
やってることは先ほどと一緒ですけど、深呼吸の際に入れる暗示は深化を意図したものへ変わってますし
脱力も彼女が実際に手を握ってその温かさを伝える別のアプローチになってます。
やることが分かってればそれだけ頭を空っぽにしやすいですから
本作品の最終目的にあたる安眠に合った誘導と言えます。

音楽が登場するのは終盤から。
ピアノメインの落ち着いた曲を流しながら彼女がゆっくり語りかけて寝かしつけます。

「ん? 聞こえてきた? これはね あなたのための音楽 あなたが眠るための音楽」
彼女がわざわざこう言ってるのは彼に「もう寝る時間だよ」と遠回しに伝えてるのでしょう。
このへんからセリフの量が一気に減り、さらに吐息や寝息も漏らして静かな空間を作ります。
これから寝ようとしてる相手に色々話しかけても邪魔するだけなので
話す時とそうでない時のメリハリをつけてるのは良いことだと思います。

音声を聴いた感想ですが、序盤は会話量が多めだったり話すペースが速めなおかげで
やや慌ただしく感じましたが中盤以降は一気に穏やかになり安眠しやすくなりました。
無理矢理眠らせる展開にならないよう時間に対する暗示の量を抑えてあるのも大きいです。
深呼吸と脱力も1回目と2回目でやり方や方向性を変える工夫がされてます。

このように、基本的な技術と音楽を組み合わせて癒す東方入眠抄らしいサービスが繰り広げられてます。
コンパクトな安眠作品
寝る前のちょっとした時間に聴ける手軽な癒し系作品です。

芳香は寝つきが悪くなってる主人公をぐっすり眠らせようと
まずは深呼吸と脱力をしながら草原の温かさと自分の体温を伝えて体を温めます。
そして終盤は穏やかなBGMや寝息といった音の量を増やして彼が眠りやすい環境を整えます。

物忘れが激しいけど根は優しいキョンシーが人間を寝かしつけるノーマル向けのシチュ
深呼吸と脱力を別のやり方で2回ずつ行うリラックス特化の催眠
風の音、音楽、寝息を流して催眠とは別の癒しを与える演出。
彼女らしさを出しつつちゃんと眠れるように作品を組み立ててます。

これらすべてを30分でこなしてるのも良い点です。
安眠をテーマにした作品なのに長時間だと、もう眠いのに最後まで聴きたいもどかしい状況になります。
でもこの時間なら最後まで聴いても大してかからないので視聴後にすぐ眠れます。
繰り返し聴くのにも向いてたりと機能性を重視してるように感じました。

東方ものですけどそこまでキャラ重視の内容じゃありませんから
興味が湧いた方は是非聴いてみてください。

CV:七條未緒さん
総時間 30:00

オススメ度
■■■■■■■□□□ 7点


体験版はありません

追記
2020年9月23日まで50%OFFの220円で販売されてます。
その場合の点数は8点です。



サークル「Re:Volte」さんの催眠音声作品(全年齢向け)。

今回紹介する作品は、東方シリーズに登場するキャラ「赤蛮奇(せきばんき)」が
久しぶりに再会した男性を自宅へ招き会話と催眠で寝かしつけます。

物語が進むにつれて2人の関係や彼女が彼と別れた理由がわかるドラマ仕立てになっており
催眠はシリーズの過去作と同じくリラックスできる技法と彼女の能力を組み合わせ
そこに今までなかった要素を組み込み少しずつ癒しと眠気を与えます。
別れの前の束の間の再会
赤蛮奇に膝枕されながら安眠できる催眠をかけてもらうお話。

「ん? おや? 君は確か 随分と久しぶりだね」
赤蛮奇は穏やかな声の女の子。
久しぶりに再会した主人公に懐かしそうな表情で挨拶すると
彼が安眠できないことを知りひとまず自宅へ招待します。

本作品は昔は彼とよく遊んでたけどある事情で離れることになった彼女が
自宅を引き払う前日に偶然出会い、そこで40分程度の催眠をかけて寝かしつけます。
彼女は妖怪なので年月が経っても当時とまったく同じ容姿をしており
すっかり成長した彼を「坊」と呼びながら体を撫でたり優しい言葉をかけて甘やかします。

彼女は原作だとろくろ首をモチーフにしたキャラで
首を飛ばしたり増やす変わった能力を持ってます。
作中でそういう描写はありませんが、代わりに日本のろくろ首ではお馴染みのイメージが登場します。
あくまで癒しが目的ですからホラーが余程苦手な人でもない限り問題なく聴けるでしょう。

また冒頭でも書いたように音声の開始時点では彼女のことや彼との関係は一切わかりません。
それが催眠をかけていく中で少しずつ明らかになります。
従来のシリーズ作品よりもドラマ性を重視してる印象を受けました。
彼女が彼をどう思ってるかもつづられており、終盤でしんみりする人がいると思います。
失った関係を取り戻しながら
催眠は3パート31分間。
赤蛮奇に膝枕されたまま目を瞑り、まずは深呼吸で心身を軽く落ち着けます。
そして次の「06 絡」ではあるものを全身に巻き付けて温もりと安心感を与えます。

「体から 力が抜けていく 抜けていく どんどん 力が抜けていく」
深呼吸は呼吸音を鳴らしながらリラックスする暗示を入れる定番のものですが
その際に声をふたつに分け、それぞれを分担して進めます。
催眠音声で人気の双子っぽいアプローチですね。
この後も終盤に同様のことをするシーンが出てきます。

「うんうん 君は今も昔も 可愛いね」
これらの合間に彼女が彼を甘やかすのもポイント。
彼女は彼と別れる際に何も告げられなかったことを気にかけており
偶然の再会を喜びながらあの頃と同じように接します。
ただ催眠をかけるのではなく、当時の思い出を取り戻すことも見据えてリードします。

「きゅーきゅー 快楽に抗えない きゅーきゅー 君の体を締め付ける快楽に 君は考えるのを止めてしまう」
何かを巻き付けるシーンは「きゅー きゅー」を文頭に置いてリズムを取りながら
温かさ、心地よさ、意識が薄れる感覚を与えて催眠状態を深めます。
セリフの内容から深化を意図してるのでしょう。
その後控えめな音量で音楽を流すなど、サークルさんとキャラの個性を活かして安眠できる環境を整えます。

最後の「07 宵闇」は彼を眠らせるパート(約16分)。
ひとつの提灯をふたりで持って暗い階段をゆっくり下りていきます。

右「かつん かつん 君の手を 握っているよ 下りていく 下りていく」
左「きゅーきゅーと 君の体を優しく締め付ける」

右は階段を下りる様子、左は体を優しく包み込まれる様子と
ここでも声をふたつに分けて異なるイメージをほぼ同時に投げかけてました。
階段を下りるイメージは催眠音声だとよく使われるので
催眠慣れしてる人ほど体が沈んだり意識が薄れるのを感じるでしょう。
カウントは数えず擬声語と実況を組み合わせてゆっくりのんびり進めます。

このように、イメージを多めに盛り込みながら着実に癒す素朴な催眠が繰り広げられてます。
ちょっぴり切ない作品
温かさと切なさを織り交ぜた物語をしながら催眠をかける作品です。

赤蛮奇はもう二度と会えないと思ってた主人公の悩みを解決しようと
すっかり荷物を片付けた自宅へ案内してから昔のことを話し
さらに膝枕のまま安眠できる催眠をかけます。
そしてこれらの中に彼女の優しさや2人の関係を匂わせるセリフを込めて純粋な癒しも与えます。

東方シリーズに登場するキャラが能力を使って催眠をかけるシリーズお馴染みのシチュ
深呼吸と、イメージを交えた2種類の深化で眠らせる癒し一色の催眠
これらの最中に彼女や2人の関係にも触れる作り。
従来の東方入眠抄よりもややストーリー性を重視した作品に仕上がってます。

「ねぇ 私も あの頃のように 君が好きだよ」
中でも3番目は催眠と直接関係ないように見えて
聴き手の興味や集中力を向上させる重要な役割を果たします。
わからないことがあれば知りたくなるのが人間の本能なので
それを少しずつ明らかにすることで「この先何があるのかな」と聴きたくなる心境へ持っていきます。
切ない系のお話なのでそういうのが好きな人のほうが向いてます。

催眠については深呼吸した後はほぼイメージを中心に据えてました。
一部で双子っぽいアプローチも登場するなど
これだけ数多く制作されてもなお試行錯誤するサークルさんの向上心が窺えます。

おまけは「~ひらけ、ばんきっき~」とBGM2曲です。

CV:鷹澄真咲さん
総時間 1:01:50(本編…39:59 おまけ…21:51)

オススメ度
■■■■■■■■□□ 8点


体験版はこちらにあります

追記
作品自体の点数は7点。
62分で440円とコスパが良いので+1してあります。



サークル「Re:Volte」さんの催眠音声作品(全年齢向け)。

今回紹介する作品は、東方シリーズに登場するキャラ「上白沢慧音(かみしらさわ けいね)」が
寝つきが悪い寺子屋の生徒に安眠できる催眠をかけます。

深呼吸や脱力といったリラックスできる要素を多めに用意したり
いくつかの自然物を通じて癒しを与えるなど
テーマの安眠を強く意識したシンプルかつ効果的なリードをします。
睡眠不足も先生にお任せ
上白沢慧音に寝かしつけてもらうお話。

「おや 君か こんな夜中にどうしたのだ?」
慧音先生は穏やかな声のお姉さん。
ある日の夜、安眠できない主人公が訪ねてきたので迎えると
彼の悩みを聞いてからどうすれば眠らせられるか考えます。

本作品は現在まで22本出てる東方入眠抄シリーズの第一弾。
半人半妖の身でありながら人間の味方をし、寺子屋で教鞭をふるってる彼女が
教え子の1人にあたる彼へおよそ30分の健全な催眠をかけます。
安眠がテーマなだけあって癒しを感じる要素が充実しており
技術を使って無理矢理寝かせるのではなく、聴き手が自然と眠りたくなるようにリードします。

「いや 別に怒ってるわけじゃない 君みたいな子に頼られるのは むしろ嬉しいよ」
具体的には催眠音声でお馴染みの深呼吸や脱力の割合を高めに設定し
それらをやりながら音を聞かせたり、自然に関するイメージをして少しずつ眠気を膨らませます。
その合間に彼女が漏らす言葉も慈愛に満ちてて雰囲気がとても穏やかです。
彼は素行があまり良くないようですが、嫌な顔ひとつせず相手する姿に教師らしさを感じました。

催眠については現在のシリーズですとキャラの能力にちなんだ技術を行使し
ところどころで東方アレンジの音楽を流すのが定番になってますが
この作品はまだ作風が固まってなかったのか、とにかく眠らせることを重視して組み立ててます。
ですから東方シリーズをよく知らない人も年上ものの安眠系作品として普通に聴けると思います。
頭を空っぽにできる催眠
催眠は5パート29分間。
まずは目の前で燃えてる焚き火の炎を眺めるイメージをします。
姿勢は後々横になる描写が出てくるので最初から寝ておいたほうがいいでしょう。
ちなみにここから彼女の声にエフェクトがちょこちょこかかります。

「ほら だんだん胸が温かくなってきたでしょう? 胸からじんわりと 温かいものが広がっていくよ」
「ぱちぱち」という音をバックで流しながら
胸を中心に全身を少しずつ温かくする暗示を入れます。
炎を見つめる動作は対面催眠だとよく使われるため、それを参考にしたのではないかなと。
直後に軽く深呼吸し、さらに声に対する集中力を高めるアプローチをかけるなど
催眠にとって重要なリラックス+集中の状態を自然な形で作ります。

続く2パート10分間はさらなるリラックスと深化をするシーン。
「03relaxation」は布団へ横になって手、足、お腹と背中、顔を順に脱力し
「04water」は湖に全身が沈むイメージをして催眠状態を深めます。

「同じように 足の指を軽く曲げて? はいっ 思い切り力を入れて? 太ももまでしっかり はい脱力」
脱力は各パーツに力を入れてから抜く漸進的弛緩法というものです。
筋肉を実際に収縮するぶん、ただ意識するタイプよりも脱力を実感できます。
先ほどの火に当たるイメージも相まって体がぽかぽかするのではないでしょうか。
こんなふうに脱力を三段構えで行うのがこの催眠における特徴のひとつです。

「意識だけが落ちていくように すーっと体から離れていく感覚 その感覚が気持ちいいね」
04パートは長めのカウントを数えながらその合間に軽い暗示を入れます。
「沈む」「落ちる」「気持ちいい」を多く入れてるあたりに深化させようとする意図が見られます。
数え終わった後は03パートと同じく末端から中枢にかけて3回目の脱力をするなど
安眠しやすい心と体が空っぽな状態へと少しずつ持っていきます。

終盤の2パート14分間は眠らせることだけを見据えたシーン。
「05breath」は呼吸音、「06floating」は彼女の寝息だけを流して一緒に眠る雰囲気を作ります。

友人のあくびを見て自分も釣られてする経験をした人は結構いると思います。
それと同じで彼女がすぐ隣で安らいでる姿を通じて眠らせます。
両パートともセリフが非常に少ないおかげでこれまで以上に静かです。
これから寝ようとしてる相手に話しかけても妨げるだけですからね。

このように、十分リラックスさせてから眠らせる効果的な催眠が繰り広げられてます。
コンパクトな安眠作品
寝る直前に聴くのにぴったりな癒し一色の作品です。

慧音先生はうまく寝付けず自分を頼ってくれた主人公の願いを叶えようと
まずは火に当たって体を温めながらそれを伝える暗示を入れます(1回目の脱力)。
そして布団に移った後は2種類の脱力、カウントとイメージを組み合わせた深化
呼吸音と寝息を流し続ける安眠と手堅く導きます。

東方シリーズに登場するキャラが安眠のお手伝いをするシリーズならではのシチュ
深呼吸や脱力を多めに行い、終盤はとても静かな時間を設ける安眠に適した催眠
彼のことをお世話しながら嬉しそうな表情を見せる彼女の慈愛に満ちたキャラ。
一般的な全年齢向け催眠音声よりもキャラの存在感が出るように仕上げてます。

「寝ようと焦る必要なんてないから ただ ゆったりした気分で 体を楽にさせてごらん?」
催眠の合間にかけられる何気ないセリフにも思いやりを感じました。
本作品は催眠音声なので技術が最も重要なのは間違いないですけど
癒される、眠れる雰囲気をスムーズに作るにはこういうやり取りも結構影響します。
「寝かせる」のではなく「眠りたくさせる」ことを目指してるのもすごい良いなと。

注意点がひとつだけあります。
本作品は最後に寝ることを想定してるため解除音声が入ってません。
もし視聴後に出かける用事がある場合は無料の他作品でいいので必ず解除音声を聴いてください。

現在の作品よりも東方色が薄めですから
このシリーズをまったく聴いたことのない人が試すのに向いてます。

おまけは「ケイネが斬るtheキル!」です。

CV:saoriさん
総時間 45:37(本編…31:51 おまけ…13:46)

オススメ度
■■■■■■■■□□ 8点


体験版はこちらにあります

追記
作品自体の点数は7点。
45分で440円とコスパが良いので+1してあります。

2020年3月20日まで30%OFFの308円で販売されてます。

東方入眠抄22 ふたりぼっちのレゾンデートル

サークル「Re:Volte」さんの催眠音声作品(全年齢向け)。

今回紹介する作品は、東方シリーズに登場する天邪鬼キャラ「鬼人正邪(きじんせいじゃ)」が
友人あたりの関係にある人物に安眠できる催眠をかけます。

彼女の性格を反映させながら堅実に誘導するのが特徴で
カウントの数え方を変則的にしたり、物語の順序を敢えて逆にするなど
多少あべこべな要素を盛り込みながらシーンごとにキーとなる暗示を丁寧に入れます。

レゾンデートル…存在理由、存在価値を意味するフランス語
天邪鬼なお姉さんと
鬼人正邪に催眠をかけられ眠りにつくお話。

「よっ お邪魔してるぜ」
正邪は男っぽいしゃべり方をする凛々しい声のお姉さん。
音声を聴く際の注意事項や環境を簡単に説明すると
眠れない主人公の前に現れ安眠のお手伝いをします。

本作品は何でもひっくり返す程度の能力を持つツンデレっぽい性格の彼女が
既に知ってる仲の彼に50分程度の変わった催眠を施します。
彼女は人が嫌がることを好み、人を喜ばせると自己嫌悪に陥る典型的な天邪鬼で
作中でもそれを匂わせる描写がいくつも登場します。

「君が眠れないって言うから 嫌々ながら来てやったんだ 感謝してよね」
本心では彼のことを心配してるのに上のような憎まれ口を叩いたり
催眠の序盤で変則的なカウントの数え方をするなど
ストレートに癒やす従来の東方入眠抄シリーズとは違い多少の捻りを加えながら進めます。
過去作には見られなかったチャレンジ精神旺盛な取り組みも見られて結構個性的です。

ただし、聴き手が催眠に入れなくするようなことは一切しません。
催眠の基本をしっかり押さえつつ、そこに悪影響を及ぼさない程度の悪戯をします。
過去作より入念なアプローチがされててむしろ入りやすいです。
天邪鬼でも素直になれる場所へ
催眠は4パート47分間。
一番最初の「03 カウントアップ」は彼女がカウントを数えながらリラックスできる暗示を入れます。

「意識を集中させて 私の声に集中して?」
「落ちる 落ちる すーっと意識が落ちていく」

パートの序盤は彼女の声に対する集中力を高め
中盤以降は「落ちる」を多めに言って最初の深化を促します。
終盤には落ち着いたBGMも流れたりと、彼女なりに優しく接してくれてるのがわかります。

暗示の表現や入れ方は割と普通にして、カウントの数え方に天邪鬼なところを盛り込んでます。
被暗示性の高い人ならここだけでも意識がぼんやりしてくるでしょう。

続く「04 催眠導入」は催眠状態をより深めるシーン。
彼女が抱きつき頭を撫でながらその温もりと心地よさを伝え
その後は逆に彼から力を奪って心身を骨抜きにします。

「手の先 足の先がじんじんしてくるよ ぽかぽか ぽかぽか 温かい 体中が温かい」
「左右の手から 力が抜けていく 1 2 3」

抱きつくシーンは「じーん」「ぽかぽか」といった擬声語を挟みながら「温かい」と入れ
力を奪われるシーンはカウントを交えて「力が抜ける」と丁寧に言います。
本作品の催眠はシーンごとにキーとなる暗示を定め
言い回しを変えながらそれを多めに言って感覚を操作する堅実なリードがされてます。


作品の性質上どうしても意地悪に振る舞わざるを得ないシーンがあるので
それをきっちりカバーするためにこういう作りにしたと私は見ています。
一部で声にエフェクトをかけて意識を揺さぶる工夫もされてて心地よかったです。

3番目の「05 反逆」は彼女とより親密になるパート。
復唱形式で彼女の言葉を言って自己暗示を入れ
それから本当の自分をさらけ出せる無意識の領域へ移動し、天邪鬼じゃなくなった彼女のお話を聞きます。

「全部 全部 逆さまなんだ 私は 生き様のためなら ひどいこともする けど 私の本質はそこじゃない」
彼女は生まれながらの天邪鬼なので真っ当な生き方をしたくてもできません。
そんな切ない事情を先ほどとは別のBGMを流しながらぽつりぽつりと語ります。
催眠とは直接関係ない要素ですが、東方入眠抄シリーズはキャラが売りの作品ですから
相手のことをより深く知るシーンは必要だし、それが結果的に信頼関係の向上にも繋がります。
意地悪してるのが本心かそうじゃないかで印象は随分変わりますからね。

そして最後の「06 出会い」でいよいよ眠りにつきます。
催眠では序盤によくやる深呼吸をしながら彼女の言葉に耳を傾けます。

「大好きになる 君は 私のことが 大好きになる」
普段の彼女ならまず言わないようなセリフを投げかけ
さらに無言の時間を適度に挟み眠りやすい環境を整えます。
終盤にほぼ正反対のことを短時間で言うのも彼女らしいです。
最後の最後にちょっぴり寂しいことを言うので、やや物悲しく感じる人がいるかもしれません。

このように、催眠はしっかり行ったうえで天邪鬼なところも見せる彼女らしいサービスが繰り広げられてます。
風変わりな安眠作品
安眠効果を維持しつつ変わったことにも挑戦してる作品です。

正邪は自分にとって仲の良い存在にあたる主人公を眠らせようと
まずは天邪鬼なところを見せながら癒したり深化させる暗示を丁寧に入れます。
そして2人だけの場所に移動した後は本心を語ってから眠りに導きます。

天邪鬼だけど面倒見のいい女性が催眠をかけて眠らせるノーマル向けのシチュ
シーンごとにメインの暗示を定め一歩ずつ着実にリードする丁寧な催眠
ところどころで変則的な要素を挟む彼女らしい演出。
シリーズの過去作と同じくキャラの持ち味を活かした作品に仕上げてます。

特に2番目はこのところサークルさんが力を入れられてるようで
催眠の流れ、技術の繋げ方、暗示の入れ方や表現方法に安定感があります。
東方モノでも催眠音声である以上は入りやすさが重要になりますから
そこがしっかりしてれば作品の品質は自然と上がります。

あと個人的にすごく面白いなと思ったのがパート構成です。
本来なら序盤に来る「出会い」を最後へ回し、その代わりに「カウントアップ」を置いてます。
ここからはあくまで私の推測に過ぎないのですが
彼女が天邪鬼キャラだからこの2パートをわざと逆に配置したのだと思います。

そう言える主な根拠はそれぞれで使われてる技術です。
「出会い」では深呼吸、「カウントアップ」では長めのカウントを数えながら深化の暗示を入れます。
東方入眠抄シリーズだと前者は序盤に行い、後者は終盤にやる傾向が見られます。
また「カウントアップ」ではBGMが流れるのですが、これも過去作だと中盤と最後によく登場します。
私が記憶してる限り一番最初のパートで流れたことは確かなかったはずです。

「出会い」というパート名を一番最後につけるのも異色です。
調べてみたら過去作で「出会い」やそれに類する単語を冒頭のパート名に定めてる作品が6本ありました。
つまりサークルさんにとって最後よりも最初につけるほうがずっと妥当なわけです。

結局のところ作った本人にしかわからないのでこれは単なる思い込みなのかもしれません。
でもそう判断できる材料が複数用意されてるのも事実です。
ちゃんと安眠できるようになってますから特に問題はないと見ています。

以上を踏まえて今回はこちらの点数とさせていただきました。
おまけは「デレデレ正邪さん」とBGM2曲です。

CV:稲垣麻木さん
総時間 1:11:14(本編…52:20 おまけ…18:54)

オススメ度
■■■■■■■■□□ 8点


体験版はこちらにあります

東方入眠抄21 華扇ちゃんと、ぐっすり安眠トレーニング

サークル「Re:Volte」さんの催眠音声作品(全年齢向け)。

今回紹介する作品は、東方シリーズに登場するキャラ「茨木華扇」が
催眠を交えた優しい修行で寝付きの悪い人間を安眠させます。

催眠の開始前や序盤に安眠するためのアドバイスをしたり
中盤以降は頭の中を空っぽにして彼女と宇宙に漂うなど
トレーニング要素を持たせた独特な癒しのサービスを行います。
仙人とする癒しの修行
茨木華扇に催眠をかけられ眠りにつくお話。

「あら? 村の方ですか?」
華扇は明るくて穏やかな声の女の子。
自分のところへやって来た主人公をやや驚いた様子で迎えると
用向きを尋ねてから彼を弟子にしてあげます。

本作品は仙人として様々な技能を持ってる彼女が
寝付きが悪くて悩んでる彼の師匠になって50分程度の修行をします。
といっても体を激しく動かしたり何か勉強するといったことは特になく
安眠するのに必要なものが何か簡潔に教えてからそれに沿った催眠をかけます。

「睡眠っていうのはね 瞑想に近いものがあるの」
私は原作の彼女を知らないのでお婆さんっぽいしゃべり方をすると思ってたのですが
実際は割と普通の女の子といった印象で気さくに語りかけてくれます。
それでいて目的に合ったアドバイスをするところが仙人らしいなと。
堅苦しさを取り除いて眠りやすい空気を作り上げてます。

催眠はおよそ37分間。
事前に5分ほどをかけて安眠するためのコツを軽く伝授してから
最初の「05 入眠修行」は仰向けに横になって目を瞑り
そのまま体を左右に揺らしてひとまずリラックスします。

「ぷるぷると 小刻みに左右に体を揺らして 体の芯から 振動が波になって 指先 足先 頭にまで到達していくイメージ」
そして彼女は揺れてる様子を実況しながら暗示を入れて感覚を伝えます。
実際に動かしたほうが効果的ですけど、寝たままやるのは大変なので
別にイメージで代用してもいいと思います。
催眠開始前に比べて話すペースを緩やかにし、セリフの間も長く取って落ち着きやすくしてます。

パートの終盤に彼女の声に対する集中力を上げるのも良いですね。
催眠は平たく言えばリラックス+集中の状態ですから序盤でその準備を整えます。

続く「06 浸透」はさらにリラックスしながら催眠状態を徐々に深めます。
自分の好きなペースで深呼吸を繰り返し、そのまま彼女の言葉とカウントに耳を傾けます。

「どくん どくん 力の抜けた 魂の抜けたあなたの体に 私の言霊が浸透していく」
彼女は彼の不眠の原因が心にあると判断したのでしょう。
だから呼吸を通じて余計なものを吐き出させ、代わりに彼女の言葉を取り込みます。
「魂が抜ける」「言霊が浸透する」とここも修行っぽい言い回しにしてました。
途中から落ち着いた音楽を流して別方向から癒やすなど
シリーズの過去作で培ってきたものを色々投入してサービスを組み立ててます。

そして最後の「07 星闇」は本題の安眠に移ります。
これまでとは別の場所に移動し、そこで彼女と抱き合ったままゆっくり眠りにつきます。

誰にも邪魔されない場所で彼女と2人きりの状況を作り
そこでさらに深化させたり別の音楽を流す癒し一色の内容です。
このへんまでくると意識がそれなりにぼやけてるでしょうから
彼女も無理矢理寝かそうとせず、それを助ける材料を与える方針で進めます。

このように、タイトルの「安眠トレーニング」をそのまま音声化した催眠が繰り広げられてます。
安眠のきっかけを与えてくれる作品
単に眠らせるだけでなく今後に向けたケアもする作品です。

華扇は安眠を求めて自分のところへやって来た主人公の願いを叶えようと
彼と師弟の関係を結び、催眠をかけながら適度にアドバイスしてまずはリラックスさせます。
そして中盤以降はカウントを数えながら暗示を小まめに入れて意識の力をさらに弱めます。

東方シリーズに登場するキャラが催眠をかけるサークルさん独自のシチュ
仙人よりも面倒見のいいお姉さんっぽく振る舞う彼女のキャラ
古典催眠の技術をベースに作品固有の要素を盛り込んだ緩い催眠。
シリーズの特徴を維持しつつ、やや捻りを加えた作品に仕上がってます。

「私たち仙人は 結局のところ ○○のことなの」
お姉さんっぽくもあるけど達観したところを見せてくれるのが印象的でした。
最終パートでは仙人とは何か、安眠するのに最も必要なものが何かを教えてくれます。
催眠と直接関係ない要素とも言えますけど、東方入眠抄シリーズは眠らせるのが最終目的ですから
それに沿ったことをやってる限りは別に問題ないと思います。

催眠は本作品に限らずこのところ独自色を強くしてます。
深呼吸して、脱力して、カウントを数えるといった定番の誘導から
複数の要素を組み合わせる、あるいは音楽を流しながらそれに暗示を込めるものに変化してます。
音楽はもっと有効活用できるんじゃないかと思ってたので
催眠と絡める試みは安眠に向いてますし、独自性を出すのにも役立ってます。

あとは声にエフェクトをかけるシーンを限定してるのも良かったです。
要所で使ったほうが「大事なシーンだよ」と直感的に伝えられます。

安眠催眠にプラスアルファの要素を組み込んだ大変癒やされる作品です。
おまけは「DokiDoki Under Roof Life」とBGM3曲です。

CV:saoriさん
総時間 1:19:02(本編…47:20 おまけ…31:42)

オススメ度
■■■■■■■■□□ 8点


体験版はこちらにあります

東方入眠抄20 烏天狗はたての快眠念写術

サークル「Re:Volte」さんの催眠音声作品(全年齢向け)。

今回紹介する作品は、東方シリーズに登場するキャラ「姫海棠(ひめかいどう)はたて」が
自分に会いに来てくれた人間を変わった手段で眠らせます。

彼女の能力「念写」を絡めた癒し特化の催眠が行われており
前半部分は脱力や深呼吸といったリラックス系の技法で固めて段階的に落とし
終盤で様々な癒しの要素を投げかけ、聴き手が自分でイメージできるようサポートします。
あなたに贈る最高の一枚
姫海棠はたてに催眠をかけられ安眠できる写真を撮るお話。

「あら? お客さんだなんて 珍しいこともあるのね」
はたては明るくて素朴な声の女の子。
音声を聴く際の注意事項を丁寧に説明すると
妖怪の山へやって来た主人公を嬉しそうにもてなします。

本作品は原作だと念写の能力を持ってる彼女が
不眠に悩んでる彼に60分近くの健全な催眠をかけて改善を手伝います。
シリーズの過去作に比べて時間が30%ほど長くなったこともあり
これまでよりもゆっくりリードして少しずつ催眠の感覚を膨らませます。
最後に寝て終わるようになってるので解除音声は入ってません。

「私は 君の意識に同調して 君の望むものを投影する」
彼女が今回のサービスで大事にしてるのは「一体感」
安眠できる写真が欲しい彼の願いを叶えようと、序盤から膝枕して頭を優しく撫で
それと同時に信頼が深まる言葉を投げかけて心身の距離を近づけます。

念写の能力はあくまで彼女が思い描いたものを映像化するものです。
だから催眠を通じて彼が求める一枚を念写できる環境を整えます。
終盤にはそれに合ったアプローチをかけてきますから
上手く催眠に入れていれば頭の中に何らかの映像が浮かび上がるでしょう。
癒しのパワー溢れる催眠
催眠は3パート42分間。
仰向けに横になって目を瞑り、まずははたてに体を撫でられてるイメージをします。

「なでなで なでなで 左手から すーっと力が抜けていく」
「顔の力が 抜けていくのを感じるよ 少しぼーっとしてきたね」

「なでなで」を適度に交えてセリフのリズムを取りながら
左右の腕、足、そして頭を個別に脱力してリラックスします。
冒頭シーンよりもセリフの間隔を長めに取って話しかけてくれるおかげで気持ちを落ち着けやすく
彼女が彼を眠らせようと気を配ってるのが自然と伝わってきます。

続く「05 体が痺れて君に」はさらなる脱力と深化。
事前に焚いておいたお香の効果で全身を軽く痺れさせ
その後にカウントを数セット数えながらその都度暗示を入れて催眠状態を深めます。

「右手が痺れてくるね ぴりぴり ぴりぴり」
先ほどの脱力とほぼ同じ流れで痺れる感覚を伝えるのが良いですね。
そうやってリラックスを段階的に強化し暗示をより受け入れやすくします。
私が聴いた時も足の裏にピリピリした感覚がしました。
長時間正座をした時によくある心地いい痺れです。

パート終盤のカウントによる深化も音響効果を有効に使ってたりと
シリーズの過去作に比べて催眠の技術が上がった印象を受けました。

本題の念写が始まるのは最後の「06 君の意識の底で」(約23分)。
これまでの誘導を通じて2人だけの世界に辿り着いた彼女が
一体感をさらに強めてから彼が望むイメージを呼び起こします。

「2人で見る 満天の星空 2人で遊ぶ 夏の海 プール 2人で食べる スイーツ」
ここでは何か特定のシチュや情景を思い浮かべさせるのではなく
癒しや楽しさをを感じる色んな要素を列挙し、その中から好きに選んでもらうスタイルを取ってます。
例えばアウトドア派の人は外に出たほうが気分が晴れるでしょうし
逆にインドア派は家の中で寛いでる方が落ち着くと思います。
だからより多くの聴き手に対応できるよう大まかな枠組みだけ用意し、あとは任せるわけです。

催眠に入ってると普段よりもイメージ力が向上するでしょうから
こういうアプローチは効果的だし彼女の能力「念写」とも大変マッチしてます。
自然と思い浮かんだものを鮮明にして癒やす本作品らしい安眠法です。

このように、しっかりリラックスさせてから目的地に導くテーマ性の強い催眠が繰り広げられてます。
心を通わせる作品
はたてとの信頼関係を大事にした質の高い作品です。

はたてはわざわざ妖怪の山を尋ねるほど寝付きの悪さに悩んでる彼を救おうと
まずは催眠を通じて心身をリラックスし、それと同時に2人の距離も縮めます。
そして準備が整ったところで彼に自由なイメージをさせて自然と眠れるようにします。

東方シリーズのキャラが催眠を使って寝かしつけるシリーズお馴染みのシチュ
前半部分をまるまる使ってゆっくりリラックスと深化を促す丁寧なリード
彼女の能力を技術と上手く絡め合わせた最終パート。
過去作が元々持ってた良い部分を維持しつつ催眠を強化した癒されるサービスに仕上がってます。

中でも3番目の要素は本作品を象徴するシーンということで
敢えて遊びを設ける大胆な試みがされてて面白いです。
術者がイメージを指定するより聴き手の無意識に任せたほうが癒しも得やすいですからね。
念写をこのように活用してるところに最も感銘を受けました。

あとは前項でも触れましたが催眠の技術が上がってるように思えます。
以前はイメージの扱い方以外は割と似たような誘導をしてたのですが
今回はそれにアレンジを加えてひとつの流れを作ってます。
手足が痺れる感覚を与えるのも珍しいですし、サークルさんが工夫された跡が見られます。

イメージ主体の作品が好きな人には特におすすめします。
おまけは音声3種とBGM2種です。

CV:七條未緒さん
総時間 1:18:41(本編…56:10 おまけ…22:30)

オススメ度
■■■■■■■■□□ 8点


体験版はこちらにあります

東方入眠抄19 〜恋する小悪魔〜 la diablotine amoureuse

サークル「Re:Volte」さんの催眠音声作品(全年齢向け)。

今回紹介する作品は、東方シリーズに登場するキャラ「小悪魔」が
召喚した人間に催眠をかけながらお互いに今欲しいものを与え合います。

彼女の背景を語りながら安眠させるドラマ性重視の催眠が行われており
前半部分は深呼吸やストレートな暗示でリラックスと信頼関係を強め
後半から彼女が彼を呼び出した理由や求めてるものに触れて心をさらに温めます。
悪魔だって愛が欲しいの
小悪魔が安眠できる催眠をかけるお話。

「どうもはじめまして そして これからよろしくお願いしますね」
小悪魔は丁寧な言葉づかいをする穏やかな声のお姉さん。
紅魔館に逆召喚された主人公に挨拶し事情を説明すると
契約を交わす見返りに彼が求めてる安眠へと導きます。

本作品は館の中にある大図書館で司書をしてる彼女が
契約の見返りとして40分程度に渡る癒しの催眠を施します。
原作では本名不明、しかも特別な能力も持たないキャラのため
能力にちなんだイメージを使う他のシリーズ作品とはやや違うやり方で物語を進めます。

「せっかく図書館にいるのですから 本を読んであげましょうね」
具体的には彼女が作中で「魔法の本」と呼んでるものを聞かせるスタイルを取ってます。
調べた限りだと彼女にこの本に描かれてるような設定はされてないようなので
もしかしたらサークルさんの創作なのかもしれません。
Re:Volteさんはこのところオリジナル作品も制作されてますから、そうだったとしても別段おかしくないと思います。

もちろん旧来の良いところもきっちり受け継いでます。
冒頭シーンで悪魔から連想される契約を持ちかけ、彼が望んだ安眠を提供します。
その代わり彼女も自分が今欲しいものを得て幸せな気分に浸ります。

彼女が何を求めてるのかは伏せさせていただきますが
基本的には癒やす方向で進めますから暗さやヤバさはありません。
タイトルの「恋する小悪魔」にピッタリな愛のあるサービスをしてくれます。
シリーズの特徴を受け継ぎつつ新しい要素も取り入れたドラマ性のある作品です。
小悪魔が持つもうひとつの顔
催眠は3パート33分間。
仰向けに横になって目を瞑り、1分程度深呼吸してから小悪魔のことが好きになる暗示を入れます。
ちなみに本編はほぼすべてのシーンで声にエフェクトがかかります。

「私のことを好きになって? そうしたら あなたの願いを叶えてあげられる」
「頭の中が 黒い色に染まっていく 闇の色 私たちの色」

普段通りの穏やかな表情で「好き」を何度も投げかけながら
彼女の容姿に関するイメージを軽く語って心と体の距離を近づけます。
そしてある程度進んだ後は短めのカウントを何度も数えて別の世界へ案内します。

事前にもう少し準備してから暗示を入れたほうがかかりやすい気もしますが
彼女に悪意がなく、彼に自分を好きになってもらおうと頑張ってる様子は伝わってきます。
いきなり物語を絡めずに信頼関係の構築や深化に力を入れてるのも良いです。
カウントを数えるシーンでは「闇へ落ちていく」など悪魔らしい暗示表現を心がけてました。

3番目の「思い出の牢獄」は本題にあたる物語(約19分)。
長い時を経て老朽化した廃墟に降り立った主人公が
その中にいるとある存在と体を触れ合い愛情を注ぎます。

「あなたの熱に反応するかのように ○○がピクリと動く」
詳しいことを書くと盛大なネタバレになってしまうので感想だけ言わせていただきますと
一抹の物悲しさ、切なさを感じるお話でした。
時折流れるBGMもそれに合った儚げな旋律を奏でます。
無言の時間を適度に挟んであるのもそれを引き立てるための演出なのかもしれません。

催眠の技術も一応使われてますけど、それよりはストーリーで心を揺さぶるシーンかなと。
催眠に入ってる感覚があまりしない一方で胸のあたりがジーンとするのを感じました。
安眠に関する誘導は中盤にカウントを数えながらその手の暗示を入れたり
終盤に軽い寝息を立てる程度と少なめになってます。

このように、前半と後半で内容を大きく切り替える変わった催眠が繰り広げられてます。
ドラマ仕立ての作品
従来の東方入眠抄シリーズよりもドラマ成分が強い作品です。

小悪魔は広大な図書館で本の管理をしてる寂しさを少しでも紛らそうと
自分の意志で主人公を異界から召喚し、安眠させる見返りとしてとあるものを求めます。
そして前半はリラックスと好きになる暗示、後半は物語と方向性を大きく変えて催眠を施します。

東方キャラが能力を使わずに安眠させる今までとは違ったシチュ
悪魔のイメージよりずっとおおらかな彼女のキャラ
その背景がだんだんとわかるようになるストーリー性のある催眠。
技術で癒したり眠らせることの多い全年齢向け催眠音声とは異なるタッチで仕上げてます。

「これは 物語 そういうお話」
今回は物語が肝になる関係で普段よりもかなりぼかして書きました。
このへんを語ってしまうとたぶんこの作品を聴く楽しみが大幅に削がれてしまいます。
物語の最初と最後で彼女の口調を聴き比べてみてください。

ただ東方入眠抄の他作品よりも催眠の割合がやや減ってるところだけは気になりました。
催眠音声は一言で言えば技術の集積体なので、その分量が減れば当然品質にも影響が出ます。
エフェクトの効果で意識のぼやけや眠気を感じる人はいるでしょうけど
それは催眠の技術とまた別ですし、少なくとも当サイトではあまり評価しないことにしてます。

癒しのパワーは十分にありますから、内容を理解したうえで聴くなら問題なく楽しめるでしょう。
おまけは「小悪魔さんと幸せ添い寝生活~深夜編~」とアレンジ曲2本です。

CV:柳愛子さん
総時間 1:03:06(本編…41:12 おまけ…21:54)

オススメ度
■■■■■■■□□□ 7点


体験版はこちらにあります

東方入眠抄18  依るべない夜と少女の依物語

サークル「Re:Volte」さんの催眠音声作品(全年齢向け)。

今回紹介する作品は、東方シリーズに登場するキャラ「依神紫苑」が
偶然出会った男性に寄り添いながら安眠できる催眠をかけます。

催眠自体は深呼吸や分割弛緩といったオーソドックスな技法を施し
その中に若干ネガティブな印象がする暗示を入れて貧乏神らしさを出してます。
貧乏神にできる精一杯のおもてなし
依神紫苑に催眠をかけられ眠りにつくお話。

「あ、あの…こんばんわ ごめん 急に部屋に入ってきたからびっくりさせちゃったかな?」
紫苑は優しくて大人しそうな声の女の子。
主人公の家に突然現れ取り憑いてしまったことを謝ると
自己紹介してから不眠に悩んでる彼を安眠へと導きます。

本作品は自分と相手の両方を不運にする能力を持つ彼女が
眠れなくて夜に出歩いてる彼と偶然出会い、そのまま家まで付き添い悩みを聞いてあげます。
原作では貧乏神をしてるだけあって声が弱々しく態度も控えめに振る舞うことが多いです。

東方入眠抄シリーズは登場人物の特徴や能力を使って催眠をかけるのが特徴です。
本作品もその例に漏れず、主に後半シーンで彼女らしいアプローチをかけてきます。
ただ貧乏神を全面に押し出すと却って安眠しにくくなることを踏まえて
他のシリーズ作品よりも表現に気を遣ったり抑えて進めます。

一風変わった安眠音声といった感じですね。
彼女も終始優しく健気に振る舞うので雰囲気は穏やかです。

催眠はおよそ30分間。
一番最初の「催眠準備」パートは催眠に入りやすい環境づくりを目的に
深呼吸したり体をいくつかのパーツに分けて順番に脱力します。
催眠開始後は彼女の声に若干のエフェクトがかかります。

「吐き出す時に 体の中から 黒いもやのようなものが出ていくイメージ」
「右手に溜まった淀みが 呼吸と一緒に口から出ていく」

そして彼女は早速「悪いもや」「淀み」といった若干ネガティブな単語を取り入れ
それらが体から出ていくイメージを通じてリフレッシュさせます。
脱力の際はそれぞれで短いカウントを数えながら暗示を入れてくれますし
声や雰囲気も相まってそれなりに重さを感じます。

続く「催眠パート」は深化。
彼の許可をもらってから彼女が右手に添い寝し、体を密着させながら意識の力をさらに弱めます。

「とくん とくん 心 温かくて ドキドキしているよ とくん とくん 君の心が 少しずつ無気力になっていく」
「ぐにゃり 意識が 感覚が すべてのものが形を失う」

ここでは彼女の能力を使ってやる気を奪い眠らせようとするのがいいですね。
十分脱力した時に感じるぼやけた感覚を水に例え、自分の存在が希薄になったようなイメージもさせます。
カウントを数えながらゆっくり暗示を入れる流れも緩やかで取り組みやすく
いい気分に浸りながら頭を空っぽにして聴くことができます。

「幸福の中で 君の存在がさらに希薄になって 消えてしまうよ 大丈夫 私が一緒にるから 意識が消えるまで 私たちはずっと一緒」
そして最後の「憑依」パートではお互いの心をさらに近づけます。
彼を支配するのではなく一体化する方針ですから融合と言ったほうが妥当かもしれません。
前のパートを引き継いでより意識を希薄にし、それと同時に彼女がすぐ近くにいる安心感を与えます。
中盤から流れるピアノBGMもその場の雰囲気に合ってて良いです。

このように、多少のイレギュラー要素を交えて眠らせるやや珍しい催眠が繰り広げられてます。
物悲しさを含んだ作品
貧乏神から連想されるイメージを取り入れて癒す挑戦的な作品です。

紫苑は自分が貧乏神だとわかってるのに受け入れてくれた主人公をぐっすり眠らせようと
できるだけ不幸にしないよう気遣いながら少しずつ心と体の距離を縮めます。
そして催眠技法はスタンダードなものを用い、最中の暗示で彼女らしさを出します。

癒しや安眠にあまり適さないキャラがお世話する展開
リラックスできるアプローチを多めに用意し、その中にちょっぴりネガティブな描写を込めた催眠。
あまあまなキャラがする一般的な安眠催眠との違いを出して物語を進めます。

「君のことを大事に思えば思うほど 私は君のそばにはいられない」
彼女は持って生まれた能力のせいで他人となかなか一緒にいることができません。
だから彼に深く感謝しつつできるだけ早くこの場から離れようとします。
この矛盾した思いが聴き終えた時にちょっぴり切ない気分を与えてくれます。

ストレートに眠らせておしまい、ではないところが本作品の個性であり魅力です。
明るいタッチのおまけ音声が用意されてますから寂しいと感じたらそちらで口直しするといいでしょう。

催眠はシリーズの過去作と技法を特に変えず暗示の表現で違いを出してます。
露骨にネガティブな言い回しにすると安眠を阻害してしまうためかなり気を配ってる印象を受けました。
安眠音声として十分な品質を持ってると言えます。

おまけは2種類の音声と4種類のBGMです。

CV:稲垣麻木さん
総時間 1:05:30(本編…36:32 おまけ…28:58)

オススメ度
■■■■■■■□□□ 7点


体験版はこちらにあります

東方入眠抄17 あうんちゃんに守護られて安らかに眠る音声催眠

サークル「Re:Volte」さんの催眠音声作品(全年齢向け)。

今回紹介する作品は、東方シリーズに登場するキャラ「高麗野あうん」が
催眠を交えた独自の方法で寝付きの悪い男性を安眠へ導きます。

催眠を始める前に彼を安心させる言葉をかけて信頼関係を構築したり
神社でお祓いする様子に暗示を込めて心を浄化するなど
彼女の性格や特性を反映させた穏やかで温かみのあるサービスが楽しめます。
安眠に最も効く薬は
高麗野あうんに安眠できる催眠をかけてもらうお話。

「ん? こんな時間にどうしたんだい?」
あうんはあどけない声の女の子。
ある日の夜、自分が守護してる神社を偶然訪れた主人公に声をかけると
素性を説明してから彼の悩みを聞いてあげます。

本作品はストレスや不安で寝付きの悪い人をぐっすり眠らせることを目的に
彼女が40分程度の時間に渡って心身をリラックスさせたり催眠状態を深めます。
シリーズ17作目ということで最大の特徴である「キャラを活かした催眠をかける」部分を継承し
それに多少の新要素を盛り込んで眠りやすい環境づくりに努めます。

「せっかくの眠りだもの 気持ちよく眠りたいよね」
あうんは一言で言えば人懐っこく面倒見のいい女の子。
初めて会ったばかりの主人公が不眠に悩んでるのを知って同情し、すぐさま自分の力を少し貸して心を軽くします。
さらに眠る時間になったら彼の部屋に出向いて安眠できてるかを確認します。

神社に祀られてる狛犬がモチーフになってるだけあって相手を守る気持ちを非常に強く持ってます。
多くのシーンで体を密着させながら語りかけてきますから
聴いてるうちに彼女の優しさや温もりが伝わってくるのを感じるでしょう。
催眠がメインなのは間違いありませんが、聴き手を安心させる要素も多く盛り込んで物語を組み立ててます。

催眠は3パート29分間。
2人が出会った日の深夜、主人公がうまく眠れてるか気になって部屋を訪れたあうんが
右手に添い寝したまま深呼吸や簡単なお祓いをしてまずは心を浄化します。
彼女は目を開けたまま聴いてねと言いますが、私は最初から閉じたほうがいいと思います。

「私の熱が 君にゆっくりと移っていく 私のいる右側から 徐々に君の体が温かくなっていくよ」
そして聴き手がより主人公と同じ視点でこの音声を楽しめるように
序盤から体がほんのり温かくなる暗示を入れて彼女の近さを感じさせます。
この後のシーンでも温感操作を適度にしてきますから、後になるほど変化を実感するでしょう。

「祓い給え 清め給え スーッと心が綺麗になっていく 感情が平坦になって 頭の中が空っぽになる」
お祓いは手を叩き祝詞を唱えつつ心が清らかになる暗示を丁寧に入れます。
彼女の来歴を踏まえて本作品は神社にまつわる行為やイメージを積極的に使用します。
日本人にとって神社は特別な場所ですから、その雰囲気によって癒そうとする意図が見られます。

心をある程度リラックスさせた後は彼女と別の世界に旅立ちます。
浮遊するイメージや溶けるイメージで今度は体を浄化し
無事移動できた後はそこにある神社で夕方から夜にかけてを過ごします。

「右へふわふわ 左へふわふわ 暖かくて 優しくて 気持ちがいい」
「徐々に 徐々に 感覚を失っていきます 足の先から ピリピリと 痺れるように 感覚がなくなっていく」

浮遊するイメージの時に声が左右に小まめに移動するのが面白いですね。
本作品はシリーズ初のバイノーラル録音なので、声の位置や距離を活かした演出も取り入れてます。
直後の体が溶けるイメージも全身を下から上へなぞる形でピリピリした感覚を少しずつ広げます。

催眠に入ると体がピリピリする人は割といるのではないでしょうか。
私の場合は膝から下の部分が特にそう感じました。
正座をしばらく続けた時に近い不思議で心地いい感覚です。

「君の心は満たされて ゆっくりと 眠りの底へと沈んでいく」
神社に移動した後はお願い事をしてから満天の星空の下で眠りにつきます。
カウントをゆっくり数えてその直後に眠気が増す暗示を入れるストレートなアプローチに加えて
落ち着いた音楽を流す、彼女が寝息をたてると催眠以外の要素も盛り込んだ雰囲気の良いシーンです。
さらに最後のほうで彼女が自分の正直な気持ちを漏らすなど、彼女の存在を身近に感じながら静かなひと時を送ります。
そのまま眠って終わる流れですから解除音声はありません。

このように、和風情緒漂う和やかな催眠が繰り広げられてます。
安心する作品
技術で直接眠らせるのではなく安心させて眠気を誘う作品です。

あうんは眠れなくて悩んでる主人公を少しでも楽にするために
最初から人懐っこい態度で彼の力になろうと頑張ります。
そして催眠開始後は自分にまつわるイメージを絡めた誘導で少しずつ心身を落ち着けます。

良い意味で神獣っぽくない彼女のキャラ、狛犬がいる神社のイメージを活用した催眠
彼女との近さや一体感を重視した演出。
彼女の人肌で体を、優しい言葉で心を温めて安らぐ環境を整えます。

「夢を見よう? とても幸せで 満たされた夢を」
特に3番目の要素は音声の最初から至近距離に寄り添い
その後も2人で一緒に移動したり眠りにつく流れで進めます。
安眠できない理由は色々ありますが、彼の場合は寂しさが最も大きな原因と考えたのでしょう。
だから彼女は常に「守護られて」る気分に浸れるように誘導します。

従来の東方入眠抄シリーズよりも純粋な癒しが強くなってる印象を受けました。
バイノーラル録音だから以前より距離が近く感じるのもあります。
今後も録音環境を活かした表現や演出が登場するのではないかと見てます。

唯一気になった点は目を閉じるタイミングです。
作中では最終パートの冒頭(音声開始からおよそ27分後)に閉じる指示が出ますが
催眠開始からそこに至るまでのシーンに目を開けてる状況を活用したアプローチが特にされてません。
これが例えば凝視法を使うのならわかるのですが、実際はほとんどがイメージを用いたものです。

目を開けてると視覚から色んな情報が入ってきてイメージ力が削がれてしまいます。
イメージ重視で進めるなら最初から閉じたほうが催眠に入りやすいのではないかなと。
純粋に目を閉じてたほうがリラックスできるのもあります。

キャラの性格や持ち味を反映させた安眠特化の作品です。
おまけは「【添い寝ボイス】ああ、うん。そう?」とBGM2種です。

CV:鷹澄真咲さん
総時間 59:39(本編…37:46 おまけ…21:53)

オススメ度
■■■■■■■■□□ 8点


体験版はこちらにあります

追記
作品自体の点数は7点。
59分で400円とコスパがいいので+1してあります。

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