サークル「Re:Volte」さんの催眠音声作品(全年齢向け)。
今回紹介する作品は、東方シリーズに登場するキャラ「小野塚小町」が
不眠に悩んでる人間を独自のやり方で癒したり寝かしつけます。
ほぼ全編で川の音を流しながら催眠をかけるのが特徴で
序盤は船に揺られる心地よさを与えながら川の音にも暗示を込めてリラックスさせ
中盤以降は深呼吸、カウント、分割弛緩法といった技術と組み合わせて
聴き手が自分から眠りたくなるよう導きます。
死神と過ごす穏やかなひと時
「おや? お前さん こんなところで何してるんだい?」
小町は江戸っ子っぽいしゃべり方をする穏やかな声のお姉さん。
生きたまま賽の河原へ迷い込んできた主人公に声をかけると
軽くジョークをかましてからそうなった理由を尋ねます。
本作品は三途の川の船頭として多くの死者をあの世に送ってる彼女が
不眠の影響で偶然やって来た彼をおよそ45分に渡って寝かしつけます。
彼女の船に乗ってから催眠を始めるためほぼ全編で川の流れる音が鳴り
それによる純粋な癒しと催眠の技術を組み合わせてゆっくりじっくり眠気を膨らませます。
大きな川らしく「さらさら」ではなく「じゃばじゃば」みたいなやや激しい音になってますが
質感が優しく清涼感もあるので聞き続けてるとほとんど気になりません。
音を楽しみやすくするためにわざと無言の時間を適度に用意してます。
「私ら船頭は 仕事もサボりも 船の上だからね よく眠れるのは 私のお墨付きってわけさ」
彼女については「世話好きな江戸っ子」と呼ぶのがしっくりくる女性です。
変わった理由で三途の川へやって来た彼に気さくに語り掛け
催眠を通じて不安を取り除いて眠りやすい環境を整えます。
また世界観に合うよう英語やカタカナを使わずにセリフを組み立ててます。
普段死人ばかりを相手にしてるからでしょうけど
彼と一緒に過ごすこの時間を幸せに感じてるように映りました。
途中から腕枕もするなど近所のお姉さんっぽく振る舞います。
多彩なアプローチが光る催眠
前半の3パート20分間(「04 舟の上にて」から「06 触れ合い」まで)は
川の音を流しながら船に揺られる感覚や彼女の近さを実感させて癒しと安心感を与えます。
「うとうと ゆらゆら 君の心が すーっと楽になっていくよ」
「こういうのは あんまりよくないよ これきりにするんだよ?」
小町は原作でもサボり癖のあるキャラなので
彼を船に乗せて遊覧に出かけられることをむしろ喜びます。
「ゆらゆら」などの擬声語を多めに入れてセリフにリズムを取りながら
心地よさや眠気を感じる暗示を入れて上手に心をほぐします。
さらにもうここへは来ないよう言い含めて優しさを示します。
被暗示性の高い人なら「04 舟の上にて」だけでもたぶん眠くなるでしょう。
川の音にも癒しのパワーがあって彼女と一緒にいる気分に浸りやすいです。
キャラに合った手段で眠らせる東方入眠抄シリーズの特徴が今作でもきちんと出てます。
「05 生きる」と「06 触れ合い」は催眠色が多少強くなります。
前者は深呼吸、後者はカウントとお馴染みの要素を盛り込み
川の音そのものにも暗示を込めて体の中にある悪いものを洗い流します。
「水の中に お前さんの心が溶けていく 心が じわーっと広がっていく その感覚が 気持ちいい」
ただ流し続けるよりも催眠と絡めていったほうが効果的に癒せますから
本作品らしい理に適ったアプローチと言えます。
同時に彼女に腕枕されてるイメージを挟んだりと
ストレートに眠らせるのではなく、色んな方向から働きかけて少しずつ眠りやすい状況を作ります。
後半の2パート20分間は安眠に向けてさらに前進します。
「07 死神」は両腕、両足、胸を彼女が個別に擦って脱力感を与え
「08 心」は「落ちる」などの深化させる暗示や彼女の寝息を流して彼を寝かしつけます。
「私が腕を撫でると すーっと力が抜けていく」
「落ちる 落ちる 意識が落ちていく 心地よい眠りへと 落ちていく」
ピアノBGMを流したり川の音だけが流れる時間を挟んでるところはやや独特ですが
どちらも状況に合った技法や暗示を使って堅実に癒すことを心がけてました。
このへんまで来ると意識のぼやけや体の脱力を実感できるでしょうから
そのままぼーっとしてれば自然に眠れると思います。
時間に対するセリフの量を少なめにしてるのも目的を見据えてて良いです。
このように音、セリフ、音楽、催眠の技術を組み合わせたバランスの良い催眠が繰り広げられてます。
心地いい作品
小町は不眠のせいで三途の川に迷い込んできた主人公を現世へ送り返そうと
船に乗せて2人きりになれる場所まで移動し、川の音を聞きながら会話したり催眠をかけます。
そしてパートごとに使う技術やアプローチを変えてより多くの人が眠れるようにリードします。
気さくで面倒見のいいお姉さんが催眠で寝かしつけるノーマル向けのシチュ
全編で川の音を流したり一部でピアノBGMを流す音を重視した作り
技術自体はシンプルにして彼女のキャラやシチュに合わせて行使する手堅い催眠。
キャラの個性や世界観をしっかり作ったうえで眠れるように仕上げてます。
中でも川の音は三途の川にいる雰囲気作りと純粋な癒しを提供する重要な役割を果たします。
音に暗示を込めるシーンがありますし、多少は音モノとしての側面も持ってます。
催眠音声なのでもちろん技術が一番大事なのですが
東方入眠抄シリーズの場合はボイスドラマ成分がそれなりにあるので
技術以外の部分をどう上手く使ってるかもポイントだと思います。
レビューを書く必要がなかったらそのまま寝てたくらい安眠効果が高いです。
シリーズの他作品と同じく解除音声が入ってませんから
視聴後に何かしたり出かける用事がある場合は無料作品でいいので必ず解除音声を聴いてください。
おまけは「三年四組、小町せんせー」とBGM2曲です。
CV:伊菜さん
総時間 1:06:34(本編…45:48 おまけ…20:46)
オススメ度
■■■■■■■■■□ 9点
体験版はこちらにあります
追記
作品自体の点数は8点。
66分で440円とコスパが良いので+1してあります。