水の都と癒しの案内人~波音と耳かき~

サークル「和風コロネ」さんの同人音声作品(全年齢向け)。

今回紹介するサークルさんの処女作は、水の都でゴンドラ乗りをしてるお姉さんが
癒しを求めてやって来た人を特別な方法でもてなします。

声や言葉よりも音で癒すASMR系の作りが魅力で
音声の最初から最後まで水に関する音をのんびり流しながら
耳のマッサージや耳かきをじっくり続けて安らぎを与えます。
穏やかな水の音に包まれて
水先案内人がゴンドラの上でマッサージと耳かきをするお話。

「あっ すいません ありがとうございます」
水先案内人は素朴な声のお姉さん。
朝の市場で買ったリンゴを落としてしまい主人公に拾ってもらうと
そのお礼に明日の昼頃この街を案内したいと言います。

本作品は何らかの事情で疲れを感じてる彼を心の芯から癒そうと
彼女がゴンドラに乗せて街中を軽く散策したり耳に的を絞ったサービスをします。
水の都、水先案内人、ゴンドラなどイタリアの都市ヴェネツィアを連想させる素材をいくつも用意し
物語の様子を主に音で表現してその場にいる気分に浸らせます。
「ARIA」という作品をご存知の方なら簡単にイメージできると思います。

冒頭からサービスに入るまでのシーンはそれなりに会話をしますが
それ以降はセリフが一気に減り、効果音と環境音だけが流れる静かなひと時が味わえます。
水の都にちなんで音声開始直後から穏やかな波の音が流れ始め
そこにカモメの鳴き声や水の揺れる音が時折加わります。
これらを聴き続けてるだけでも相当な癒しが得られるでしょう。

効果音についても作品の雰囲気を壊さないよう優しい音で統一されてます。
有料作品は初めてですが過去にニコニコ動画で耳かき音声を公開されており
音のレベルは現時点で大手のサークルさんに次ぐ品質を持ってます。
紙袋を持つ音や筆記音なども入っていて作りが丁寧です。

「私は 観光しているお客様に ゴンドラという小さい船に乗ってもらって この街をご案内するという仕事をしています」
それに対して水先案内人は名前通りガイド役程度の存在に位置づけられてます。
会ったばかりということでそこまで踏み込んだことは言わず
これから何をするか説明したりサービス中に彼を気遣う様子を見せます。
完全に音を主役にしてるので癒しだけでなく安眠のお供にも役立ってくれるでしょう。
音を中心に据えたシンプルなサービス
主人公と水先案内人が出会った次の日、最初にするのはゴンドラでの軽い観光(約8分)。
彼女が所属する会社と思われる場所で合流し、ゴンドラに乗ってのんびり移動します。

といってもこの日は休業日なので本業らしいことはあまりやりません。
ゴンドラに乗る前に書類へ記入する音やゴンドラを漕いでる音を中心に据えてます。
そして乗船後は彼や彼女に関する世間話を続けます。

音の質感が良く心がスッキリするのを感じました。
水や風など自然に根付いた音は誰でも癒しを感じられるので非常に効果的です。

続く「癒しの時間 ~船の上で癒されていきましょ?~」は本作品のメインパート(約55分)。
ゴンドラで安全な場所に移動してからそのまま膝枕で耳のマッサージと耳かきをします。
ちなみにこれらは彼女の業務ではやっておらず完全にプライベートのサービスだそうです。

最初の14分間は専用のオイルを手に馴染ませてから
左右の耳を同時にゆっくり揉みほぐす音を流します。
彼女の手が耳を覆うたびに音がややこもったものへと変化し、さらに軽い圧迫感もあってリアルです。
動きについてもリズムやストロークを適度に変えて単調になるのを防いでます。
リアルな音をストレートに活用したシンプルで心地良いサービスです。

続く耳かきは残りの時間をほぼ半々に分け
左耳→右耳の順に耳かき棒と梵天でお手入れし、最後に弱めの風圧で3回ほど息を吹きかけます。

耳かき棒は「じじっ ぞすぞす」という乾いててやや粗さのある音を小さく掻き出したり優しく擦る
梵天は「ぷすぷす」という面積広くふわふわした音を軸を持ってゆっくり回転させる、といったように
器具ごとに音の質感や動きを大きく変えてどちらもゆったり進めます。

耳かきに関する実況が極端に少ないせいで今何をしてるかややわかりにくいところもありますが
音自体が持つ癒しのパワーとそれをたっぷり鳴らす作りが合わさって聴けば聴くほど眠くなります。
リアリティよりも音で癒すことを重視して作られてるように映りました。

「あの子たちもこれ一番喜ぶんです 最近なんて もう1回やってーって おねだりされちゃって」
最中の水先案内人は耳かきのことや同じ会社に所属する他の子のことを
数分おきの間隔でぽつりぽつりと語ります。
当たり障りのない話題ばかりにして効果音や環境音を聴きやすくしています。

このように、癒しの音を全面に押し出したゆるーいサービスが繰り広げられてます。
音で癒す作品
キャラやセリフよりも音の存在感が大きい作品です。

水先案内人は偶然出会った主人公に楽しい思い出を提供しようと
自分が仕事で使ってるゴンドラに乗せてから耳に絞ったケアをします。
そしてその様子を必要最低限のセリフと大ボリュームの音で涼やかに表現します。

リアルな音をふんだんに取り入れた作り、舞台にちなんだ水に関する環境音
間隔を長く取って話す安眠を意識した演出。
サークルさんが得意とする部分をそのまま用いた癒し特化の物語になってます。

全年齢は無料から転向してくる製作者さんが多いので
この作品も一定以上の品質を持ってるのだろうとは予想してました。
しかし実際はそれを遥かに上回るものに仕上がってて驚きました。
音の使い方が的確で質感も耳に優しいものばかりです。

作中に続編を匂わせるやり取りがあったことを考えれば、今後シリーズ化していくのかもしれません。
世界観がしっかりしてるし新キャラも登場させやすいのでどう発展していくかが楽しみです。

個人的に気になった点は水先案内人のしゃべるペースがやや速いことです。
本作品は癒し系ですからゆっくりのんびり話しかけてくれたほうが雰囲気にマッチします。
今より気持ち遅くするくらいの感覚で演技されたほうがより聴きやすくなるのではないかなと。

音だけをたっぷり聴けるタイプの作品が好きな人には特におすすめします。
番外編は「05.癒しの時間 ~ささやいた方が癒されますか?~」です。

CV:けいのさん
総時間 2:07:59(本編…1:12:22 番外編…55:37)

オススメ度
■■■■■■■■■□ 9点


体験版はこちらにあります

追記
作品自体の点数は8点。
128分で500円とコスパが良いので+1してあります。

2018年11月7日まで30%OFFの350円で販売されてます。