猫と彼女と一週間

サークル「クラリムステラ」さんの同人音声作品(全年齢向け)。
声優として活躍されてる藍月なくるさんの個人サークルです。

今回紹介する作品は、ある日突然家にやってきたミステリアスな女の子が
そこに住む男性と色んなことをしながら幸せなひと時を過ごします。

音声を聴き進めていくうちに彼女の素性やここへ来た理由が明らかになったり
終盤に聴き手が2つのルートから1つを選択するなど
女性から一方的に癒され続けるのではなく
彼女にもそれを分け与えてお互いを幸せにするキャラ重視の物語が楽しめます。
家に迷い込んできたのは女の子
ありすと1週間の同棲生活を送るお話。

「んっ ちょっ…やめてください」
ありすは素朴で可愛い声の女の子。
ある休日の朝、主人公の家で飼ってる猫に悪戯されてくすぐったがると
自分がいるのを不思議がる彼に昨日のことを話します。

本作品はとある事情で彼の家に迷い込んできた彼女が
およそ90分に渡って様々な癒しのサービスをします。
タイトルからもわかるように全編が丁度1週間になっており
髪を乾かす、一緒のベッドで寝る、膝枕で耳かきするなどパートごとに異なる手段でお世話します。

「恋人はいるのでしょうか? …やっぱりいいです」
彼女は一言で言えば謎の多い女性。
なぜここに来たのか、なぜ一緒に暮らしたがるかをあまり語ろうとせず
道端の猫をたくさん拾ってるお人好しな彼にしばらく置いて欲しいと頼みます。
そして交渉成立後は時々彼の女性事情を探ろうとするセリフを投げかけます。

友達以上恋人未満と呼ぶのがピッタリな関係です。
でも彼女には彼にそうする確かな理由があります。
最後まで聴けば明らかになりますから、そこで胸のあたりがじんわりするのを感じるでしょう。

「女の子を貴方の手で幸せにしていく」をサークルコンセプトにされてることもあり
専門店のようにひたすら尽くすのではなく物語を通じて彼女も幸せにする方向で進めます。
終盤の土曜日に2つのパートを用意し、聴き手にどちらの結末を迎えるか選んでもらうのがいい例です。

具体的にどんな内容かは伏せますが、たぶん多くの人が同じ選択をするのではないでしょうか。
そうしたいと感じるほど彼女は魅力的に描かれてます。

サービスについてはセリフよりも音の量を多くした音フェチ系の作りになってます。
特に耳かきは会話を一切挟まずに効果音だけがしばらく鳴るシーンを用意し
2人の間で時間がゆっくり流れていく様子を表現してます。
またバイノーラル録音の長所を活かして耳にこそばゆい刺激を適度に送ってくれます。

話す時とそうでない時のメリハリをつけてるので両方をバランスよく楽しめるでしょう。
全年齢向けで人気のある声優さんなだけあって処女作の時点で高品質な作品を制作されてます。
くっつきそうでくっつかない微妙な距離感
2人の同棲が決まった後、最初にするサービスは髪のお手入れ(約12分)。
ドライヤーが壊れても新しいものを買わず濡れたままにしてる主人公の髪を乾かそうと
ありすがタオルを使って丹念にごしごしします。

「どうですか? 彼シャツです な、じょ 冗談です 何変な反応してるんですか」
「痒いところはありませんか? 気になるところがあれば遠慮せずに言ってくださいね」

ほぼ身一つで居候を始めたため彼のシャツをパジャマ代わりにし
それを見せつけて恋人っぽく振る舞う可愛い姿を見せてくれます。
そしてサービス開始後は左右の側頭部を中心に若干ざらつきのある摩擦音をリズミカルに鳴らします。
耳のやや上あたりに振動が伝わってくるおかげで実際にされてる気分が味わいやすいです。

彼を十分に信頼してるけどあと一歩をなかなか踏み出せないところに初々しさを感じました。
この後も2人の微妙な関係を意識させる描写がいくつも登場します。

本作品で最も大胆なサービスは水曜日の添い寝(約14分)。
床に寝ると言う彼女とそれを許さない彼が一通りの会話を交わしてから
結局一緒のベッドで眠ることになります。

「私が床で寝るなら お兄さんもそうするって 子供みたいなこと言わないでください」
突然やって来たとはいえ女の子に辛い思いをさせたくないのでしょう。
彼女が床に寝ると言い張ったら自分もそうすると言って苦労を分かち合おうとします。
彼が言ったことを彼女がオウム返しするスタイルも彼の存在感を大きくするのに役立ってます。
最終目的の「彼女を幸せにする」を意識した効果的な演出です。

添い寝についてはパートの前半はそうなるまでの会話に割き
後半はセリフが一気に減って彼女の安らかな寝息が流れ続けます。
前項で説明した話す/話さないのメリハリがはっきりしていて後半はとても静かに感じました。

単体で最も長いサービスは木曜日の耳かき(約34分)。
膝枕の状態で右耳→左耳の順に耳かき棒と梵天でお手入れします。
そして左耳の梵天シーンでのみ時折息を吹きかけます。

耳かき棒は「ずずっ くしゅっ」という乾いた硬めの音
梵天は「ぽすぽす しゅるっ」という面積が広く柔らかい音が使われており
前者は弱めの力で奥から手前に掻き出す、後者は耳の中で軽く回転させてから掻き出す感じに動きます。
藍月さんが耳かき音声に多数出演されてるだけあって音質、動きともにレベルが高いです。

「大丈夫でしょうか? 心配しますよ 耳は大切な受容器ですからね」
最中のありすは彼の大事な部分を痛くしないよう会話を挟まず黙々と取り組みます。
特に後半の左耳はパート開始から8分間ほとんどしゃべらない音フェチ成分の強いものです。
耳かきの心地よさで眠った彼に息吹きをする点だけはちょっと首を捻りますが
それ以外は静かで癒される空間が見事に形成されてます。

そうやって十分に親睦を深めた後、「金曜日の真相」でようやく彼女のすべてが明らかになります。
ちょっぴり切ないお話が楽しめますから興味のある方は是非ご自分の耳で確かめてみてください。

このように、2人の距離を縮めつつ音で癒す流れのあるサービスが繰り広げられてます。
心温まる作品
ありすの癒す姿と癒される姿で心が二度潤う作品です。

何らかの事情で主人公の家に潜り込んできた女の子が
彼の家の一員として家事をこなし、彼自身にも様々なサービスを提供します。
そしてその中に彼女も幸せになっていく要素を盛り込んで聴き手を別方向から癒します。

最初の時点で彼女の情報をほぼ全部伏せ、物語を進めることで明らかにしていく展開
セリフと音の分量をほぼ均等にし、それらが活躍する場を別々に設けたバランスの良い作り
癒される側だけでなく癒す側も幸せにするストーリー。
専門店形式よりも登場人物に光を当てた風変わりな音フェチ作品に仕上がってます。

「温かくなって眠くなっちゃいましたか? 猫じゃないんだから」
特に彼女は表面上はごく普通の可愛い女の子なのに
そこからはまったく予想できない一面も隠されていてミステリアスです。
終盤にようやくすべてが明らかになるから最後までダレずに聴けます。

もうひとつの柱にあたるサービスは家庭的なもので揃え、それぞれをコツコツ丁寧に行います。
私個人は髪をタオルやドライヤーで乾かすパートが好きですね。
音を通じて触覚を刺激する演出は録音環境の向上がもたらした新しいアプローチ法です。

キャラやストーリーがしっかりしてる音フェチ作品が好きな人には特におすすめします。

CV:藍月なくるさん
総時間 1:37:36

オススメ度
■■■■■■■■■□ 9点


体験版はこちらにあります