同人音声の部屋

同人音声および催眠音声(トランス/暗示ボイス)について、平均3000文字程度のオリジナルレビューを掲載しているサイトです

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   ● Hipnotic Mermaid -深海の眠り姫-
   ● Hipnotic Sleeping


Hipnotic Mermaid -深海の眠り姫-

サークル「もふもふ倶楽部」さんの催眠音声作品(全年齢向け)。

今回紹介する作品は、人気がすっかりなくなった秋の海を舞台に
不思議な女の子が催眠を使って海中探索へと連れて行きます。

波の音や泡の弾ける音など水に関する環境音を流しながら進めるのが特徴で
それらに耳を傾けながら深呼吸や脱力をして眠りやすい環境を整えます。
安眠できる二人だけの世界に
女の子と一緒に深海に潜りそこで眠るお話。

「ん? 君 どうしてこんなところにいるの?」
女の子は素朴で穏やかな声の女の子。
シーズンオフの浜辺に立ってるところを主人公に呼び止められると
ここにいる理由を話してから一緒に海の空気を吸おうと言います。

本作品は海と非常に強い繋がりを持つ彼女が
浜辺から深海、そしてさらに深い領域へと案内しながら催眠を施します。
総時間が35分程度と催眠音声の中では比較的短く、内容もシンプルで寝る前に聴くのに適した作りです。

最大の特徴はほとんどのシーンで何らかの環境音が流れること。
二人が出会い海に潜るまでは水が優しく揺れる音、それ以降は泡がブクブク弾ける音といったように
自分が今どこにいるかを音だけでわかりやすく伝えます。

こういった自然に根付いた音は人間なら誰でも癒される効果を持ってますから
音声を聴いてるだけでもある程度のリラックスが得られると思います。

一方催眠については深呼吸を何度かさせたり、カウントを数えながら脱力する暗示を軽く入れるなど
古典催眠の技術をベースとしたリラックス特化の誘導がされてます。
催眠に入る、あるいは漂う感覚を味わってもらうことより純粋に寝かせることを意識してる作品です。

「秋とか 冬の海も好きだよ 静かで 波の音だけが聞こえて 目の前にはとっても大きな海が広がってる」
案内役を務める女の子は年齢よりも大人びた雰囲気を持つ儚げな女性。
季節が秋ということではしゃいだりはせず、終始落ち着いた様子でゆっくり物語を進めます。
先ほど説明した環境音も相まって静かな印象を受けるでしょうね。
終盤に差し掛かるとこちらの眠りを妨げないよう囁き声へと変化します。
癒しの音に包まれながら
催眠はほぼ全編にあたる29分間。
女の子と簡単なやり取りをしてからまずは深呼吸で秋の海の香りを体に取り込みます。

「こうしていると だんだん力が抜けて 楽になってくるかもしれないね」
「吸って」「吐いて」と合図を出しながらこの先のシーンでも何度か挟んで気持ちを落ち着けさせます。
息を吐くのに合わせて暗示をほとんど入れてこないのが残念ですが
海に行った時のことをイメージしながら繰り返すと気持ちがスッキリするかもしれません。

お次はいよいよ彼女に先導されて海の中へと入ります。
挿し絵のように泡に包まれて潜るので呼吸や服の濡れる心配はありません。
そして追加の深呼吸をしたりカウントを合計7セット数えてさらなる脱力と深化を促します。

海に潜るのに合わせて深化させるアプローチは催眠音声だと比較的メジャーですし
誰にでもイメージ出る点においても有効と言えます。
ですが本作品の場合は技術的に色々と難があるため、これを聴いて深い催眠に入れる可能性は低いです。

「ゆったり ゆーったり だんだん ゆったりしてくると じわじわ じわじわ 両手の力が 抜けていく」
「ほら 今よりも もっと深いトランスに 入っていける」

その理由の第一は最中の暗示が圧倒的に少ないことです。
深呼吸をするシーンでタイミングよくリラックスや体が脱力する暗示を入れたり
カウントの前後に催眠状態が深まる暗示を入れる、といったことを彼女はほとんどしてきません。
深呼吸は合図を出す中で一言二言セリフを挟む、カウントは最中に軽く話しかける程度です。

作品のコンセプトを考えれば私もそこまでぎちぎちに暗示を入れる必要があるとは思いません。
ですがこの入れ方だと残念ながら暗示の効果が出にくいです。
数を絞るなら的確に入れるべきですし、それにこだわらないならもっと数を増やしたほうがいいかなと。
まだ3作目だからというのもあるのでしょうけど、聴いてて技術的に「あれ?」と思うシーンがいくつかありました。

「さぁ 広い海へ 落ちていこう」
中でも深化の決め手となる6回目のカウントを数えるシーンで
0の直前に彼女がこの一言しか言わないのは大いに疑問です。
それ以前のカウントと数え方や数えるペースに違いが見られませんし
聴き手を本気で落とすのならもっと入念にやったほうがいいのではないでしょうか。

また全体的に環境音の音量が大きい関係で、海に潜って以降のシーンは彼女の声が一部聴き取りにくくなります。
彼女は中盤あたりで「自分の声を無理に聴く必要はない」と言います。
ですがこちらが意識して聴こうとしないと聴き取れない音量バランスはさすがにまずいです。
彼女の声質が元々細いのも影響しています。

囁き声自体は本作品のコンセプトである癒しや安眠とマッチしてるので
環境音をもっと小さくして声が自然に耳へ入ってくるあたりに調節するのがよさそうです。
音に癒される作品
ほぼ全編で流れ続ける環境音に癒しを感じる作品です。

海が大好きで不思議な能力も持ってる女の子が、たまたま出合った主人公を自分の世界に招待します。
海に入り深く潜るイメージを2種類の水音で表現し、物語の世界へと自然に引きこみます。

「また 会えると いいね」
女の子も取り立てて癒し系ではないものの思いやりは十分に持っており
今回の出会いを「楽しかった」と言ってから彼を眠らせます。
環境音の効果が絶大なのでこの音声を聴いて癒しを感じる人は多いはずです。

ですが催眠音声は催眠の技術を使って癒すのが魅力ですから
そのへんが上手くいってるかどうかが非常に重要になります。
これまで書いてきたことからもなんとなくわかるでしょうけど、少なくとも私はあまりよくないと見ています。

特に引っ掛かったのが暗示を入れるタイミングです。
ここを改善すれば今よりもずっとリラックスできるし催眠にも入りやすくなります。
あるいは「泡の弾ける音を聴けば聴くほど心地いい気分が湧いて眠くなる」など
環境音に暗示を込めて誘導していれば随分変わったかもしれません。
今の内容では催眠がもたらす癒しのウェイトは低いかなと。

雰囲気はいいのだけど催眠がうーん・・・な作品です。

CV:三神香弥さん
総時間 35:16

オススメ度
■■□□□□□□□□ 2点


体験版はこちらにあります

追記
作品自体の点数は3点。
35分で800円とやや割高なので-1してあります。

Hipnotic Sleeping

サークル「もふもふ倶楽部」さんの催眠音声作品(全年齢向け)。

今回紹介する同サークルさんの処女作は、穏やかな雰囲気漂うお姉さんが
様々な技術を組み込んだ催眠をかけて安らかな眠りに導きます。

前半は現代、後半は古典と催眠のスタイルを切り替えながら誘導するのが特徴で
良い意味で催眠っぽさを感じないセリフの数々に自然とリラックスを覚え
しばらくすると体に重さを感じたり意識がぼんやりする不思議な感覚が湧いてきます。
お話を聴きながら少しずつ眠りの世界に
お姉さんに安眠できる催眠をかけてもらうお話。

「こんにちは 今日 あなたを気持ちのいい眠りに導いてあげるね」
お姉さんは素朴で温かい声の女性。
音声を聴く際の注意点を簡単に説明すると
自己紹介などの前置きは省略し、主人公を早速催眠状態へと導きます。

本作品は聴き手に普段よりも充実した眠りを提供することを目的に
彼女がほぼ全編にあたる19分間をかけて眠たくなる心と体になるよう誘導します。
(タイトルは「Hypnotic Sleeping」が正しいはずですがサークルさんがわざとこうされたのかもしれません)

安眠をテーマとした催眠音声は無料を中心に数多くの作品がリリースされています。
本作品がそれらと異なる最も大きな要素は誘導のスタイル。
前半は現代催眠の技術をベースとしたお話でリラックスした気分を与え
その後に古典催眠の技術に切り替え脱力感や意識のぼやけを強化します。


実際に聴いてみると途中からセリフの印象がなんとなく変わるのを感じるでしょう。
細かい部分に粗が見られるものの、技術の使い方自体はどのシーンも割と適切と言えます。

催眠はおよそ19分間。
リラックスできる体勢になり、最初は彼女の催眠に関する小話に耳を傾けます。

「トランスって聞くと ちょっと身構えちゃうかもしれないけど あなたも体験したことがあるんだよ?」
内容は日常生活に潜むトランスに類似した感覚のこと。
時間に対する感覚の違いや乗り物の運転など具体的な例を挙げながら
トランスは人間なら誰でも体験していることを教えます。

「考え事があったり 途中で体が苦しくなったら あなたの意識で 何でもしていいんだよ だって あなたの無意識は ちゃんと私の話を聴くことができるからね」
そしてこれらを語る最中、彼女はしきりに楽な気分で話を聴くよう呼びかけます。
音声を座って聴いてもいいし仰向けに寝転んで聴いてもいいよ
体勢が落ち着かないと感じたら好きに動かしてね、などなど
暗示よりも普通の会話に近い表現でセリフを投げかけてくれます。

催眠に対する疑念や不安を解きほぐした後は深呼吸。
およそ3分30秒に渡り彼女の声に合わせてやや速いペースで繰り返します。

「もしかしたら 目が少しとろんとなってくることに 気づけるかもしれないね」
「深く もーっと深く あなたが望む深さまで 入っていくことができる」

ここでも彼女は「~かもしれません」「~することもできます」など語尾をぼかした表現で
瞼の重さや意識のぼやけを感じる言葉を適度に言ってきます。

深呼吸の効果も手伝って私の場合はこのあたりから眠気を感じ始めました。
全体的にお姉さんの話すペースが速いのが残念ですが
聴き手が気楽な感覚でお話を聴き、リラックスできるよう言葉を選んで語りかけています。
心と体を空っぽにして深い眠りへ
音声開始からおよそ8分後、心身の緊張が適度にほぐれたところで
お姉さんは催眠のスタイルを一気に切り替え、眠れる環境を少しずつ確実に整えます。

「右腕の力がすーっと抜ける 重い とても重い 力が抜けていく」
「腰の力が どんどん抜けていく 落ちる どんどん落ちる 深い とっても深い」

内容は他の催眠音声でもよく使われている分割弛緩法。
腕、足、太もも、腰、お腹、首、頭など全身を細かいパーツに分け
それらをひとつひとつ意識しながら彼女の言葉を聴きます。
また後のほうになると「深い」「落ちる」といった催眠状態をさらに強化する言葉も出てきます。

前半に比べると催眠っぽさが強くなっているからか
脱力感はほどんとなく、代わりに体がぽかぽかしてくる感覚がありました。
手のひら、脇腹、足の裏あたりが特に強かったです。
比喩を交えて暗示を入れていたら違ったかもしれません。

また全身の脱力を終えた後にカウントを数えるシーンがあり
そこでは聴き手の心理を逆手に取ったやや珍しい落とし方も登場します。
どんな感じかは聴いてのお楽しみということで。

このように、2つのスタイルを組み合わせた独特な催眠が繰り広げられています。
それなりのリラックス効果が見込める作品
前半パートで行われる現代催眠式のアプローチが魅力の作品です。

お姉さんは聴き手が時間内にできるだけ眠気を感じてくれるようにと
最初は普通の会話をする感じに暗示を入れて意識の力を適度に弱め
その後に王道的な技術を用いた深化や眠くなる暗示でさらに心地よくします。

中でも前半は催眠に親近感を抱いてもらうことを目的とした小話や
許容暗示、ダブルバインド、スプリッティングなどを駆使した
比較的レベルの高い導入が行われています。

処女作でこの手のアプローチを仕掛けてくるケース自体がレアですし
使い方もそこまで間違ってるわけではありません。
聴き手の心を掴み、自然とリラックスさせるのにある程度役立ってると言えます。
今後のご活躍が期待できるサークルさんです。

しかし、個々の暗示が参考書に書いてある例文にかなり近く
お姉さんのセリフとしてみるにはぎこちないかなぁと。
大手のサークルさんだとキャラに最適な暗示表現を選んで入れてくれますし
そういった部分の工夫がもう少し欲しいです。

あとは先ほども書きましたが話すペースをもっと落としたほうがいいです。
安眠するには落ち着いた気分で聴けることが第一ですから
早口だと慌しく感じるし、頑張ってセリフを追う必要性が生まれて頭を空っぽにしにくいです。
今のままだとリラックスはできても眠るのはやや難しいと思います。

短時間ながらも個性を持っている作品です。

CV:三神香弥(みかみかや)さん
総時間 20:51

オススメ度
■■■■■□□□□□ 5点


体験版はこちらにあります

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