耳かき旅館 猫屋敷 ~子子~

サークル「耳かき工房」さんの同人音声作品(全年齢向け)。

今回紹介する作品は、耳のケアを専門に行う旅館を舞台に
落ち着いた佇まいの店員さんがゆっくりじっくりお世話して疲れと汚れを取り除きます。

セリフをあまり挟まず効果音と環境音をたっぷり鳴らすのが特徴で
マッサージ、産毛剃り、耳かきとパートごとのやることをひとつに定め
それぞれに合った音を小まめに変化させて耳に心地いい刺激を送ります。
沢の近くの静かな部屋で
耳かき旅館 猫屋敷の店員「子子(ねね)」が耳のケアをするお話。

「失礼します はじめまして ようこそ 耳かき旅館 猫屋敷へ」
子子は甘くしっとりした声のお姉さん。
ある日の夜、主人公が泊まってる部屋にやって来て丁寧な挨拶をすると
お茶菓子を差し出してから軽く世間話をします。

本作品は近くに沢や滝がある緑豊かな場所で
彼女がおよそ80分に渡り合計5種類の癒しのサービスをします。
序盤に肩や首筋のマッサージを5分程度する以外は全部耳がターゲットという非常に尖った構成です。

定番のものからややマイナーなものまで色々やってくれますから
音声を聴き進めていくにつれて耳が心地よくなったり眠気を感じるでしょう。
サークルさんが「睡眠導入を意識した作り」とおっしゃられてるだけあってどの音も耳に優しいです。

それ以外の特徴として挙げられるのは音の質と量にこだわってること。
音声開始直後から部屋の近くで流れる沢の音が鳴り始め
サービスの最中は子子があまりしゃべらずに効果音をたっぷり鳴らします。
しゃべる時とそうでない時をはっきり分けてありますからそれぞれを集中して聴けるでしょう。

効果音と環境音だけが流れ続けるひと時はとても静かで心が落ち着きます。
有料はまだ2作目ですがyoutubeやニコニコ動画に無料作品をいくつも公開されており
音のレベルは現時点で大手さんに続くものを持ってます。
位置や動きといった演出面が特に優れていて驚きました。

「気持ちいいですか? うふふっ」
子子に関しては店員としての距離を保ちつつ時々親しげに語りかけます。
主人公がかなり疲れてる設定があるため終始落ち着いた態度を取り
セリフごとの間を意識して長めに取ってゆったりした雰囲気を作り上げます。

一部で思わせぶりなやり取りを交わしてましたし今後続編の予定があるのかもしれません。
主役である効果音と環境音を横から支える重要な役割を果たしてます。
変化に富んだ深みのある音の数々
お茶菓子をつまんで一息ついた後、最初にするのはマッサージ(約12分)。
肩や首筋→耳の順に指や手のひらを使って丁寧に揉みほぐします。

そして本作品の売りである音の威力が早速発揮されます。
肩のマッサージは耳の下あたりで緩やかに揉み込むような布の摩擦音が鳴り
首筋に移ると髪混じりのじょりじょりした音へ変化します。
耳のほうも耳たぶを軽く引っ張る、手のひらで覆いながらゆっくり撫でるなど動きが多彩です。

耳のマッサージは音が鳴るのに合わせて微弱な振動も伝わってきます。
手で覆われた時だけ声や音がこもり、軽い圧迫感があるのもリアルで実に良いです。
シンプルなサービスだからこそサークルさんの力量が作品にはっきりと表れてます。

最も個性的なサービスは3番目に登場する耳の産毛剃り(約16分)。
右耳→左耳の順に小型カミソリを使ってお世話してから梵天と息吹きで汚れを取り除きます。
これ以降のパートはすべて右耳→左耳の流れで進めます。

「じょりっ ずすっ」というやや硬さと尖りのある音が小まめに位置を変えながら鳴り続け
刃物を扱ってるので彼女も普段以上にゆっくりペースで黙々と手を動かします。
産毛剃りをする時に他の作品だと電動シェーバーを使うのですが
本作品は和風を大事にしてるから敢えてそれを避けたのかもしれません。
音自体も結構個性的ですし作品の内容にすごく合ってると思います。

そうやって外側を重点的に綺麗にした後、いよいよメインの耳かきに取り掛かります(約50分)。
最初の耳かきパートは座ったまま耳かき棒と梵天を使い分けて隅々まで綺麗にし
仕上げに10回程度息を吹きかけます。
そして次の綿棒パートは膝枕に変えて綺麗になった耳の中を優しくマッサージします。

耳かき棒は「ずしゅっ ぞすぞす」という乾いてて丸みを帯びた音が使われており
大きく掻き出したり小刻みに擦ったりするのを繰り返します。
梵天は最後にちょろっと使うだけですから主役は完全に耳かき棒です。
数秒単位で位置や動きが小まめに切り替わるおかげで耳全体に心地いい刺激を感じることができます。

耳かき棒だけで40分近く続けるとなるとどうしても単調になりがちです。
だからこそ動きに幅を持たせることでそれを解消しつつリアリティも出してます。
最初は外側の溝、次は穴の中と二段構えになっており同じ耳かき棒でもそれぞれで音に違いがあります。

「焼きそば屋台に 焼きとうもろこし お好み焼き 金魚すくいに射的屋さん ヨーヨー釣りに かき氷屋さん 今年は特に人が多くて 迷子になりそうなほどでした」
また耳かきは子子が唯一よくしゃべるパートでもあります。
旅館に来てまだ日が浅いこと、先日行われた夏祭りのこと、昔に体験したちょっぴり怖いこと。
夏から秋に移り変わる季節を意識させる話題を振って別方向から癒します。

数分しゃべって無言になるのを繰り返すためうるさい感じはまったくしません。
これまでの良い部分を維持したまま作品に彩りを与えてます。

綿棒はお掃除目的とは違うことを踏まえてゆっくり丁寧に動かします。
密度が高い繊維特有の引っかかる動きが耳に心地よく
彼女も寝入ろうとしてる彼の邪魔をしないようその様子を優しく見守ります。
この2パートは時間が長いので癒しはもちろん、安眠のお供にも役立つでしょう。

このように、リアルで多彩な音を違和感なく組み合わせた高度なサービスが繰り広げられてます。
素朴な耳かき作品
王道のサービスを広く深く掘り下げた大変癒される作品です。

子子は遠路はるばる旅館へやって来た主人公を心の芯から癒そうと
会話は必要最低限に留めて目的に合った効果音と環境音をたっぷり鳴らします。
そしてサービス自体はそこまで捻らず位置や動きといった別の部分で個性を出します。

最初から最後まで何らかの音が流れ続ける音フェチ系の作り
質量共こだわったリアルな音の数々、会話と音のメリハリをつけた耳かき。
最大の武器である音をストレートに活かした安定感のある作品に仕上げてます。

耳かきは全年齢向けを中心に現在でも多くのサークルさんが新作を出されてます。
それに伴い色んなタイプが生まれましたが本作品はその中でも王道の作風をしています。
耳かき旅館の名の通り耳かきに最も多くの時間を割き
使用する器具も耳かき棒や綿棒といった定番のものが中心です。

王道は安心感がある一方で個性を出しにくいという弱点も持ってます。
そこをサークルさんなりのやり方で克服してるところが最も印象的でした。
例えば耳かきの前に行う産毛剃りは敢えて手動にすることでより長く聴けるようにしています。
部屋の近くに沢を置いたのもプラスに働いてます。

子子に関しては構造上の理由でやはり存在感が薄めに感じました。
耳かき中にもう少し吐息を挟んでみたらまた違ったかもしれません。

価格がたったの300円と安いですから興味を持った方は是非お試しください。

CV:たまこさん
総時間 1:23:35

オススメ度
■■■■■■■■■□ 9点


体験版はこちらにあります