東方入眠抄17 あうんちゃんに守護られて安らかに眠る音声催眠

サークル「Re:Volte」さんの催眠音声作品(全年齢向け)。

今回紹介する作品は、東方シリーズに登場するキャラ「高麗野あうん」が
催眠を交えた独自の方法で寝付きの悪い男性を安眠へ導きます。

催眠を始める前に彼を安心させる言葉をかけて信頼関係を構築したり
神社でお祓いする様子に暗示を込めて心を浄化するなど
彼女の性格や特性を反映させた穏やかで温かみのあるサービスが楽しめます。
安眠に最も効く薬は
高麗野あうんに安眠できる催眠をかけてもらうお話。

「ん? こんな時間にどうしたんだい?」
あうんはあどけない声の女の子。
ある日の夜、自分が守護してる神社を偶然訪れた主人公に声をかけると
素性を説明してから彼の悩みを聞いてあげます。

本作品はストレスや不安で寝付きの悪い人をぐっすり眠らせることを目的に
彼女が40分程度の時間に渡って心身をリラックスさせたり催眠状態を深めます。
シリーズ17作目ということで最大の特徴である「キャラを活かした催眠をかける」部分を継承し
それに多少の新要素を盛り込んで眠りやすい環境づくりに努めます。

「せっかくの眠りだもの 気持ちよく眠りたいよね」
あうんは一言で言えば人懐っこく面倒見のいい女の子。
初めて会ったばかりの主人公が不眠に悩んでるのを知って同情し、すぐさま自分の力を少し貸して心を軽くします。
さらに眠る時間になったら彼の部屋に出向いて安眠できてるかを確認します。

神社に祀られてる狛犬がモチーフになってるだけあって相手を守る気持ちを非常に強く持ってます。
多くのシーンで体を密着させながら語りかけてきますから
聴いてるうちに彼女の優しさや温もりが伝わってくるのを感じるでしょう。
催眠がメインなのは間違いありませんが、聴き手を安心させる要素も多く盛り込んで物語を組み立ててます。

催眠は3パート29分間。
2人が出会った日の深夜、主人公がうまく眠れてるか気になって部屋を訪れたあうんが
右手に添い寝したまま深呼吸や簡単なお祓いをしてまずは心を浄化します。
彼女は目を開けたまま聴いてねと言いますが、私は最初から閉じたほうがいいと思います。

「私の熱が 君にゆっくりと移っていく 私のいる右側から 徐々に君の体が温かくなっていくよ」
そして聴き手がより主人公と同じ視点でこの音声を楽しめるように
序盤から体がほんのり温かくなる暗示を入れて彼女の近さを感じさせます。
この後のシーンでも温感操作を適度にしてきますから、後になるほど変化を実感するでしょう。

「祓い給え 清め給え スーッと心が綺麗になっていく 感情が平坦になって 頭の中が空っぽになる」
お祓いは手を叩き祝詞を唱えつつ心が清らかになる暗示を丁寧に入れます。
彼女の来歴を踏まえて本作品は神社にまつわる行為やイメージを積極的に使用します。
日本人にとって神社は特別な場所ですから、その雰囲気によって癒そうとする意図が見られます。

心をある程度リラックスさせた後は彼女と別の世界に旅立ちます。
浮遊するイメージや溶けるイメージで今度は体を浄化し
無事移動できた後はそこにある神社で夕方から夜にかけてを過ごします。

「右へふわふわ 左へふわふわ 暖かくて 優しくて 気持ちがいい」
「徐々に 徐々に 感覚を失っていきます 足の先から ピリピリと 痺れるように 感覚がなくなっていく」

浮遊するイメージの時に声が左右に小まめに移動するのが面白いですね。
本作品はシリーズ初のバイノーラル録音なので、声の位置や距離を活かした演出も取り入れてます。
直後の体が溶けるイメージも全身を下から上へなぞる形でピリピリした感覚を少しずつ広げます。

催眠に入ると体がピリピリする人は割といるのではないでしょうか。
私の場合は膝から下の部分が特にそう感じました。
正座をしばらく続けた時に近い不思議で心地いい感覚です。

「君の心は満たされて ゆっくりと 眠りの底へと沈んでいく」
神社に移動した後はお願い事をしてから満天の星空の下で眠りにつきます。
カウントをゆっくり数えてその直後に眠気が増す暗示を入れるストレートなアプローチに加えて
落ち着いた音楽を流す、彼女が寝息をたてると催眠以外の要素も盛り込んだ雰囲気の良いシーンです。
さらに最後のほうで彼女が自分の正直な気持ちを漏らすなど、彼女の存在を身近に感じながら静かなひと時を送ります。
そのまま眠って終わる流れですから解除音声はありません。

このように、和風情緒漂う和やかな催眠が繰り広げられてます。
安心する作品
技術で直接眠らせるのではなく安心させて眠気を誘う作品です。

あうんは眠れなくて悩んでる主人公を少しでも楽にするために
最初から人懐っこい態度で彼の力になろうと頑張ります。
そして催眠開始後は自分にまつわるイメージを絡めた誘導で少しずつ心身を落ち着けます。

良い意味で神獣っぽくない彼女のキャラ、狛犬がいる神社のイメージを活用した催眠
彼女との近さや一体感を重視した演出。
彼女の人肌で体を、優しい言葉で心を温めて安らぐ環境を整えます。

「夢を見よう? とても幸せで 満たされた夢を」
特に3番目の要素は音声の最初から至近距離に寄り添い
その後も2人で一緒に移動したり眠りにつく流れで進めます。
安眠できない理由は色々ありますが、彼の場合は寂しさが最も大きな原因と考えたのでしょう。
だから彼女は常に「守護られて」る気分に浸れるように誘導します。

従来の東方入眠抄シリーズよりも純粋な癒しが強くなってる印象を受けました。
バイノーラル録音だから以前より距離が近く感じるのもあります。
今後も録音環境を活かした表現や演出が登場するのではないかと見てます。

唯一気になった点は目を閉じるタイミングです。
作中では最終パートの冒頭(音声開始からおよそ27分後)に閉じる指示が出ますが
催眠開始からそこに至るまでのシーンに目を開けてる状況を活用したアプローチが特にされてません。
これが例えば凝視法を使うのならわかるのですが、実際はほとんどがイメージを用いたものです。

目を開けてると視覚から色んな情報が入ってきてイメージ力が削がれてしまいます。
イメージ重視で進めるなら最初から閉じたほうが催眠に入りやすいのではないかなと。
純粋に目を閉じてたほうがリラックスできるのもあります。

キャラの性格や持ち味を反映させた安眠特化の作品です。
おまけは「【添い寝ボイス】ああ、うん。そう?」とBGM2種です。

CV:鷹澄真咲さん
総時間 59:39(本編…37:46 おまけ…21:53)

オススメ度
■■■■■■■■□□ 8点


体験版はこちらにあります

追記
作品自体の点数は7点。
59分で400円とコスパがいいので+1してあります。