鈴の音を聞きに

サークル「とみみ庵」さんの同人音声作品(全年齢向け)。

今回紹介する作品は、古風な言葉使いをするちょっぴりツンデレな巫女が
神社を再び訪れた主人公に様々な耳かきをしてあげます。

シーンごとに雰囲気・道具・場所が異なる多彩な耳かきが行われており
最中に鳴るリアルな効果音やバックで流れる涼やかな環境音が癒しや眠気を与えてくれます。
真夏を彩る涼やかな物語
神社の巫女テンに3種類の耳かきをしてもらうお話。

「ふー こうも暑いと掃除も身が入らぬ」
テンは可愛くて落ち着いた声のお姉さん。
とある夏の日、久しぶりに神社を訪れた主人公を嬉しそうに迎えると
境内にある建物へ案内し麦茶とスイカを振舞います。

本作品は今年4月に発売された「鈴の緒を引けば」の続編にあたり
久しぶりの日、別の日、また別の日の3日間を2人が過ごす様子が描かれています。
シリーズ作品ですが内容は独立してますので本作から聴き始めても問題ありません。
むしろ今の時期ならこちらから聴いた方が季節がマッチしていて楽しみやすいと思います。

各シーンの流れは参拝に来た彼が拝殿に吊るされてる鈴を鳴らし
来訪に気づいた彼女が現れ、軽い会話の後耳かきをします。
そして事後は彼女に膝枕されながらゆっくりと眠りにつきます。
基本的な流れや時間はほぼ同じになってますから、一気に聴かずに日を分けたほうがいいでしょう。

マッサージやヘッドスパなど様々なタイプの癒し系作品が出ている現在において
耳かき一本で勝負するのは味気なく感じるかもしれません。
しかし実際は日ごとに耳かきの内容や周りの環境がガラリと変化し
その一部始終を高品質かつ多彩な効果音や環境音で極めてリアルに表現しています。

「耳かき」というひとつのサービスをとことん掘り下げ、磨き上げてる作品です。
耳かき音声を数多く作られてるとみみ庵さんだからこそできる要素がいくつも登場します。
他にも麦茶を入れる音やスイカを食べる音など、耳かき以外の部分でも必ず効果音が鳴ります。
最中は都会の喧騒を忘れ、神社に本当にいるような心安らぐ気分が味わえます。

「いつぞやのこと覚えておるか? 年長者の誘いは 断ってはならぬと言うたからの ふふふ」
耳かきをしてくれるテンの存在も忘れてはいけません。
前作で何度か耳かきしている経緯もあって最初から親しげな態度で語りかけ
その度に喜んだり、すねたり、恥ずかしがったりと多彩な表情を見せてくれます。
そして彼女が体を動かす際には「ちりりん」と涼やかな鈴の音が鳴ります。

口調だけを見ると近寄りがたい雰囲気を感じるのですが
実際は自分の気持ちを素直に伝えられない寂しがり屋な女の子です。
ツンデレっぽい部分も持ち合わせていて愛嬌を感じます。
音が良いだけでなくキャラも立ってる作品と言えます。

ビャク「明日たらふく食べようとおっしゃってたではないですか? この方と食べたかったんですよね?」
テン「ビャークー 余計なことは言わんでよい」
ちなみに今作では彼女の弟子にあたるビャクという女の子も登場します。
各シーンの冒頭や終わりにほんの少し顔を出す程度なのですが
テンが密かに思ってることを代弁して彼女を困らせる和やかなやり取りが交わされます。
一人ぼっちだった前作に比べると賑やかな印象を受けます。
キャラと音の両方で癒すリアルな耳かき
ここからは各シーンの特徴や魅力を紹介します。

一番最初の「久しぶりの日」は二人が久々の再開を喜ぶところから始まり
境内にある建物に移動してから麦茶とスイカを味わい耳かきへと移ります。

夏らしいセミの声がやや遠くから聞こえてたかと思えば
二人が建物に近づくにつれて小川の音が流れ始め、その音量が徐々に大きくなるなど
物語の序盤から持ち味の音を使って作品の世界に引き込んでくれます。
特に小川の音は耳かき中も流れるのでこれだけでも相当な癒しが得られます。

メインとなる耳かきはおよそ30分間。
膝枕の状態でまずは手ぬぐいを使って顔の汗を拭き取り
それから右耳→左耳の順に2種類の耳かき棒と尻尾で綺麗にし、最後に弱めの風圧で息を吹きかけます。

耳かき棒は「そりそり ずずっ」と若干硬くて尖った音が使われており
ゆっくりペースで耳の壁を大きくなぞったり小さく掻き出すように動きます。
サークルさんの過去作と同じく音質・動き・力加減すべてに気を遣っていてとてもリアルです。

「次は耳の奥なんじゃが この匙のところが ハケのようになっている耳かきを使おうと思っていてな」
この日の耳かきで最も特徴的なのが2番目に登場する耳かき棒。
普通のものとは違って先端がブラシ状になっており、耳の奥にある汚れを上手に絡め取ります。
「ぱちぱち ぷちっ」という通常の耳かきよりも細く軽い音も耳に心地いい刺激をもたらします。
本作品の耳かきは音のバリエーションが非常に多彩で聴いていて本当に面白いです。

その直後に登場する尻尾での仕上げも本作品ならでは。
「しゅるっ すりすり」と梵天よりもサイズが大きく滑らかで柔らかな音が耳を包み込みます。
ふわふわとしたきめ細かな感触を音だけでここまで表現している作品はなかなかありません。
耳の中でリズミカルに回転させたり軽く払う動きもリアルです。

「わしも ぬしにする耳かきを 恋しく思うておった」
最中のテンは手を動かしてる間は微かな息遣いを漏らすことが多く
合間合間に入る休憩の際に今の気持ちを素直に語ります。
冒頭のパートよりも穏やかな口調や飾らないセリフに別の癒しを感じるでしょうね。
音重視なんだけど彼女の魅力もきちんと引き立ってるところが見事です。

二番目の「別の日」は雨の日のお話。
大粒の雨がそれなりに激しく降る中、同じ建物でテンが別タイプの耳かきをプレゼントします。

「この道具はな 直接耳を掃除するものではなく 緊張をほぐし 癒しを得るものなのじゃ」
このシーンで最も特徴的な音は最初に出てくる不思議な鐘。
左右の耳に挿入し、鐘を叩く音で耳垢を浮かせたり癒しを与えます。
「ぶぉぉぉん」という軽い振動音が左右交互に鳴り響く感覚はなんとも独特で
耳かき音声を数多く聴いてきた人でも新鮮な感覚で楽しめます。

他のもので例えるならごくごく微弱なモーター音といったところでしょうか。
こういう器具を使う作品は私も初めて聴きました。

耳かきについては膝枕の状態で先ほどの器具を使用し
綿棒・梵天・息吹きを順に使い分けて汚れを隅々まで落とします。
同じ耳かきでも使用する器具が初日とまったく違うわけです。
当然のようにどの器具も非の打ち所が無いほどクオリティが高く
バックで流れ続ける小川の音や雨音も相まって聴けば聴くほど眠くなってきます。

最後に登場する「また別の日」はさらに後のお話。
主人公を普段の建物ではなく離れへ案内したテンが基本に立ち返った耳かきをします。

「今はガラスの風鈴が主流じゃったな 鉄器の風鈴もいい音色じゃろ?」
ここでは今までずっと聞こえていた小川の音に代わって鉄の風鈴が鳴り響き
ガラスよりも反響が弱い澄んだ音に夏の風情を感じます。
獣や虫があまり寄りつかない建物ということで環境音がほとんど聞こえず
以前の2つのシーンに比べて静かで落ち着いた雰囲気が漂っています。

耳かきについては方針を大きく転換し耳かき棒と梵天だけでお手入れします。
しかし耳垢をはがして取り出すシーンになると効果音がジャリジャリしたり
奥をお掃除する際に変わったサービスをするなど、シンプルな中に工夫を込めたご奉仕が楽しめます。
テンのちょっぴりしんみりした会話も心を潤します。

このように、高品質な音を駆使した幅広く奥深い耳かきが繰り広げられています。
風情を感じる作品
純粋な癒しだけでなく涼しさも感じさせてくれる作品です。

夏の暑い日に緑豊かな神社に訪れた主人公が可愛らしい巫女と再会し
他愛もない会話や耳かきをしてゆっくり、のんびり過ごします。
音声の開幕から丁度いい音量で流れ続ける環境音がとても心地よく
現実世界のノイズを遮断し作品の世界にすんなり引き込んでくれます。

音声作品はこのところ声や音の品質が格段にレベルアップしてますが
それでも本作品のように環境音を常に流し、シーンや場所に応じて使い分ける作品は少ないです。
今回は小川が近くにある建物、雨の日、静かな建物と大きな違いを設け
聴き手が自然と「その場にいる」気分が味わえる演出がなされています。
特に水の音のボリュームと質感が良いのでスッキリした気分が得られます。

環境音と対を成す効果音についても砂利道を歩く音、雨粒が傘にぶつかる音
体を動かしたときに微かに鳴る布の摩擦音など、本当に細かいところまできちんと用意されてます。
耳かき自体の音ももちろん大事ですが、こういった脇役が作品の没入感をより強めるのに役立ちます。
全体の作りがシンプルだからこそ、細部にとことんこだわり品質を押し上げています。

「会いにきてくれて ありがとう」
テンについては本レビューではあまり説明できませんでしたが
前作に比べると丸くなったと言いますか、素直に気持ちを伝えることが増えたように感じます。
自分にひたすら甘えてくる主人公に感化されたのかもしれません。
一緒に住み始めたビャクの存在も含めて今後どうなるかが楽しみです。

しっかりした世界観に基づく極上の耳かきが楽しめる作品です。
総時間195分でたったの300円とコスパも抜群。
以上を踏まえて本作品をサークルさんでは9本目の満点とさせていただきました。

おまけはビャクの耳かきです。

CV:テン…藤堂れんげさん ビャク…小日向さくらさん
総時間 3:15:52(本編…2:47:34 おまけ…28:18)

オススメ度
■■■■■■■■■■ 10点


体験版はこちらにあります