鈴の緒を引けば

サークル「とみみ庵」さんの同人音声作品(全年齢向け)。

今回紹介する作品は、古風な言葉使いをする寂しがり屋の巫女が
神社に偶然訪れた主人公を心のこもった耳かきでもてなします。

物語を3つに分けそれぞれで異なるスタイルの耳かきをしているのが特徴で
耳かき棒、梵天、綿棒などが生み出す効果音と
境内に流れる涼やかな川の音や雨音が大きな癒しを与えてくれます。
川の流れる静かな神社で
狐巫女のテンに耳かきしてもらうお話。

「鈴の緒を鳴らす音がするから来てみれば 本当に人がおったわ」
テンは可愛くて落ち着いた声のお姉さん。
散歩中に見つけたとある神社で拝んでいる主人公に声をかけると
退屈しのぎに一緒にお茶でも飲もうと誘います。

本作品は二人が初めて出会った日、しばらくした別の日、そのまた後日の3部構成。
どのシーンも冒頭に縁側で寛ぎながら軽い会話をし
それから日に応じて器具を変えながら彼女が耳かきします。

1日あたりの時間が40分前後と手ごろな長さになってますから
無理に通しで聴こうとせず日を分けて楽しむのがいいでしょう。
1日分だけでも十分過ぎるほどの癒しのパワーを持っています。

とみみ庵さんと言えばニコニコ動画で耳かき音声をいくつも出されているほど
耳かきに並々ならぬ情熱を燃やしているサークルさんです。
今作でも耳かきに合計70分近くもの時間を用意し
その中で専門店よりは家庭に近い多彩で温かなサービスを行っています。
耳かき好きなら間違いなく満足できる作品です。

「うむ 快晴快晴 縁側で茶を飲むにはうってつけじゃな」
耳かきをしてくれるテンのキャラも大きなポイント。
「~じゃ」など特徴的な話し方をするのに加えて
ひと気のない神社を訪れてくれた彼のために一生懸命尽くします。

最初からフレンドリーに接してくれるおかげで尊大さは特に感じられず
和やかで落ち着いた雰囲気が終始漂っています。
またこの神社は境内に川が流れているらしく、縁側に移動すると涼やかな水の音が流れ始めます。

リアルな効果音と環境音、テンの和風で可愛いキャラ。
そういった諸々の要素を上手に組み合わせて物語の世界をリアルに表現しています。
没入感が得やすい点も癒しにプラスに働いていると言えます。
徐々に変化していく環境とテンの態度
一番最初の「出会いの日」はおよそ37分間。
神社に初めて訪れた主人公がテンと出会い少し会話をした後で
元々団小屋だった建物の縁側に移動し、お茶を飲んだり耳かきをしてもらいます。

本作品はシーンごとに環境音が切り替わる凝った演出がされており
二人が縁側に移動する際にも川の音が徐々に近づき大きくなります。
また雨が降る日には最中に雨足が微妙に変化したりもします。

この日の耳かきの時間はおよそ21分30秒間。
膝枕の状態で右耳→左耳の順に耳かき棒を使って大きな汚れを取り
仕上げに梵天や息吹きをするシンプルなものです。

耳かき棒は「ぞり ずずっ」と細く硬さのある音
梵天は「すすっ しゅっ」と柔らかく広がりのある音が使われており
前者は耳の壁をなぞるようにゆっくりと、後者は軸を持って小刻みに回転させたり掻き出す動きをします。

数々の耳かき音声を作られてるサークルさんなだけあって
音の質、動かし方いずれも文句のつけようがないほどに優れています。
特に耳かき棒は手前と奥で別の音と動きが楽しめます。
梵天も実際に耳に入れられてるようなこそばゆい感触がして面白いです。

「ゆーっくり 入れるからのう」
最中のテンは久しぶりの耳かきで緊張しているのか
あまり多くをしゃべらずに彼の耳を傷つけないよう全体的にゆっくり動かします。
おぼつかないというよりは丁寧にやってる感じです。

そしてセリフがあまりないからこそ効果音や環境音に集中しやすく
聴いてると自然と心が落ち着いたり眠くなるほどの安らぎを感じます。
二人がまだ会ったばかりということでキャラよりは音の方に魅力を感じるシーンです。

2番目の「別の日」は41分30秒ほど。
再び神社を訪れ鈴の緒を引くとテンが現れ
初日よりもずっと人懐っこい態度であれこれお世話します。

「わ、わしの話し相手になってゆかんか? 嫌なら無理にとは言わぬが…」
彼女は立場上なかなか素直になれないところがあり
彼の気持ちを考えながら語りかけるシーンをよく見かけます。
かといって自分の気持ちを完全に隠しきれてるわけでもなく、その不器用な姿には愛らしさを感じます。
ツンデレというよりは恥ずかしがり屋な印象ですね。

縁側に移動した後で始まる耳かきについても
前回とは違い主に綿棒を使って耳を綺麗にします。
一日ごとに別の器具やサービスが登場するのも本作品が持つ特徴のひとつです。

綿棒は「すすっ ずりずり」と耳かき棒より面積が広く柔らかな音が使われており
耳の穴の縁や中の壁を円を描くようにゆっくり動かします。

実際に聴いてみると耳かき棒とまったく違う動きをしているのに気づくでしょう。
音に若干の引っ掛かりがあるのも特徴的です。
器具ごとに最適な音や動かし方をしているあたりにサークルさんのこだわりがよく出ています。

「やむをえんのう そのまま目を瞑っておるのだぞ?」
またこの日は彼女が変わった方法で耳の細かい汚れを落とすシーンが登場します。
今までのどの器具とも違う滑らかな音が鳴りこちらもリアリティがあります。
彼女が彼に対して心を開き始めているのが行為によっても表現されています。

最後の「また別の日」は43分間。
神社で二人が会話を始めた直後に雨が降り出し
雨宿りも兼ねてテンが再度の耳かきをしてあげます。

「耳のな 穴ではなく外じゃ 手ぬぐいで少し拭いておこうと思ってな」
耳かき自体は耳かき棒と梵天を使う1日目とほぼ同じスタイルなのですが
開始前に彼女が手ぬぐいで耳を綺麗にするサービスが追加されています。
神社なので手の込んだことはできないけど感謝の気持ちは伝えたい。
そんな彼女の彼に対する感情が滲み出ているシーンと言えます。

またバックで流れる雨音も1日目とは違った雰囲気を生み出しています。
場所が同じだから当然川の流れる音もするわけで
2種類の水音が自然な癒しを与えてくれます。

このように、日によって異なるサービスや要素を交えたきめ細かい耳かきが繰り広げられています。
ストーリー性のある耳かき作品
耳かきの要である効果音、バックで流れる鳥の声や川の音、テンの優しくて愛らしいキャラなど
ほっとしたり癒される要素を数多く持ってる良作です。

テンは久しぶりに神社にやって来た主人公を気に入ったのか
最初から対等の立場で彼に語りかけ、自分にできる限りのサービスを提供します。
やってることは世間話、耳かき、膝枕による添い寝とシンプルなものばかりなのですが
ちょっとしたセリフや動作に彼女の「彼と一緒にいたい、癒したい」気持ちが表れていて
後になるほど心がぽかぽかしてきます。

そして二人がどんな場所にいるのか、彼女がどのようにお世話しているのかを
様々な効果音を組み合わせてリアルに表現しています。

今回はほとんどのシーンで川の音が流れますからそれだけでも相当な癒しを感じます。
耳かきについても現実さながらの音や動きがされていて隙がありません。
個々の素材に高いクオリティを持たせ、それを損なわないように融合しています。
テンが体を動かすたびに耳にかけてある鈴が鳴るのも実に良いです。

「また会いに来るといい わしはここで待っておるからな」
ストーリーについても二人が親密になっていく様子を和やかに描いています。
サークルさんの別シリーズ「休日屋」のように込み入った展開にもなりませんし
純粋に癒しだけを提供する作りです。

質の高い耳かきと女性の優しさが心に潤いを与えてくれる作品です。
合計2時間でたったの300円とコスパも申し分ありません。
以上を踏まえて本作品をサークルさんでは8本目の満点とさせていただきました。

CV:藤堂れんげさん
総時間 2:02:26(出会いの日…37:38 別の日…41:28 また別の日…43:20)

オススメ度
■■■■■■■■■■ 10点


体験版はこちらにあります