休日屋 ━真家━

サークル「とみみ庵」さんの同人音声作品(全年齢向け)。

今回紹介する作品は、人里離れた場所にある癒し系専門店で
素朴な店員さんとのんびりまったり休日を過ごします。

一緒にご飯を食べる、散歩するといった家庭らしさを重視したサービス
シリーズ3作目に相応しい登場人物の心情もわかりやすく描いたセリフなど
従来の専門店系作品とは違った切り口で癒しを与えてくれます。
休日屋で過ごす最後の一日
休日屋の店員「安土日向(あづちひなた)」と一日を過ごすお話。

「お久しぶりです 安土日向です 首をながーくしてお待ちしてました」
日向は明るくて可愛い声の女の子。
再び休日屋にやって来たお客を最寄りの駅まで迎えに行くと
世間話をしながらお店まで徒歩で一緒に向かいます。

本作品は昨年4月に発売された「休日屋」、同8月の「休日屋 ━丹の家━」に引き続き
彼女がほぼ一日中つきっきりで多種多様なサービスを提供します。

耳かきやマッサージといった専門店ではお馴染みのサービスに加えて
お店の中を探検する、風呂上りにアイスを食べるといったあまり見かけないシーンも登場したりと
店名通り彼女と休日を過ごす様子をありのままに描いているのが特徴です。
家庭らしさを感じる要素がとても多いので聴いてると自然にほっこりします。

とみみ庵さんと言えば効果音のクオリティが極めて高いことで有名なサークルさんです。
本作品もその例に漏れず、日向やお客のありとあらゆる動作に専用の効果音を用意し
それらを組み合わせることで休日屋の雰囲気をリアルに表現しています。
同じ足音でも外と中では当然違いますし、登場人物の心情を音だけで演出する面白いシーンもあります。

「手…繋いで えへへ ぎゅっ」
お相手を務める日向のキャラも大きなポイント。
3回目ということで最初からお客ともすっかり打ち解けており
店員よりも友達や恋人に近いスタンスで終始親しげに接します。
最中に2人が何度も手を繋いでいることからも仲の良さが伝わってきます。

「都会の喧騒を忘れて「私の最後のお休み」を一緒に過ごしていただけませんか?」
しかし彼女はサービスの最中しきりに今回が最後のおもてなしであることを告げます。
彼を嫌いになったようにはとても見えないだけに
彼女がどういった事情でこの決断をしたのか、そして最終的に2人はどうなるのか
物語が進むにつれて事の真相が少しずつ明らかになります。

終盤にはほろりと泣けるシーンもありますし
癒しだけでなく心の汗を洗い流すのにも役立ってくれます。
キャラ、ストーリー、サービスと様々な部分が優れている総合力の高い作品です。
効果音を中心に据えたリアルなサービス
ここからは各サービスについて説明していきます。
総時間が2時間30分と長くサービスの種類も豊富なため
個人的に気になったパートをいくつかピックアップする形で紹介します。

お店に着いて軽い挨拶を済ませた後、最初に登場するのはマッサージ。
肩や背中を手で揉みほぐす至って普通のサービスなのですが
最初はお客が日向に、その後でお返しに彼女が彼にしてあげます。
専門店でお客が店員にサービスをするというのは初めて聴きました。

「覚えててくださったんですね 私にマッサージしてくれるって」
そしてこれは1作目で彼が言った約束を果たす結果に繋がります。
彼女も多少戸惑いつつ受け入れ、最中は気持ちよさそうな表情を見せます。
音声作品ではお馴染みのサービスを別の形で行い2人の親密な様子を描いています。
お金をいただかないお店だからこそできる面白いシーンです。

マッサージに必要不可欠な効果音もハイレベル。
「すりゅっ すすー」と滑らかな摩擦音が鳴り
擦ったり、揉んだり、叩いたりと動きが小まめに変化します。
しかも日向にする時はやや遠くで、お客にする時はかなりの至近距離で音が鳴ります。
マッサージをする感覚とされる感覚の両方を味わわせてくれるのが実に見事です。

ストーリーが大きく進展するのが6番目の「いつもの道をお散歩」パート。
昼食で膨れたお腹をへこませようと近くを散歩する最中
彼女が自分のことや今回を最後に決めたいきさつを思いつめた様子で語ります。
詳しい内容は伏せますが、物語の中盤でこれを語ることにより
その後のサービスの雰囲気や2人の心情がやや変化しているのがわかります。

このパートのもうひとつの魅力は環境音。
2人が歩くにつれて小川の流れる音が徐々に大きくなり、その後遠ざかっていきます。
移動する様子を音だけでここまでリアルに表現している作品はまだまだ少なく
サークルさんの音へのこだわりが強く表れています。
盛り上がるシーンだからこそ、バックの演出にもこだわっているのがわかります。

特徴的な音が楽しめるのはその次の「すっかり冷えちゃいましたね」パート。
冷えた体を温めようとお風呂に入り、日向が背中を流したりシャンプーをかけてくれます。
全年齢向け作品なのでエッチな描写はありません。

「気づきました? そうなんですよ シャワーがついたんですよ」
今までは桶でお湯を掬って流していたのが今回からシャワーへと変化し
わしゃわしゃという小気味良いボディソープやシャンプーの音と一緒に耳を楽しませてくれます。
音の位置や動かし方も実際のサービスさながらでとてもリアルです。

そして最後を飾るのはサークルさんが最も得意とされている耳かき(約25分間)。
膝枕の状態でまずは両耳を温かいタオルで拭き
右耳→左耳の順に綿棒で汚れを取り、仕上げに梵天と軽い息吹きをする家庭的なものです。

綿棒は「しゅりっ ずずっ」と若干ざらつきのある柔らかな音
梵天は「すりゅっ じりじり」と面積が広くふわふわした音が使われており
前者は耳の壁をなぞるようにゆっくり優しく
後者は軸を回転させたり優しく掻き出す動きをします。

耳かき棒に比べて幅広い音なので刺激が耳全体に届きやすく
最初は手前、次に奥と掃除する位置の変化に応じて音の質も微妙に変わります。
どちらも力加減が弱めに設定されており長時間聴いても耳が痛くなりません。
梵天も柔らかさが音によく出ていてこそばゆく感じます。
いつも通り安心して聴けるハイレベルな耳かきです。

「ずっと こうしていれたら いいのにな…」
最中の日向は微かな吐息を漏らしながら真剣にやるシーンが多くあまりしゃべりません。
ですが最後の一日が間もなく終わることを名残惜しく思うセリフを時々呟きます。
このほんのり感じられるもの悲しさがシーン全体に静かな雰囲気を与えています。

このように、様々な音と2人の心情を織り交ぜたサービスが繰り広げられています。
何気ない日常を切り取った作品
温かい女性が温かいサービスを提供してくれる癒しに満ちた作品です。

日向は大好きな人と過ごす最後の日に悔いを残さないように
最初から自分ができる限りの技術と思いやりをもってお客をもてなします。
途中で立場が逆転するシーンもありますが、基本的には彼女が終始尽くしてくれます。
その飾らない姿や一生懸命な様子が自然と心を温めてくれます。

そして最中に時折見せるちょっぴり寂しそうな顔が彼女の魅力を引き出しています。
普段が明るいキャラだからこそ余計に儚く感じるでしょうね。
彼女の複雑な心境がセリフや動作から伝わってきます。

…といった感じのお話なのですが、最終的にはハッピーエンドを迎えます。
ですから聴き終えた段階で気落ちする人はまずいないはずです。
ただこの終わり方だと休日屋シリーズは今作がひとつの区切りになるのだと思います。
今後引き続き彼女が活躍するのか、はたまた姉の日登魅の出番が増えるのかが気になるところです。

サービスは専門店の要素を押さえつつ家庭的なものも取り入れています。
レビューでは紹介できなかった昼食を作るシーンなどは
その一部始終を音だけで表現する凝った作りをしています。
耳かきも休日屋の特性を踏まえてわざと家庭っぽさを出しながら行っています。

ストーリーは終盤が割と泣けるシーンですね。
今まで我慢してきた日向の想いが一気に爆発します。
その後の展開も面白いですし最後まで楽しく聴けるでしょう。

田舎の家庭にいる雰囲気を大事にした質の高い癒し系作品です。
このクオリティとボリュームで200円とコスパも驚異的。
以上を踏まえてシリーズ3作すべてを満点とさせていただきました。

おまけは後日のお話です。

CV:安土日向…浅見ゆいさん 安土日登魅…藤堂れんげさん(終盤とおまけにのみ登場)
総時間 本編…2:24:18 おまけ…6:00

オススメ度
■■■■■■■■■■ 10点


体験版はこちらにあります