ほんわか魔女の癒しお届け便

サークル「ステレオポッシ」さんの同人音声作品(全年齢向け)。

今回紹介する同サークルさんの処女作は、明るくほのぼのとした雰囲気の魔女が
癒しのサービスや何気ない会話でひと時の安らぎを提供します。

良い意味で魔女らしくない彼女のキャラ、最中に鳴るリアルな効果音など
すべてがありのままの癒しの要素で統一されており
聴いているだけで自然とリラックスできる温かい空気に包まれています。
魔女が届ける癒しのプレゼント
魔女のルゥから癒しのサービスを受けるお話。

「あのー 癒しお届け便です 失礼します」
ルゥは明るくてほんわかした声の女の子。
主人公の依頼を受けて癒しを届けに彼の家へやって来ると
最初のサービスとしてハーブティーを淹れてあげます。

本作品は彼にひと時の癒しを提供するために
彼女が紅茶を淹れたりマッサージや耳かきをしてくれます。
魔女というとちょっぴり怪しいイメージを抱く人もいるでしょうが
魔術的な要素はほとんどなく、人間の女性と一緒に過ごす場合にとても近いです。

「簡単かとは思いますが あなたさまがリラックスでき 少しでも お疲れを労えましたら幸いです」
それどころか彼女は専門店の店員さん以上に親身になってサービスをしてくれます。
言葉使いは上のセリフのように丁寧なのですが
声や態度がとても柔らかく、その飾らない姿には大いに親しみを感じます。
「ちょっと変わったことのできる女の子」といった印象です。

サービスについても誰でもできる何気ないもので統一し
それらの多くをクリアでリアルな効果音を使って巧みに表現しています。


作品説明文には書いてありませんが、おそらく声と効果音の両方ともバイノーラル録音と思われます。
おかげで彼女が実際にサービスしてくれている気分がとても味わいやすいです。
特に紅茶を淹れるシーンは絶品と呼ぶに相応しい臨場感のあるサービスを聴かせてくれます。

一番最初に登場する紅茶を淹れて飲むシーンは15分ほど。
彼女が持っている大きなカバンの中に入ったティーセットを使い
カモミールティーを淹れて2人が飲むまでの一部始終を様々な効果音を交えてお届けします。

テーブルクロスを敷いてカップを置く音、特製のケトルとポットスタンドでお湯を沸かす音
カモミールの入ったティーポットにお湯を注ぐ音、カップに注いだ紅茶を彼女が飲む音など
セリフなしでもわかるくらいにありとあらゆる部分を音だけで表現しています。
「新規のサークルさんだから大したことはやってこないだろう」と思っていただけに正直びっくりしました。

さらに素晴らしいのがこれらを会話を交えながらスムーズに行っていることです。
音声作品は効果音を個別に録って、それらをセリフと組み合わせているはずなのですが
本作品の場合は先ほど挙げたすべての工程を慣れた手つきで切れ目なく行っています。
実際に紅茶を淹れている様子をそのまま音だけ切り抜いた感じですから当然リアルです。

「目の前で茶葉が踊るのを見ていると 水中庭園みたいで 少しだけ非日常感があって それだけを見てる なんだか 贅沢な時間」
「ふぅー やっぱりお茶はいいですねー ほっこりします」

最中に見せるルゥの屈託のない様子も心を潤します。
ティーポットにお湯を入れた後、そこに入ったカモミールの花が開く様子を楽しげに眺めたり
できたお茶を一緒に飲んで美味しそうな表情を見せたりと
癒しを提供する立場でありながら、彼女自身もこのひと時を楽しんでいる表情を見せます。

こういった様々な「何気なさ」が本作品が持つ癒しの源だと私は考えています。
温まった心と体で安らかな眠りへ
次に登場するマッサージはおよそ7分間。
座っている主人公の後ろにルゥがまわり、肩・首・頭の順に揉んだり擦ったりします。

ここでも擦るときは「しゅりー さすっ」とかなり滑らかな音
叩くときはトントンと拳が優しくぶつかる音
頭部マッサージでは「じり じょり」と髪越しにを指で擦っているような音、といったように
体の部位に合わせて音の質感や動き方を上手に切り替えてその様子を描いています。
特に頭部は音が一気に近づきますから、その特徴的な音が耳に心地よい刺激を与えてくれます。

もう一つの大きなポイントはバックで鳴る水滴の音。
マッサージをする前に彼女がラベンダーのアロマを焚くシーンがあり
ここから音声終了時まで水の滴る音がやや間を置きながら流れ続けます。

じっくり聞くと音の間隔が不規則なことから実際に焚いて流しているのでしょう。
音量も控えめで彼女の声やサービスの音を邪魔せずに良い雰囲気を出しています。

最後に行う耳かきは約8分。
膝枕の体勢でまずは指で両耳を同時にマッサージし
それから右耳→左耳の順に耳かき棒と綿棒で汚れを取り、最後に息を吹きかける家庭的なものです。

マッサージは「こしゅっ しゅりっ」と滑らかな音
耳かき棒は「ずり じょりっ」と若干ざらつきのある軽い音
綿棒は耳かき棒よりも音の位置がかなり近くざらつきのある音が使われており
マッサージと同じく音質、動かし方いずれもリアルと言えます。

「耳も「凝る」って言うんでしょうか? 痛いとき ありませんか? ふふっ 効くといいですね」
中でも耳をマッサージしている最中、彼女が話しかけてくるシーンで
セリフが若干篭るところが非常に印象的でした。
彼女の手が耳を覆っている状況ですから当然声は聞こえにくくなります。

こういった細かな部分もしっかり表現しているのは大手のサークルさんくらいです。
それを処女作でやってのけているのが素晴らしいですね。

しかし耳のマッサージと耳かきを合わせて時間が8分しかない影響で
ここだけはやや慌しくなっているのが残念です。
最低でも倍、できれば20分くらいの十分な時間を取ってじっくりやって欲しかったです。

このように、リアルな音を活用した臨場感のあるサービスが繰り広げられています。
何気ないひと時を切り抜いた作品
ルゥと同じ時間を過ごしている気分が味わえる良作です。

彼女は癒しを求める主人公のために、魔女らしいことは敢えてあまりせず
それぞれのサービスを心を込めてゆっくりと行います。

サービスの内容だけを見ると至ってシンプルです。
しかし、彼女の口調や態度から伝わる人としての温かさやリアルな効果音の数々が
実際にその場にいるような気分にさせてくれます。
そして彼女が紡ぐ何気ない言葉の数々が心をホッとさせてくれます。
作品を構成する諸々の要素が生み出すまったり感がとても心地いいです。

個人的に最も印象的だったのがこだわりのある演技の数々です。
ルゥのキャラやセリフ、最中に鳴る効果音を違和感無く組み合わせている点に加えて
一つ一つの動作に対しルゥ役の円木さんが実際にそう動きながら演技しているように見て取れます。

「和んでほっこりするような 癒しの時間をお届けに参りました どうぞ よろしくお願いいたします」
例えば冒頭で彼女が挨拶をするシーン。
上のセリフを言うとき「よろしくお願いいたします」の部分だけ声が若干篭ります。
それは円木さんがお辞儀をしながら言っているからと思われます。
他にも紅茶を淹れる準備のために取り出したカバンの説明をする際に
それをポンポンと叩いたり擦っているような微かな効果音が鳴ったりもします。

要は声だけでなく身振り手振りも交えながら演技しているっぽいのです。
これが本作品を妙にリアルに感じる要因なのではないかなと。
耳かきを実際に手を動かしながら演技されている作品とかはあるのですが
こういう何気ないセリフや動作にまでそうしている作品はあまり見ないです。
この作品に対するサークルさんの熱意が強く感じられました。

唯一残念なところを挙げるとするならやはり耳かきの短さですね。
サークルさんも自覚されているようですし、次回以降もっとボリュームのあるサービスにしてくれると思います。
この点を除けばパーフェクトと言えるくらいに高いクオリティを持っています。

ありのままを音声にしたような心安らぐ作品です。
約50分で300円とコスパもバッチリ。
以上を踏まえて本作品を条件付きの満点とさせていただきました。

CV:円木 左右子(つぶらぎ さうこ)さん
総時間 47:33

オススメ度
■■■■■■■■■■ 10点


体験版はこちらにあります

追記
作品自体の点数は9点。
コスパがいいので+1してあります。