【174khzハイレゾ】道草屋-芹-夏休み【切抜き耳かき】

サークル「桃色CODE」さんの同人音声作品(R-15指定)。

癒し系作品ではもはや定番と言っても差し支えないほどの人気を誇る「道草屋」シリーズ。
その15番目にあたる本作品は、上品でちょっぴり子供っぽい性格のお姉さんが
夕方から夜にかけて2種類のサービスをしながら癒しを与えます。

シリーズ最大の特徴とも言える臨場感抜群な効果音と環境音や
それぞれに個性を持った店員のキャラを上手に使って
道草屋で過ごすひと時をそのまま切り抜いたかのようなリアルさでお届けしています。

中でも夜の部に登場する甘噛みはまさに圧巻。
そのとてつもなく近い声や息遣いが彼女の存在を十分すぎるほどに感じさせてくれます。
演出面に力を入れた素晴らしい音の数々
道草屋の店員「芹」の怪談を聞いたり耳かきをしてもらうお話。

「お願い事 何をなされたんですか?」
芹は明るく上品な声のお姉さん。
近くにある神社にお参りしていたお客を呼び止めると
少し遠回りをしながら一緒にのんびりと道草屋に戻ります。

本作品は神社で出会った彼女の怪談を聞きながらお店へと戻る夕方の部と
沢山の虫の声や花火の音を聞きながら耳かきされる夜の部の二部構成。
前者は主に芹との時には緊迫感のある、時にはちょっぴり間の抜けたやり取りを
後者は効果音や環境音といったリアルな音の数々を中心に楽しみます。

道草屋シリーズは効果音や環境音が抜群に優れていることで有名なのですが
今回は音のリアルさをしっかり維持したまま演出面に力を入れている節が見られます。
具体的に言うと時間・場所・位置・距離によって諸々の音が小まめに変化します。
実際どんなものなのかはこの後シーンごとに説明していきます。

「春に 山菜 美味しいなーって思ってたら もう鮎ですよ? びっくりですねー」
もちろんお相手を務める芹の存在も忘れてはいけません。
道草屋店主、しかも最年長という立場からくる印象とは少し違った子供っぽい性格をしており
お客に対しても割と砕けた調子で食べ物や他の店員、日々思っていることなどを語ります。

何気ない内容のお話を意識的に間を長く取りながらゆっくりと話すのほほんとした様子に
多くの人がほのぼのとした心温まる気分を抱くことでしょう。
声の印象とは良い意味で異なる、可愛げのある女性として描かれています。
ちょっぴり怖い怪談、刻々と移り変わる音
夕方の部は歩きながら芹の4つの怪談を聞き、途中で合流した別の店員「すずな」と3人で道草屋へと帰るシーン。
当然のようにメインのサービスは怪談になります。

「ある朝 井戸に水を汲みに行って その日だけ なーんか中が気になったんですよ」
「作業を続ける 同僚の背後には 何か白く 細長いものが立っており くの字に折れるようにして じーっと同僚を見下ろしていたのです」

内容はあまりばらすとつまらなくなるなるでしょうからほぼ伏せますが
彼女の子供の頃、成長した後、とある男性、彼女の祖父と登場人物をその都度変え
誰かが死ぬなどのグロい表現は一切無しに
聴き手の背筋がちょっぴり凍るあたりの展開やオチにまとめてあります。
元々が癒し系ですから、ちょっとした涼をお届けするのを目的にしている感じです。

そして歩きながら話している雰囲気をできるだけリアルに感じ取ってもらおうと
バックで流れる彼女の足音のペースが不規則に変化し
怪談が盛り上がるシーンでは突然立ち止まって緊張感のあるセリフを投げかけたりします。
中でも2番目に登場する「だるまさんが転んだ」というお話では
その遊び方に合わせて何度も立ち止まる凝った演出がされています。

夕方の部における最大の魅力は環境音。
2人が神社からお店に戻るまでの情景の変化を音だけで見事なまでに表現しています。
例えば最初はヒグラシやニイニイゼミが鳴いていたのが
3番目のお話に入るとそれらが弱まり今度は鈴虫の鳴き声が登場
もうしばらく経つと再びセミの声が大きくなる、といった具合です。

パートやシーン単位ではなくリアルタイムで環境音が変化するのが本当に素晴らしいですね。
厳密に調べたわけではありませんが1~2分後にはガラリと切り替わっている場合もあります。
セミが複数種類いることを利用してそれぞれの鳴き声の比率まで変化させていますし
しかも突然小さくなるのではなく、少しずつ自然に消え行く演出がされています。

ここまで変化に富んだ環境音は今まで聴いたことがありません。
サークルさんご自身が言われているように、自然をそのまま切り出したかのような世界がそこにはあります。

芹「帰ったら ビールにします? 焼酎にします?」
すずな「先にご飯です」
怪談が終わった後の芹とすずなのやり取りも聴きどころ。
年上の芹をすずなが制御する形でテンポの良いやり取りが交わされます。
途中で2人して童謡を歌うシーンがあったりと、先ほどまであった緊迫感は一切なくなり
スッキリとした気分で次の夜の部に進むことができます。
超至近距離の甘噛み
続く夜の部は舞台を外から道草屋のとある一室へと移し
芹に耳の甘噛みやマッサージ、耳かきをしてもらいます。
時間が進んだこともあって環境音は鈴虫がメインになり、先ほどよりも静かな雰囲気が漂っています。

ここでの最大のポイントは耳かきではなく甘噛み。
右耳→左耳の順にはむはむする至って普通のサービスなのですが
その音や息遣いが半端なく近いです。

当サイトでは主にバイノーラル録音の作品で「声がすごく近いよ」と言うことが結構あります。
ですがそれらは耳の真横に唇があって話しかけられてる感じなんですね。
それに対して本作品は「もう耳に唇が触れてるんじゃないか?」と思えるくらいの近さがあります。
従来の至近距離からさらに一歩進んだ超至近距離での甘噛みです。

私はそれこそ浴びるほど音声作品を聴いてますから、甘噛みも当然かなりの作品で経験しています。
ですがこの作品の甘噛みを聴いた瞬間衝撃が走りました。
その合間やセリフをしゃべる時に漏れる微かな吐息までクリアに、リアルに聞こえます。
体験版にも収録されてますので気になった方はここだけでも是非お試しください。

続く耳かきは24分30秒ほど。
膝枕の体勢で左耳→右耳の順に耳かき棒で大きな汚れを、洗浄液に浸した綿棒で小さな汚れを取り
最後に軽く息吹きをする比較的シンプルなものです。

耳かき棒は「じじー ずりっ」と細くちょっぴり堅さのある音
綿棒は「すりじょり ぷす ぱち」とふわふわした柔らかい音が使われており。
前者は穴の入り口だと長めのストロークでゆっくりと、奥では大きく動かさず中でほじほじと掻き出すように
後者は耳の壁を優しくなぞったり穴の中でゆっくり回転させる動きをします。

どちらの音も聴き手に配慮した柔らかな質感が耳に心地よく
作品の雰囲気を損なわない形でリアルな耳かきがされています。
道草屋シリーズは奇抜なサービスを取り入れるよりも、基本をきっちり押さえる傾向が強いです。

「毎年 花火が ひゅー どーん ごろごろしてると 音だけ 聞こえてきて」
そして夏の夜にふさわしい打ち上げ花火の音が耳かきに彩りを与えます。
会場からお店までの距離が遠いのか、花火の音はボリュームが結構抑えられてますし
華やかではあるけど耳かきの静かさを壊すほどではありません。
あくまで環境音としての役割に留めてあります。
ちなみに花火の音は前半の左耳パートでのみ鳴ります。

「そういえばですね まったく関係ないお話なんですけど 日が落ちてから ずーっと じーって鳴いてる虫 いるじゃないですか?」
最中の芹はというと、付近に生息する虫や鮎釣りなど何気ない話をすることがほとんどで
店員として癒すのではなく友達に語りかけるような親しさがあります。
特に後半の右耳をお掃除するパートでは成長するすずしろの様子をしみじみと語るなど
のほほんとした態度の裏にある店主としての顔も垣間見えます。

このように、夏の夜をテーマとした質の高い耳かきが繰り広げられています。
音声作品の壁をひとつ乗り越えている作品
既存の音声作品には無かったものを2つも持っている稀有な作品です。

道草屋とその周辺で芹たちと過ごす様子をそのまま録ってきたんじゃないかと思えるほどに
声・セリフ・効果音・環境音のバランスが極めて高い領域で取れています。
以前から強力な武器としていた様々な音や彼女たちの個性に加えて
本作品では音の移ろい、位置と距離感の向上の2つに挑戦し成功を収めています。

前者は夕方の部における環境音の変化に色濃く出ています。
昨年あたりから環境音をバックで鳴らす作品が徐々に増えつつありますが
それらの多くは単一の音を流したり、複数の音を重ねるといった表現がされています。
過去の道草屋シリーズもそうでした。

しかし本作品ではそれこそ数十秒単位で構成要素やボリュームの強弱を変化させ
それによって2人のいる場所の周りの自然状況を間接的に表現しています。
夏なら木が多い場所だと当然セミが鳴いてるでしょうし
草むらが多ければそのあたりに生息する生物の声がより大きく聞こえてきます。

これを音だけでリアルタイムに表現しているのは見事と言う他ありません。
実際に歩いて録音されたのか、はたまた多大な苦労を伴う編集の成果なのかはわかりませんが
こういう環境音の使い方がされている作品は初めてです。

もうひとつの位置と距離感は先ほど説明した甘噛みがいい例です。
バイノーラル録音の普及に伴い、ここ2年で音声作品のクオリティは飛躍的に向上しました。
そして「ここまできたのだから、もうこれ以上の劇的な変化は無いだろう」とも思ってました。

その価値観を根本的に破壊してくれたのがこの甘噛みです。
正直度肝を抜かれました。
音声作品という媒体にある限界をひとつ突破しています。
怪談や耳かきといったサービスについてももちろん十分なクオリティを持っています。

癒し系作品の新しい可能性を示してくれている名作です。
この内容で価格が800円なら相当に良心的と言えます。
以上のことから本作品を同サークルさん5本目の満点とさせていただきました。

CV:芹…雁庵うずめさん すずな…藤堂れんげさん
総時間 夕方の部…48:22 夜の部…51:02 合計…1:39:24

オススメ度
■■■■■■■■■■ 10点


体験版はこちらにあります