休日屋

サークル「とみみ庵」さんの同人音声作品(全年齢向け)。

今回紹介する作品は、とある田舎にあるお店を舞台に
可愛い女の子が様々なサービスをしながら癒しを与えてくれます。

耳かきやマッサージといった王道ものから食事などのあまり見みかけないものまで
ありとあらゆるシーンをリアルな効果音によって見事に演出しています。
合間に見せる彼女の言葉や仕草も店員よりは恋人に近い人懐っこさがあり
聴き進めていくほど心が落ち着いたり温まる気分が強くなります。



田舎で女の子と過ごす静かな一日
休日屋の店員「安土ひなた」からサービスを受けるお話。

「こんにちはー あれ…お客様ですよね?」
ひなたは明るくて柔らかい声の女の子。
お店の近くにある無人駅まで主人公を迎えに行くと
軽い挨拶をしてから早速案内します。

本作品は2人がとある休日をお店で過ごす様子を
全部で12ものシーンに分けてリアルに描いています。
とみみ庵さんといえば耳かきを中心とした高品質な音で有名なサークルさんなのですが
今回は効果音や環境音に加えてストーリーもしっかりと組み立てられており
作品の世界にどっぷりと浸かりながら癒しを得ることができます。

「手を引いてもらうほどじゃないんですけど でもせっかくなので このまま手を繋いで上がってもらえますか? えへへ」
お相手を務めるひなたも主人公が休日を満喫できるようにと
堅苦しい言葉遣いをせずとても親しい態度で接してくれます。
よくある専門店のように決まりきったサービスを淡々と行うのではなく
主人公のリクエストに応える形で進めていきますから
どちらかというと店員さんより友達とか恋人に近い印象を抱くでしょう。

実際に行うサービスも家庭的なものが多く
田舎のお家で普通に過ごすのんびりとした雰囲気が漂っています。



飾らないサービス、飾らない音、飾らないひなた
休日屋に着いた後に行うサービスは全部で7つ。
登場順に肩や首のマッサージ、昼寝&添い寝、食事、散歩、お風呂、爪切り&顔の保湿、耳かきです。
さすがに全部説明していくのは字数的に難しいので
今回は個人的に気になったサービスを抜粋して紹介します。

「それじゃあまずは… 電車と慣れない田舎道でお疲れでしょうから マッサージなんてどうですか?」
一番最初に行うマッサージはおよそ5分30秒。
主人公にうつぶせになってもらってから
肩のあたりを手のひらで擦ったり、拳で軽く叩いたりします。

擦るときは「サッサッ シュルー」と乾いた滑らかな音
叩くときは「ぺちぺち ぱたぱた」と肉が軽快にぶつかる音など
サークルさんの持ち味とも言えるハイレベルな効果音が序盤から数多く登場し
音だけでマッサージの様子をとてもわかりやすく伝えてくれます。

音の動かし方についても同じ音やリズムがほとんど無いほど変幻自在。
特に拳で叩くシーンでは耳の下あたりに心地よい振動が感じられます。
毎回聴いてる私がその都度「すげぇ」と思うくらいですから
サークルさんの作品を初めて聴く方はそのリアルさにきっと驚くはずです。

「少しずつ ほぐれてきたんじゃないです? せっかくのお休みなんですから 緊張したままじゃ損ですよ?」
合間に交わされるひなたとの会話も重要なポイント。
彼女はいつも都会で過ごしている彼が休日を存分に楽しめるよう
マッサージをしながら少し砕けた調子で語りかけます。
このフレンドリーな態度がいい意味で専門店らしくない雰囲気を出しており
それが自宅で過ごしているかのような寛いだ気分にさせてくれます。

サークルさんのいつもの作品だとサービス中はほんどしゃべることがないだけに
ファンの方はいつも以上に彼女の存在や温もりを強く感じるでしょう。
といっても常にべらべらしゃべるのではなくそれぞれを固めて聴かせてくれますから
従来どおりの音フェチ的な要素もかなり強く残っています。
セリフと効果音のメリハリを持たせながらサービスを行っているところがいいですね。

耳に最も心地よい刺激を与えてくれるのは中盤に登場するお風呂パート(約13分)。
ここでは水着姿になったひなたが背中を流したりシャンプーやトリートメントをかけます。
全年齢向けですのでエッチな描写は一切ありません。

「人に髪を洗ってもらうのって 私も好きなんですよ 気持ちよくって」
シャワーも無い旧式のお風呂なのがわかるように
その都度湯船から盥にお湯をすくって背中や頭にゆっくりとかけながら
背中を洗うときは「ぷすぷす しょわしょわ」とスポンジで泡立てるような音
シャンプーは「しゃくしゃく わしゃわしゃ」と柔らかく弾けるような音を
それぞれの部位に応じた動かし方や距離で鳴らします。

どちらもかなり特徴のある音なので刺激が伝わりやすく
とりわけシャンプーは音が耳に非常に近いことや動かし方がややハードなことから
耳の表面を軽く叩かれているような心地よい感覚がするでしょう。
今までいくつかシャンプーをかけてくれる作品を聴いていますが
これほどまでにパーフェクトなシャンプーは初めてです。

そして最も時間の長いサービスはもちろん耳かき(23分)。
最初に仰向けの状態で左右同時に保湿クリームを塗ってから
右→左耳の順に綿棒を使って耳の入り口や奥のほうを掃除し
仕上げに梵天で細かい汚れを落とします。
息吹きは左耳の時にほんの少しだけ行ってくれます。

綿棒は手前では「すりすり しゅるー」と面積が広く滑らかな音
奥に移ると手前に比べて低く篭った音へと変化し
いずれもやや力を込めてゆっくりと前後に、あるいは回転させるように動きます。
時間が長いこともあってそれぞれの音を十分に楽しめますし
音の質や動かし方も非の打ち所が無いほど優れているので多く人が癒しを感じるでしょう。
仕上げの梵天もふわふわとした質感と適度な圧迫感がありとてもリアルです。

このように、現実さながらのリアルなサービスをたっぷりと楽しむことができます。



心の汗を洗い流してくれる作品
様々な部分から癒しを与えてくれる総合力の極めて高い作品です。

「田舎で過ごす休日」のテーマに沿って専門店らしさを敢えてあまり出さずに
それぞれのサービスを素朴に、かつ心を込めて行っています。
機材の豪華さやサービスの奇抜さなどを見れば他の作品に分があるのですが
サービスそのものの表現力の高さやもたらされる癒しのパワーは
本作のほうが格段に優れています。

そう感じる最も大きな理由はサービス全体に流れがあるからだと私は考えています。

一番最初に行うマッサージは主人公が長旅で疲れているから
次の昼寝は心身が程よくほぐれて眠くなったから
その次のご飯もしばらく寝てお腹が空いたから、といったように
ひなたは常に主人公の心身の状態を観察しながら最適なサービスを提供します。

このおかげでサービス内容がまるで違うものになっても作品の雰囲気が損なわれず
聴き手としても「次はどんな展開が来るのかな?」という楽しみが湧いてきます。
癒し系作品でありながら全体としてのストーリーがきちんと出来上がっています。
これが本作品を聴いた時に感じた一番の驚きでした。

もちろんサービス自体も質の高い効果音や環境音を使ってリアルに表現しています。
中でも食事を用意するシーンはすべてを音だけで表現しているのに
何をやっているのかがきちんとわかるほど細かく描写されています。

そしてほとんどの部分を音だけで表現できるからこそ
ひなたのセリフをストーリーに関係のある自然なものだけにすることができています。
今まで培ってきた技術を活かして作品をより質の高いものへと昇華させています。

「もうちょっとだけ 一緒にお休みしたかったです」
また本作品には癒し以外にほろりと泣けるシーンも用意されています。
詳しいところは伏せますがちょっぴり切ない気分で聴き終えることになるでしょう。
こういう要素があるのも個性的でいいですね。

以上のことから今回も満点とさせていただきました。
良いところを挙げていったらキリがないほど様々な部分が優れています。
これだけの内容とボリュームで200円なのも本当に驚きです。
音声作品を知るすべての人にお薦めします。

おまけはひなたとお姉ちゃんのやり取りです。

CV:浅見ゆいさん、藤堂れんげさん(おまけにのみ登場)
総時間 本編…2:10:38 おまけ…4:40


オススメ度
■■■■■■■■■■ 10点


体験版はこちらにあります