世話好きな彼女。

サークル「添音亭」さんの同人音声作品(全年齢向け)。

前作「Fall in dream」からおよそ3ヶ月半ぶりの新作となるこちらは
風邪を引いた主人公を彼女が優しく看病する様子が描かれています。

サークルさんの一番の持ち味とも言えるハイクオリティな効果音を使いながら
彼女が身の回りのお世話をする様子を必要最小限のセリフのみで演出しています。
また今回はパートごとに彼の体調が回復していく時間の概念も取り入れており
心配そうにしていた彼女が次第に安心し、いつもの姿に戻っていく様子も癒しを与えます。



不摂生な彼氏を看病する家庭的な彼女
彼女に風邪の看病をしてもらうお話。

「あ もしもし 具合どう? 大丈夫?」
彼女は明るくて穏やかな声のお姉さん。
病気で寝込んでいる主人公の家にお見舞いにやってくると
泊り込みで食事など身の回りのお世話をします。

本作品は起きることもできない彼に
彼女が心配そうに声をかけたりご飯を食べさせてあげる初日と
その次の日、病気が快方に向かっている彼と一緒にご飯を食べたり
耳かきや添い寝のサービスをしてあげる2日目に分かれています。

内容が一部重複しているところもあるのですが
主人公の容態に大きな違いがあるおかげで
サービスのスタイルや彼女の態度・セリフも大きく変化します。
癒し系作品でありながら時間の流れを取り入れているところが大きな特徴です。

もちろんサークルさんが創設以来こだわられている効果音や環境音も健在。
今作では全編を通じて時計の音をバックに絶えず流しながら
諸々の行為を効果音のみで表現するシーンがいくつも登場します。

音の質だけでなく位置や距離についてもきっちり考えられていますから
まるで彼女が実際にそばにいてくれているかのような体験が味わいやすいです。
また総時間に対するセリフのボリュームがかなり少ないことを考えると
安眠特化であり音フェチ向けでもある作品と言えます。
その静かで落ち着いた雰囲気が自然な安らぎを与えてくれるでしょう。



時が経つにつれて変化していく情景と彼女の様子
初日のシーンは2パート16分間。
事前に電話をかけて主人公の様子を確認してから
彼女は泊まりの道具と料理の材料を揃えてやってきます。

ここでは台所で水枕や卵粥を作る様子がすべて効果音で演出されており
右手のやや遠い位置から水を流したり卵をかき混ぜる音が聞こえてきます。
時間が夜なこともあって家の周りもとっても静か。
おかげで今だけ時間がゆっくり流れているかのような感覚が湧いてきます。

「しょうがないな・・・ 今日は体調悪いから 特別だからね はい あーん」
彼女は彼とは長い付き合いのようで、日ごろの不摂生ぶりを心配しながら
お粥を1杯ずつふーふーしながら食べさせてあげます。
男性からすれば恥ずかしくもあり嬉しくもあるシチュですね。
自分のことを親身になってお世話してくれるその姿が心を潤します。

続く2日目は3パート67分間。
昼過ぎまで熟睡してすっかり体調が良くなった主人公と
彼女が今度は同じテーブルで向かい合いながらうどんをすすったり
リンゴをその場で切って差し出したりします。
ちなみにここでは時計の音以外に鳥の鳴く声などの環境音がほのかに流れます。

「お礼なんていいよ 好きでしてるんだし ずっとここにいるから 安心して休んでて」
食事中に食生活に関する注意をするシーンがあるものの
彼女は昨日と同じくとってもあまあま。
元々家庭的な女性のようで病気が治りつつあることに安心しながら
大好きな人と2人きりでいるこの瞬間を心から喜んでいる節が窺えます。
少しずつ普段の態度に戻っていくこの変化が面白いですね。

食事の後に行う耳かきは17分ほど。
膝枕の体勢で耳かき棒のみを使い、右→左の順にお掃除
最後に1回ずつ息を吹きかけるシンプルなものです。

耳かき棒は「ズリー ジッジッ」っとやや尖った軽い音が使われており
下から上へ、あるいはその逆に短いストロークを描きながら掻き出していきます。
耳の外側とか穴の奥といった部位の違いを設けていないところが少々残念ですが
音や動き自体は十分にリアルと言えるでしょう。

特に耳かき音をゴリゴリとした耳に響くものにせず
軽くくすぐる程度の刺激の少ないものにしているのがいいですね。
本作品は聴きながら眠ることを強く意識した作りになっていますから
眠りを妨げないようにとかなり優しい音で統一されています。

「やっぱり ご飯を美味しく食べられるのって 幸せだと思うんだよね」
また最中の彼女は緩やかな呼吸音を漏らしていることが多いのですが
普段の恋人同士が交わす他愛も無いやり取りも時折入ります。
それは彼女が彼の体調に対して一定以上に安心していることを意味します。
状況の変化に応じてセリフの質を少しずつシフトさせている演出も見事です。

「やっぱり来てよかった」
そして最後のパートは彼女に右に寄り添われながら眠りにつきます。
サークルさんの過去作同様ほとんどセリフが無く彼女の寝息だけが聞こえ続けます。
完全に寝るために聴くパートですからこういう演出も十分ありでしょう。

このように、音・サービス・セリフを上手に使いながら看病の様子をリアルに描いています。



優しさが心に染み入る作品
聴いてるだけで胸のあたりにぽっと明かりが灯る温かい作品です。

彼女が料理を作ったりそばにいてくれる様子を
バイノーラル録音による多種多様な音を使って感じさせてくれます。
そして合間に入る彼女の心配そうな、あるいは安心したセリフが
作品全体の雰囲気をより温かいものへと変化させています。

実際に聴いてみると他の作品に比べて無言の時間が結構多いです。
ですが彼女に存在感が無いとはちっとも思いません。
それは諸々の音を発しているのが彼女自身だからです。

そして音声作品の弱点とも言える説明的なセリフを排しているからこそ
物語の世界がいつも以上にリアルに感じます。
桃色CODEさんなどの音に強いサークルさんだからこそできる特徴的な演出です。

「寝込んでるときって なんとなく心細くなるもんね ずっとここにいるよ」
さらに作中で発せられるセリフが少ないからこそ
1つ1つに重みと言いますか、彼女の素直な気持ちがにじみ出ています。
彼女は滅多に病気にならない彼が倒れたことを心から心配しており
看病の最中は彼を安心させようとする言葉を何度も投げかけます。
その温かい声も相まって心がじんわりと温かくなるような思いがしました。

安眠効果については最後の2パートが効果音のウェイトを特に重くしてますから
それらを聴きながら眠るのがいいでしょう。
一番最後のおやすみパートは本当に心安らかに眠ることができます。

癒しに関する様々な要素をバランスを取りながら組み合わせている作品です。
安眠特化な仕様ですのでそれ目的で聴くのが一番なのですが
リアルで辛いことがあったなど、心に潤いを求めている人にもお薦めします。

CV:浅見ゆいさん
総時間 1:24:17


オススメ度
■■■■■■■■■□ 9点


体験版はこちらにあります