ヒプノクラウド

サークル「エロトランス」さんの催眠音声作品。

先日行われたコミックマーケット87に出展されたこちらの作品は
雲のようなふわふわとした雰囲気の女の子に導かれて催眠とエッチな快感を楽しみます。

作品のイメージに合わせた柔らかい言葉を選んだ催眠や
バイノーラルの長所を活かした左右から囁きかける立体的な暗示など
サークルさんらしい挑戦的な特徴が数多く盛り込まれており
その珍しさが興味を、純粋な技術の高さが催眠への入りやすさを引き立てています。



ふわふわした女の子とふわふわな世界へ
謎の女の子に連れられて雲の世界に行くお話。

「こんばんは もう 寝る時間かな?」
女の子は清らかで穏やかな声の女の子。
簡単な諸注意を述べて、その後主人公の前に姿を現した彼女は
本格的な催眠を始める前に一つの約束をお願いします。

その約束とは「ひたすら彼女についていく」こと。
作中ではバイノーラルの技術を活かして彼女の声が頻繁に動き回ります。
その立体感や動き方からまるで自分が引っ張られているように感じるでしょう。
ちょっとした旅行をしながら催眠へと導く面白いアプローチがとられています。

催眠はおよそ22分間。
まずは軽く3回深呼吸し、その後今度は呼吸に意識を向けながら再度行います。

「意識をして 吐く時に 力を抜いていっても構いません」
「息を吐くたびに 体の筋肉の緊張が どんどんほぐれていくように感じる人もいれば 体のスイッチが切れていくように感じる人もいます」

2セット目の深呼吸をする前に彼女が意識の向け方を丁寧に教えてくれますから
そのイメージを抱きながら行うと、先ほどとはまるで違った感覚を受けると思います。
具体的には肩や太ももを中心にぐったりとした脱力感がありました。

そしていよいよ彼女に手を取られながら雲の世界へと旅立ちます。
柔らかく温かい彼女の手を感じながら
深い霧で何も見えない空間を2人でひたすら前へ進んでいきます。

「女の子が遠ざかると すごく心細くて また姿が近くなると 安心感や 心強さで満たされる」
自分の足元すら見えないほど視界の悪い場所まで来ると
頼りになるのは当然先導役の彼女だけです。
その情景を描きながら、心細さを適度に感じさせながら
彼女は聴き手がより自分に依存し、その声に心を預けたくなる心境へと導きます。
作品のテーマに合わせながら暗示をより入れやすい環境を整えるわけです。

「目の前が 真っ白 頭の中も 真っ白 なんだか 体の力がどんどん抜けてきて すべてがどうでもいい めんどくさい」
その直後に訪れる上空からの落下シーンも非常に個性的。
彼女は実際に落ちている雰囲気を出すために
下から上へ何度も声を移動させながら暗示を入れてきます。

準備が整ったところで的確な暗示が入るだけでも十分催眠に入れるのに
こういう細かな演出を取り入れて作品の世界観にぐっと引き込む心遣いが見事です。
それにはまったかのように意識がぼやけたり太ももが軽く持ち上がる感覚がありました。

「まるで 体全体で酸素を取り入れているかのように 空気との境目がわからない でも それがすごく気持ちがいいよね?」
そして最後は自分自身が雲になり、存在を曖昧にしながら心地よさに浸ります。
「気持ちいい」を意識的に多く配置した彼女の声は雲のように柔らかく
その安心できる雰囲気が自然なリラックスを生み出すでしょう。
頭の中がぽわぽわしてとても幸せなひと時が味わえました。

雲の世界へ行くイメージに合わせて的確な暗示を入れてくるハイレベルな催眠です。

前半は「~かもしれません」などの許容暗示を中心とした現代催眠寄りのスタンス
後半は分割弛緩や沈黙法などの古典的な技術を用いるハイブリッドなタイプで
雲から連想されるふわふわとしたイメージを聴き手にしっかりと植え付け
同時に彼女の声に従いやすい心構えを身につけさせてから徐々に落としてきます。

前半を聴いている間はあまり催眠っぽさを感じないかもしれません。
でもなんだか妙に頭がぼんやりする不思議な感覚が湧いてきます。
そして開始から10分後、落下するシーンあたりでそれが一気に強くなります。
以降に入れられる重厚な暗示によっても頭の中がとろとろになるでしょう。

聴き手に嫌な感じを抱かせないスムーズな心の掴み方が実に見事です。
被暗示性のあまり高くない方でも催眠特有の感覚が味わいやすいと思います。



ピンクの雲で感度倍増
エッチシーンは15分30秒ほど。
プレイは言葉による絶頂です。

エッチな効果音はありません。
セルフもありません。

「向こうを見て 薄いピンク色の雲が流れてきている」
彼女に連れられて無事雲の世界へと到着し、心地よい気分を満喫していた主人公は
そこへ流れてきたピンク色の雲に包まれて今度はエッチな気分を膨らませます。

エッチは次々と流れてくるピンクや赤い雲に包まれながら
その都度感度を上昇させ最後に大きく絶頂します。
彼女に何かをする/されるといったシーンは一切ありません。
そのおかげで言葉に感覚を操られる気持ちよさがたっぷりと味わえます。

「気持ちのいい温かさが じんわりと染み込んでくる 幸せな感情や 心地よい思いが ぶわーっと溢れ出し 心が温かくなってくる」
序盤はあまり濃度が濃くないこともあって感度を上げる暗示を入念に入れてくれます。
エッチに入った当初はそれほどでもなかったのに
しばらくすると妙に体が熱を帯びているのを実感する人もいるでしょう。
彼女がそうなるための準備を着々と進めていたのですからある意味当たり前です。

「ほら 来る 来る 大きな波が来る ゆっくりとゆっくりと込み上がっていき そのうち 抑えきれなくなる」
それが中盤に入ると一気にスタイルが変わり
彼女は左右から交互に至近距離で囁きかけながら絶頂へと追い込み始めます。
この声のリアルさが抜群で、近さだけでなく温かさまで感じられます。

また左右交互、あるいは同時に暗示を入れてくるスタイルには
かの有名な双子シリーズを彷彿とさせるものがあります。
指一本触れずに、しかも淫語やちゅぱ音もほぼ無しになぜかおちんちんが勃起する
そんなちょっぴりイレギュラーな体験ができる面白いシーンです。

そして最後の最後、カウントと共に訪れる絶頂の瞬間には
他のドライ系作品で味わった脳と股間が弾けるような快感が味わえました。
射精のような刹那的かつ疲労を伴うものではないこの甘美な感覚は
本作品のテーマである雲に似たようなふわふわとしたものを持っています。

このように、言葉だけでドライオーガズムを引き起こす催眠音声らしいエッチが繰り広げられます。



雲になった気分にさせてくれる作品
ユニークなテーマの中で催眠とエッチを堅実に行っている安定感のある作品です。

堅苦しさを極力排した柔軟性の高い催眠
そして流れを崩さず段階的に絶頂へと追い込んでいくエッチ
いずれもエロトランスさんの実力が十分に発揮されており
がっつり催眠に入れるし肉体的な刺激無しでもかなり気持ちよくなれます。

チャレンジ精神旺盛なサークルさんなので時々ぶっ飛んだ作品を出されるのですが
今回は終始危なげなく安心して聴き続けることができました。
テーマで個性を出しているタイプですので内容は結構王道的だと思います。
それでも催眠の序盤~中盤にかけて行われる現代催眠の技術を取り入れた誘導は
エロトランスさんを初めごく少数のサークルさんしか形にできていません。
そういう意味では催眠も十分な個性を持っていると言えます。

特筆すべきはやはりテーマと催眠の親和性です。
両者をここまで違和感なく溶け込ませ、尚且つかなりの深さの催眠状態へと導く。
これを難なく成し遂げていることに驚きましたし感動もしました。
エッチもストレートなエロをかなり抑えて本当に技術だけでイカせてくれます。
催眠によって引き起こされる心地よさや快感を味わいたいのなら
自信をもってお薦めできるほどの高いクオリティを持っています。

エッチは完全なノーハンドで精神的な絶頂を目指します。
催眠音声初心者にはこのドライオーガズムという感覚は実感しにくいのですが
ある程度慣れている人なら割とあっさり体が反応するのではないかなと。
そこに至るまでの感度の増幅を繰り返し入念に行ってくれます。
淫語とちゅぱ音ごく僅か、喘ぎ声はありません。

誰にでも聴ける安心感が光る作品です。
催眠の感覚を味わいたい、言葉だけで気持ちよくなる体験がしたい
そんな人に属性を問わずお薦めします。

CV:紗藤ましろさん
総時間 46:16


オススメ度
■■■■■■■■■□ 9点


体験版はこちらにあります

FANZAの体験版はこちら
FANZAの体験版はこちら

2021年10月14日追記
再レビューをアップしました。
http://doonroom.blog.jp/archives/86957475.html