【アイヌ系】道草屋 すずな 囲炉裏の音【うたた寝音声】

サークル「桃色CODE」さんの同人音声作品(全年齢向け)。

今年大活躍した同サークルさんのトリを飾る作品は
過去に2回登場した素朴な小町が2日間に渡る癒しのサービスをします。
1日目は冬らしさを感じさせるパチパチとした囲炉裏の音
2日目は麗らかな陽気を感じさせる鳥の鳴き声や微かな喧騒を鳴り響かせて
音だけでその場の雰囲気を感じ取らせてくれます。

お相手を務める女の子も以前登場したアイヌの民謡や散髪で個性を発揮。
キャラと音を駆使した臨場感抜群の空間が自然な癒しを提供します。



静かで耳に心地よい囲炉裏の音を聞きながら
道草屋の店員「すずな」から耳かきや散髪のサービスを受けるお話。

「旦那様 お待ちしておりました お寒いですので ご挨拶は後ほど…」
すずなは優しくて可愛い声の女の子。
雪道を遠路はるばるやってきたお客を店の外で出迎えると
冷えた彼の手を自分の手で温めながら部屋へ案内します。

本作品は同シリーズのすずしろ、芹に続く3人目の連泊方式として
1日目は雪の降る静かな夜に耳を中心としたケアを
2日目は翌日の昼間に縁側で散髪する様子が描かれています。

2日に分かれているのはメインのサービスが違うからだけではありません。
それぞれの時刻や場面に適した控えめなボリュームの環境音を鳴らし
さらにすずな自身も接し方を明確に切り替えて別方向の癒しを与えてくれます。

通しで聴いた場合、1日目と2日目で雰囲気にかなりの違いがあるのを感じるでしょう。

「板に ついてきましたか? うふふっ」
今回お相手を務めるすずなはお客と既に相当の顔なじみ。
基本的には丁寧な言葉遣いながらもその端々には親しさがにじみ出ており
きめ細かなサービスも相まって全編が真心に溢れています。

過去2作を聴いた限りでは新人ならではの拙い部分も感じられたのですが
本作ではそれとは違う成長した彼女を楽しむことができます。



しっとりとした専門店らしさのある1日目
1日目のサービスは布団に入ってまずはほっぺを手で、耳を口で温めてもらい
それから耳かきや子守唄を唄って眠りへと導かれます。

「囲炉裏の お部屋です」
1日目の最大の特徴は背景音として囲炉裏の音が鳴り続けることです。
そのチリチリ、パチパチとしたうるささを感じない心地よい音を聞いていると
自分が本当に道草屋にいるかのような感覚が得られます。
電気や石油ストーブでは絶対に出せない自然な音ですね。

「こそばゆくないよう できるだけゆっくり お含みいたしますね」
サービスの方も囲炉裏の雰囲気を壊さないしっとりとしたものばかり。
右→左の順におよそ12分間行われる甘噛みは
動きはゆっくり、水分控えめ、吐息も艶めかしくは感じない落ち着いたちゅぱ音です。
最中のすずながほぼしゃべらず舐めに専念するため
2種類の違った音だけが流れ続ける静かで落ち着いた空間が形成されます。

メインのサービスとなる耳かきは12分間。
左→右の順に耳かき棒のみを使ってお掃除するシンプルなものです。

耳かき棒は「ぞりりっ ずずっ」とやや尖った軽い音が使われており
最初は穴の入り口から奥へ長めに動いていたかと思えば
しばらくするとかき出すように小刻みに動いたり、奥からゆっくりと手前に動くなど
耳の形状を考えた変幻自在の動きを見せます。
耳かき音についてもリアルかつ耳に優しい柔らかさを感じるものばかり。
聴いている最中は眠くて眠くて仕方がない人が続出するに違いありません。

「襖が どこかで開いたり ざふっ ざふって 雪の足音が聞こえたら お布団に 顔を ひっこめるんですよ」
そして耳かき音によってもたらされる眠気を後押しするように
すずなが長めに間を置いた当たり障りのないお話をしてくれます。
囲炉裏の音、耳かき音、そして彼女が放つ声という音
この3つの音の絶妙なバランスが癒しの効果を高めているように感じました。

「ホー ロ ロ ノ ノ ノ ナー」
一番最後に登場するアイヌの民謡も彼女ならではのサービスです。
【耳かき】耳かき安眠店 道草屋 すずな【甘がみ】」と同じ唄だったのが残念ですが
こちらを聴いたことがない人にとっては新鮮な感覚を受けるでしょうね。
すべてのサービスが安眠へと収束していて統一感があります。



和気藹々とした家庭的な2日目
続く2日目はお客の髪が伸びているのを気にしたすずなが縁側で散髪をしてくれます。
こちらは囲炉裏の代わりに3~4種類の鳥の鳴き声を使って
穏やかな冬の午後らしさを演出しています。

サービスは上半身を布で覆ってから肩たたきをし
霧吹きで髪を濡らして散髪、最後に梳きバサミで形を整えます。

「とん ぽすん」というやや重みのある肩たたき音
「シャク シャク」という小気味よい音を小まめに移動させる散髪と
こちらも1日目同様サービスのほとんどをリアルな効果音で見事なまで表現しています。
音の質のみならず感覚までも耳や頭に伝わってくるのがわかるでしょう。

「師も走るほど忙しいって書いて 師走ですけど ここの師(=芹)は寝てばっかりです」
そして1日目との一番の違いはすずなの態度そのものにあります。
正式なサービスではないのもあるでしょうが
友達に話しかけるような砕けた和やかな口調へと切り替わり
それが専門店よりは自宅にいるような温かい雰囲気を醸し出しています。

丁寧だけどやや堅苦しさを感じた1日目よりも
こちらのほうがよりすずならしさを感じました。
ちょっぴり間の抜けた普通の女の子といったところでしょうか。

このように、様々な部分を上手に切り替えながら癒しに満ちたサービスを行ってくれます。



雰囲気重視の作品
田舎にある静かな宿にいる気分を声と音だけで味わわせてくれる作品です。

シリーズではもはや定番となった環境音を邪魔にならない程度に置き
その中でシーンに応じたリアルで適切な効果音とすずなの声を配置しています。
そしてこの2段構えの空間を1日目と2日目でガラリと変化させることで
時間だけでなく雰囲気の違いも明確に打ち出しています。
2日に分けられていますが、それぞれがそれぞれをしっかりと支え合っています。

「ご迷惑でなかったですか? 私あんまり役に立たないですから こんなことでも お役に立てて嬉しいです」
そして常連であるお客に満足してもらいたいと願うすずなの献身的な姿も
作品に癒しや温かさを強く与えています。
彼女は歳も若くキャリアも比較的浅いため、そこまで手の込んだもてなしはできません。
だからこそ自分のできることを模索しながら精一杯に心を尽くします。

技術的に優れているのももちろん大事なのでしょうが
結局のところおもてなしは心だと思うのです。
そういうところを重視しているのが本作品の大きな持ち味です。

サービスについては王道の耳かき、すずならしさを出すためのアイヌ民謡
そして今回初登場した散髪と要所を押さえつつ挑戦もしているバランスが光っています。
個人的には散髪にもう一工夫欲しかったところなのですが
効果音の質や鳴らし方はまさにトップクラスです。

今年の締めくくりを飾るにふさわしい安定感のある作品です。
癒しを求めるすべての人にお薦めします。

CV:藤堂れんげさん、雁庵うずめさん(2日目に背景音としてのみ登場)
総時間 1:32:34


オススメ度
■■■■■■■■■□ 9点


体験版はこちらにあります