うでまくら

サークル「ましろ家」さんの催眠音声作品(全年齢向け)。

紗藤ましろさんの個人サークル「ラブリリィ」さん初の催眠音声にあたる本作品は
彼女の声優活動5周年を記念して作成されたもので
穏やかな声のお姉さんが腕枕をしながら優しく安眠へと導いてくれます。

聴き手がリラックスできるようにとできるだけ柔らかい表現を心がけた催眠や
バイノーラルを利用した彼女との距離が段階的に近くなる演出など
催眠・音の両方のレベルが高く、割と早い段階に眠くなる感覚が湧いてきます。

また音声に少女をイメージした高音版と少年をイメージした低音版があり
男性、女性どちらでも音声を楽しむことができます。
今回は高音版を聴いてのレビューになります。



心に棘を感じない柔らかいセリフの数々
お姉さんに腕枕をされながら眠りにつくお話。

「あなたは普段 寝つきが良いかどうかは 私にはわかりません」
お姉さんは甘く穏やかな声の女の子。
事前に軽く注意事項を説明してから、早速主人公を眠りの世界へと導き始めます。

催眠はほぼ全編にあたる28分30秒ほど。
最初はお姉さんの眠りに関するお話に耳を傾けます。

「そして 眠る寸前 あるいは それは既に眠っているのかもしれませんが いつの間にか 軽い夢を見ていることも多いでしょう」
「起きている時から 睡眠に入る瞬間 それって とても気持ちのいいことですよね?」

お姉さんは我々が寝る時に体に起こる状態や感覚を尋ねるように言ってきます。
文面を読めばわかるように、ほぼ普通に会話をするようなセリフなのですが
これらを聴いているだけでほんのり眠くなってくる人もおそらくいるでしょう。
簡単に言えばこれらは本格的な催眠を行う前の準備運動の役割を果たしています。

そして催眠音声ではお馴染みの深呼吸や脱力を行って心身をよりリラックスさせます。
特に脱力は8分近くの長い時間をとって部分ごとに丁寧に行ってくれます。

「両腕の力が抜けたと感じたら その重さにも 気付くことができるかもしれませんね」
ここでもただ単に「体が重くなる」と暗示を入れるのではなく
時折こちらの脱力具合を確認するかのようなセリフを交えながら進めます。
そうすることで聴き手が自発的にその感覚を察知し
自分自身の力で脱力していくような状況を作り上げているのです。

彼女は自然なリラックスができるように極力感覚を押し付けるような表現を使わず
「~かもしれない」「~することもできる」といった許容的な表現を数多く使います。

おかげでセリフが丸みを帯びており、その声を受け入れやすく感じるでしょう。

「こたつの中でうとうとし 睡魔に負けたこともあるかもしれません ストーブに当たってるときに うとうとしてしまったかもしれません」
お次は自分が子供だった頃のことをイメージしながら
その時どんな様子で眠っていたかを思い出します。

子供の時は今に比べると思い悩むことが少なく
おかげで布団に入ったら割とあっさり眠ることができたのではないでしょうか。
そういった感覚を具体的な状況を列挙しながら喚起することで
さらに眠りやすい心理状態へと持っていきます。



お姉さんの温もりを近くに感じながら
心身が十分にほぐれたところで、いよいよお姉さんが腕枕をしてくれます。
ここからは彼女の声が耳元に一気に近づいて囁き声に変化しますから
バイノーラルの効果もあって耳を軽くくすぐられるような感覚が得られたり
声にほんのり熱を感じることになるでしょう。

「温かくて 優しい そう 今いるこの世界のような 幸せな夢を」
ここでの話題は夢について。
柔らかな光、温かな空気、そして優しいお姉さん。
癒しの要素満載なイメージの数々が心を盛り上げたり温めたりしてくれます。
単に眠らせるだけではなく、眠った後のことまで考えてくれているのがいいですね。
セリフの内容に加えて彼女のそういった姿勢にも心満たされるものを感じます。

「どろどろの状態で 何を考えるのも めんどくさい状態 お布団も 温かくなっていることに気づき とても気持ちがいい」
そして最後に長めのカウントをゆっくりと刻んで心地よい眠りへと落ちます。
数が減れば減るほど眠そうなものへと変化するお姉さんの声に
つられてあくびが出る人が続出するはずです。

聴き手を眠らせるためにはまず催眠者自身が眠そうに振る舞うことが大事です。
眠くなる雰囲気づくりをきちんと考えている本作品は
まさしく安眠に打ってつけの作品と言えるでしょう。

このように、常に聴き手の状態を見ながら優しく誘導するきめ細かな催眠が繰り広げられます。



幸せな気分で眠らせてくれる作品
催眠の技術を上手に活用して効果的に癒しを与えてくれる作品です。

現代催眠を7割、古典催眠を3割程度の用量でブレンドしたハイブリッドなタイプの催眠で
いきなり安眠へと誘導するのではなく、まずは聴き手自身が眠りたくなるように誘導し
それから落ち着ける雰囲気づくりを常に心がけながら段階的に眠らせます。

催眠音声では現代催眠型を扱えるサークルさんが非常に少なく、作品もあまりないため
「あれ?なんかちょっと違うな?でもいい感じ」といい意味での違和感があるかもしれません。
しかしこれも立派な催眠で、かつレベルの高い催眠です。
経験によってまちまちでしょうが、かなりの確率で比較的強力な催眠の感覚が味わえます。

ちなみに私は深呼吸をする手前、開始2分の時点で催眠に入っていました。
ここまでサクッと入れたのは本当に久しぶりでかなり驚きました。
この事実だけでもこの作品がいかに優れているかがわかっていただけると思います。

そしてこの作品の何より素晴らしい点は
彼女の意思を押し付けるようなことを極力避けて
無意識に眠っている記憶や感覚を呼び起こす形で働きかけてくることです。


「だってもう 起き上がるの めんどくさいですもんね」
もう少しわかりやすく言うと、暗示をかけて眠らせるのではなく
聴いたら眠くなるようなセリフを彼女は言ってきます。
だから無理矢理眠らされている感じがしなくてすんなりと眠くなるのです。
実際に聴いてみると一般的な催眠音声よりずっと柔らかい印象を受けるでしょう。
どういう環境なら聴き手が眠りやすいかを考えてくれているのがよくわかります。

中の人の記念すべき節目を飾るにふさわしい優れた作品です。
最近新サークルを立ち上げるなど新たな動きも見られますし
声優としても製作者としても今後の活躍が大いに期待されます。

CV:紗藤ましろさん
総時間 高音…28:55 低音…26:13

ラブリリィ
http://masirokediary.blog.fc2.com/blog-entry-19.html

追記
本作品は聴いたまま睡眠することを想定しているため解除音声がありません。
聴き終えた後で外出するなど用事のある方は
無料でいいので必ず別途解除音声を用意して聴いてください。
声優さん繋がりで「新ピンクの部屋」あたりがいいでしょう。