サークル「Re:Volte」さんの催眠音声作品(全年齢向け)。
今回紹介する作品は、里に住み着いて子供たちをずっと見守ってきた座敷童女が
すっかり成長した男性と再会し安眠のお手伝いをします。
キャラやストーリーに力を入れたドラマ仕立ての誘導が行われており
催眠暗示は深化や入眠時に固めて入れる程度に留め
その代わり彼女のお話、BGM、囲炉裏の音といった別の要素で癒しと眠気を与えます。
座敷童女が選んだ道
「おや 起こしてしまったかの?」
座敷童女は上品で可愛い声の女の子。
都会の喧騒に疲れて故郷へ帰ってきた主人公が目覚めたのに気づくと
自分の姿が見えることに驚き昔話を始めます。
本作品はサークルさんのオリジナル作品第3弾。
子供時代の彼を始め多くの人々を陰ながら見守ってきた彼女が
昔語りをしながらおよそ35分に渡る癒しの催眠を施します。
東方入眠抄シリーズを数多く制作されてきたサークルさんなだけあって
ストレートに催眠を施すのではなく、キャラやストーリーを大事にしたドラマ性のある誘導を行います。
暗示をガンガン入れるタイプじゃないので催眠に入ってる感覚はそこまでしないでしょうが
音声を聴くうちに癒されたり眠気を感じる人は多いと思います。
「小さい頃は よく遊んだんじゃぞ まあ 忘れてても仕方のないことじゃ」
それに最も貢献してるのが彼女の存在。
「~じゃ」という古風な言葉遣いで序盤から親しげに語りかけます。
彼女は彼のことをよく知ってますが、彼はとある事情で昔の記憶を失ってるそうです。
その理由も含めて2人の関係を少しずつ紐解いていきます。
しっかりしたストーリーがあるので聴いてて純粋に面白いです。
所々にBGMや環境音を取り入れてるのもポイント。
音楽も手がけられてるサークルさんらしいやり方で作品世界に引き込みます。
催眠と直接関係のある要素ではありませんが、臨場感やイメージ力の向上に役立ってるのも事実です。
そしてこれは作品の特徴であるドラマ仕立ての誘導と相性が良いです。
昔の思い出を辿りながら
横になって目を瞑り、まずは深呼吸や鬼ごっこで心身をリラックスさせます。
ちなみに催眠開始後は彼女の声にたびたびエフェクトがかかります。
「わしはこっちじゃぞ お姉さんを捕まえてごらん?」
「お主の手が わしに触れる 温かな感触に 心が安らぐ」
世間では立派な大人でも座敷童女から見れば主人公は可愛い子供です。
だから昔やった遊びに再び取り組む形で意識の力を上手に弱めます。
彼女の手が鳴った方向へ意識を向けるというもので、繰り返すと軽い疲れやぼんやりした感覚がします。
彼女を無事捕まえた時にその温かさを伝えて安心感を与えるのも良いです。
ある程度落ち着いた後は安眠の舞台となる忘れられた場所へと旅立ちます。
カウントを数える合間に「落ちる」「浮かぶ」などの暗示を厚めに入れて催眠状態を一気に深めます。
私が聴いた時も数が進むたびに全身がズーンと重くなりました。
ストーリー重視ですが要所はしっかり技術を行使していて安定感があります。
2番目の「忘れられた場所」パートは彼女が生まれ育った場所へと移動し
そこにあるあばら家で寛ぎながら昔話の続きを聴きます。
「ぱちぱち燃える炎が お主の体を温めてくれる 体の芯から ぽかぽかしてくるね」
ここでは到着後に彼女がつけた囲炉裏の音が癒しを与えてくれます。
昔話についても作品の全貌がわかるものになっており、最後まで聴くとしんみりするのではないでしょうか。
私はパートの中盤あたりでホロリと涙が出ました。
「眠気がお主を包み込む 暗くて暗くて 温かな漆黒の眠り」
そしてすべてが終わった後に眠りの世界へ導きます。
再会できたことが余程嬉しかったのか、母親のような安らいだ声でゆっくり数を数えます。
和風情緒漂うBGMが流れたり、セリフの間隔を意識して長くするなど
聴き手がすんなり眠れるよう気遣いながら物語を締めくくります。
ちなみに本作品にはおまけの後日談がありまして
本編視聴後はそちらも合わせて聴くことをおすすめします。
解除音声がついてないので本編の最後に眠らなかった場合は他作品の解除音声を聴いてから
そのまま寝入った場合はおまけを直接聴く形になります。
このように、彼女との思い出を振り返りながら眠りにつく流れのある催眠が繰り広げられてます。
ちょっぴり切ない作品
座敷童女は久しぶりに再会した主人公と新しい思い出を作ろうと
催眠を使ってまずは彼の疲れた心をほぐしつつ自分の生家へ案内します。
そして移動後は囲炉裏に当たりながら膝枕をして安眠へと導きます。
見た目は若々しいけど母親のような優しさと包容力がある彼女のキャラ
昔の出来事を振り返る中で技術を行使するストーリー重視の催眠
BGMや環境音で雰囲気を盛り上げる演出。
作品独自の要素を活かしたちょっぴり切ない物語が楽しめます。
Re:Volteさんは東方入眠抄シリーズで完成された作風を持つ一方で
オリジナルは自分の持ち味を活かせてなかったり個性が薄いなど首を捻る部分がありました。
それが今作でほぼ解消されたと私は見ています。
あちらの良かったところを上手く落とし込んでるなと。
催眠の技術自体は古典系の基本的なもので揃え
その間に昔語りや彼女の心情描写を違和感なく組み込んでます。
最近の催眠音声は物語の中に暗示を散りばめる現代催眠型も結構ありますけど
本作品の場合は技術とドラマ部分をある程度分離したうえで共存させてます。
2人の関係やストーリーこそが一番の聴きどころですね。
最初はわからなかった部分が少しずつ明らかになっていきます。
本編だけだとしこりが残るかもしれませんけど、後日談まで聴けばスッキリできます。
ストーリー性のある作品が好きな人には特におすすめします。
CV:冬岸るいさん
総時間 49:37(本編…44:30 おまけの後日談…5:07)
オススメ度
■■■■■■■■□□ 8点
体験版はこちらにあります
追記
作品自体の点数は7点。
50分で400円とコスパが良いので+1してあります。